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ロンドンへ

 アントンと匠はロンドンに着いて途方にくれた。


 クリスマスの日は地下鉄など公共機関が止まっているのだ。とりあえず、空港にいる間にアントンは英語を話せる仲間に電話して、サファノバからホテルを予約してもらった。

 匠が勇気を振り絞って、ハンナの大学に電話をするも、誰も出ない。なんとかタクシーを捕まえて、ロンドンの街中のホテルまで行った。色々調べてみると、大学は1月中旬まで冬休みだと言う。インターネットで調べて、ハンナにコンタクトを試みたが、冬休み中の彼女がいつこのメールを読むかはわからない。なにしろ、今日は国中お休みなのだ。


 レイラの言うとおり、アントンがついて来てくれて良かったようだ。匠は中学生なので、保護者の同意書なしでは一人でホテルを予約する事が出来ない。アントンが親子のふりをして、チェックインした。親子という事で宿泊するため、ツインの部屋になった。


「これじゃぁ、透ちゃんが帰国する前に捕まえる事が出来ないよ」

「匠君は、その場合はどうする? 元々は31日に透と一緒に帰国する予定だったから、帰国するか、サファノバに戻るか」

「様子を見てから決める。アントン、クリスマスなのに、俺と一緒に過ごす羽目になって……ごめんね。家族と過ごしたかったよね……」

「気にしないでほしい。それを言うなら、クリスマスにレイラ様を一人にしないで欲しかったな」

「そうだよね。あまり考えずに飛び出して来ちゃったから……。そう言えば、お母さんと日本まで一緒に留学したなんて、アントンはただの護衛じゃないよね? 日本語も上手いし」

「私はただの護衛だが、父が大臣だから、日本へ向かうレイラ様の護衛として選ばれる為に、猛勉強したのだ。その甲斐あって、日本に留学に選ばれたのだと思う。」

「え、じゃあ、いつかは大臣になるの?」

「姉が優秀だから、姉が大臣になるだろう。うちは姉も妹も私に似ず、美人なのだ」

「アントンだって、悪くないと思うけど」

「いや、透に比べたら……」

「透ちゃんと比べられる人は、あまりいないと思うけど」

「いや、匠君なら透を超えるのではないか」

アントンは真面目な顔でそう言った。

「あ、有難う……」


「匠君、せっかくだから、下のレストランで予約してクリスマスディナーを食べよう。私は家族ではなくて悪いが……」

アントンは、レイラから、匠に不自由な思いをさせないように、と言われていた。「そうだね。もしかしたら、アントンと食事するのは、これが最後かもしれないしね……」

「それは困る。たとえ透が戻って来なくても、匠君はレイラ様の子供だ。レイラ様を見捨てないで欲しい」

「……。アントン、透ちゃんや日本にいる両親は、どこの誰かもわからなかった俺を育ててくれたんだ。その親たちを傷つけたくない。お母さんが透ちゃんを傷つけるのであれば、俺はサファノバへは、戻らない」


 アントンは匠に隠れて、こっそりレイラに指示を仰いだ。「攫って帰ってこい」と言われれば、そうするつもりでいた。レイラの返事は、無理に連れ帰って、嫌われたくないから、もう暫く様子を見るようにとの事だった。

 レイラは透を拒否しているようではないし、透の方も拒否しているわけではなかった。お互い焦がれ合っている二人を断ち切っているのはアントンたち家臣だ。そのせいでレイラは家臣の思いと、自分の気持ちとの間で、板挟みになっている。その上、やっと心を通わせ始めた匠にまで拒否されたら、レイラはどうなってしまうのだろう、とアントンは焦燥感に駆られた。去年までのように、「透」の存在で何とか保って来たレイラが、「透」を完全に失ってしまった後、正常さを保っていられるのか、判らなかった。

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