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帰国

 翌日、匠はアントンとサファノバに戻っていき、透はお礼を言って、ハンナの家からホテルに移った。


 レイラは戻って来た匠を駆け寄って抱きしめた。

「戻って来てくれたの!?」

「透ちゃんから、自分の代わりに、お母さんの側にいて欲しいってお願いされたから……」

レイラは一瞬、泣く寸前のような表情をしたが、すぐにはしゃいだ様子で、匠の手を引いて厩舎へ連れて行った。

「クリスマスプレゼント、遅れてしまったけれど、届いたから! 匠が名前をつけて」


 匠がサファノバを発つまで、レイラはずっと、嬉しそうな様子を見せていた。

 しかし、透の話は一切しない。匠が見ていないと思っている時、レイラは鎮痛な面持ちをしている事を、匠は知っていた。知っていても、匠にはどうする事も出来なかった。匠はレイラの子供で、透ではない。何も出来ない自分が、悔しかった。自分がいる事で、無理に明るく振る舞っているレイラが、自分が帰国した途端にどうなってしまうのかも、匠は心配だった。

 アントンはレイラが明るく振る舞えば振る舞うほど、痛々しく思い目を逸らしたくなった。レイラが再び、子供を失った時と同じか、もっと酷い状態に陥る事は目に見えていた。しかし、もう、「透に会わせる」という希望で支える事が出来ない。


 匠がロンドンに向けて発ってしまうと、レイラは食欲を全く失ってしまった。家臣たちに言われ、仕方なく、ほんの一口二口を口に運ぶだけだ。


 透と匠が羽田空港に到着すると、洋子と和人が車で迎えに来ていた。匠は透がいるから大丈夫だと断ったのだが、洋子が迎えに行くと言って、きかなかったのだ。洋子は匠を見つけると駆けて来て、匠を抱きしめた。

「母さん、恥ずかしいから……」

「もう、帰ってこないかと思った……。お帰り」

「そんな事、ある訳ないじゃん……。ただいま」

和人は匠の頭に手を置いて、お帰り、とだけ言った。透は車の中で、「申し訳ないけど、疲れているので」と言って眠ってしまった為、匠は問われるままにサファノバでの撮影光景を話した。

 匠は、透から口止めされている為、透とレイラの間に起きた話はしなかった。何となく、レイラからのクリスマスプレゼントの話もしなかった。

 去年と変わりないお正月を過ごし、3学期が始まった。レイラから匠に、時折連絡が来た。匠の名付けた馬、サンダーの写真が送られてきた。

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