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閑話 食材と常連


「──しかし、驚きです」



 腕組みをしながらうんうんとガレイトが唸る。そんなガレイトを見たモニカは小首を傾げると、その意図を尋ねた。



「なにが?」


「俺が初めて店に来て食べたシチュー……あれも、市場に出回っている食材で作った料理なんですか?」


「あー、ごめん。美味しくなかった?」


「いえいえ! 美味しかったですよ! とても!」


「……まあ、あの後五杯くらい食べてたしね……バゲットも山ほど……」


「ですが、あれほどの料理を、あのような食材でどうやって作ったんですか?」


「ん? ああ、あれね。ああいうのって見た目は悪いけど、味はそこまで悪くはないんだよ」


「そうなんですか?」


「そ。店で売られてるのって、基本、色や形が綺麗な物なの」


「色や形だけ、ですか?」


「まあ、それだけではないんだけど……その二つが特に重要ってこと。実際、色や形の悪い物ってそれだけで食欲がなくなったりするからね。ガレイトさんは黒ずんだ野菜とか果物を食べたいかい?」


「い、いえ……そういったようなものは、極力、俺自身も避けています……」


「だからうちでは極力、野菜や肉は原形がなくなるくらいすり潰したり、こねたり、まぜたり、出汁にしたりしてるの」


「なるほど……企業努力というやつですね」


「そんな大したもんでもないけど……まあ、そんな感じかな。普段なら使えない……使わない、捨てられるような食材でも、とりあえず出来ることはやってあげようって」


「なるほど」


「まあ、でもそんなことやってると、自然と料理の幅も狭くなってくるからさ。そのせいでこの店の味が好きだった人も離れちゃったんだよね。元々、ダグザオーナーの料理が食べたくてこの店に来てるわけだしさ」


「なるほど。それでも、わかる人にはわかるのですね……」


「まあね。いま手元にあるもので精一杯頑張ってるっていっても、所詮は誤魔化し誤魔化しやってるだけだから。食通の人や舌が肥えてる人にはわかっちゃうかも」


「難しいところですね……」


「だからって酸はいれないけどね」


「す、すみません……」

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