都市伝説婚活相談所
*こちらは『なろうラジオ大賞2』参加作品です。
スマホが鳴る。
画面を覗くと、非通知と書かれていた。
唾を飲み込み、緑のボタンを押す。
「…もしもし」
「もしもし?ワタシ、メリーさん」
いま、あなたの家の前にいるの。
そう言って電話はブツリッと切れた。
私は椅子から腰を上げ、玄関まで行き扉を開け、元気よく声をあげる。
「ご予約のメリー様ですね!都市伝説婚活相談所にようこそ!」
此処は都市伝説婚活相談所。独り身の妖怪にパートナーを見つけ、幸せにする場所だ。
近年幽霊による怪奇事件が増え、霊媒師の仕事が異常に増えた。私は元霊媒師で、様々な事件で除霊を行なってきた。
だが、事件は増えるばかり。何故を考えた私はある日気がついた。
こいつら、寂しいだけじゃね?っと。
この予想はドンピシャ。今では各所から幽霊が集まり、沢山のカップルをあの世に送り出している。
「よ、よろしくお願いします。」
「こちらこそ!…緊張していらっしゃいますか?」
「は、はい…ワタシ、こういうの初めてで」
「そうなんですか、こちらは誰かのご紹介で?」
「口裂け女さんから」
「なるほど、彼女から」
口裂け女は以前この相談所に来ていた妖怪だ。彼女は現在、ラブラブな新婚生活を送っている。
「…ということは、メリー様もサイコパスな方をお探しで?」
「ええ、執着心が異常な方を探してます。それから…」
「…なるほど、でしたらこちらの方はどうでしょう」
私が紹介したのはピュグマリオニズムが原因で犯罪を犯した死刑囚の男だ。彼はメリー様がお求めになる要素と合っていた。メリー様も、彼の写真を見た途端顔を赤らめ目を輝かせる。
「いかがでしょう?」
「私、この人に会ってみたいです!」
私は警察へ連絡し、面会許可をもらうとメリー様と収容所へ向かった。男は少し窶れていたが、メリー様を見た途端生気を取り戻した。2人はすぐ意気投合し、その日の内にカップル成立。後日、男の死体が収容所で発見された。
「本当にありがとうございました。」
「いえ、お二人が幸せそうで何よりです。」
私の目の前にはメリー様と、幽霊となった男が幸せそうに寄り添っている。2人は今日、新婚旅行へ行くらしい。
「そういえば、新居は?」
「実はまだ…」
「なら、こちらの事故物件はいかがでしょう?」
「素敵!」
「後日拝見しても?」
そして2人は幸せそうに出かけて行った。
「さて、次のご予約のお客様は…」
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