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第94話 決着

〈side刹那〉


 そのまま『創造』の神がいるであろう場所まで走り抜ける。

 僕の姿を見て、不機嫌そうな顔をしている。

 『変化』の権能を持っていると知っているためだろう。『創造』は『変化』に弱いと、そう聞いている。

 ⋯⋯だからといって僕が有利というわけではない。いくら相性が有利でも、この力は人間には不相応だ。『変化』の権能は人間一人が持てるものじゃない。今もなお、僕を蝕んでいる。つまり、相手は耐えているだけで勝てるということだ。いくら相性が良くても、短期決戦ができる相手ではない。

 僕は接近して、その体に向けてナイフを振りぬく。それは容易く、その神の体を切り裂く。辺りに鮮血が舞う。あまりにもあっけなくダメージを負ったことに少しの驚愕を抱く。

 だが、その疑問はすぐに解消されることになる。傷を負った場所に巻き付くようにしてその傷が治癒される。細胞を『創る』ことで傷を塞いだのだろう。

 僕や小雪にも言えることだが、神の力を持っている相手は即死させなければ撃破不可能らしい。細胞を『創る』ことができるならば血も『創る』ことができるだろう。

 次は頭を狙ってナイフを突き出す。即死を狙うなら頭を狙う以外に手はない。正確に言えば、脳を傷つける。心臓は刺したところで一瞬は意識が残るらしい。死人から話を聞けるわけでもないので確証はないが。

 それは後ろにのけぞりながら回避される。僕は自分を加速させて、のけぞる速さよりも速くナイフを振るう。しかし、それも後ろに飛んで回避される。今回も僕との間に空気を『創って』押し出したのだろう。

 ⋯⋯まあ、そううまくはいかないか。これで終わってくれるのが理想だったのだが⋯⋯。

 僕はそいつを追って地を蹴る。僕に向かって何かを射出してくるが、それらはすべて朽ち果てる。空気も朽ちさせたいものだが、そうはいかない。僕の力は『変化』であって、それを完全に削除するものじゃない。だから、吹き飛ばされるのを防ぐことはできない。僕に向かって使うのならば、無理やり通ることはできるのだが自分に回避の手段として使われているとなると、防ぐ手立てがない。

 つまり、僕らに決定打はない。僕は躱されることを止めることはできないし、相手も『創った』ものが僕にダメージを与える前に朽ち果てるのだから僕が傷を負うことはない。

 それでも、攻撃を辞めることはない。次に振るわれたナイフは確実に、そいつの頭を切り裂いた。浅く切れただけだが、攻撃を与えることができた。その傷はすぐに塞がれる。だが、もっと速く動けば即死させられる。

 一瞬そう考えたが、すぐに考えを改める。辺りから飛来するナイフの軌道を『変化』させて、神に向ける。それは、隙間を飛んで回避される⋯⋯が、そいつの足に一本のナイフが刺さっている。それを見て、僕はにやりと笑みを浮かべた。

 だから僕は、そいつにさらに接近する。懐に入り込んで、喉にナイフを突き立てようとする。もちろん、それは回避されるわけだが、ナイフはそいつの喉元に一瞬当たった。僕は、また周りのナイフの軌道を『変化』させて、そいつに向ける。それらは一斉に飛来する。今度は逃げ場はない。

 そいつは、辺りに空気を『創り』出してかそれらのナイフすべてを吹き飛ばす。しかし数本は吹き飛ばしきれずにそいつに突き刺さる。もちろんそれらはすぐに抜かれて傷も塞がれる。

 僕は、そこに追撃を仕掛ける。再度、辺りのナイフすべての軌道を『変化』させて、そいつに向かわせる。同様に、それらも吹き飛ばされる。だが、先ほどよりも多くのナイフがそいつまでたどり着く。


「いくぞ」


 だから、僕は一言そう呟いてそいつに接近する。すでに、先ほど刺さったナイフはなく傷もない。一見すれば、前と状況は変わっていない。むしろ、時間がたっている分僕が不利だろう。

 だが、現状は違う。僕のほうが、いや僕らのほうが有利だ。そろそろ慣れてきただろ?

 僕は、再度懐に潜り込んで、ナイフを刺突させようとする。それは、また回避されるが、一瞬僕は能力を全力で発動させる。そして、そいつの後ろまで回り込む。

 それと同時に、先ほど僕が居た場所に、存在感を『無』くしていた小雪が現れる。神は一瞬そっちに意識を奪われる。そして、僕はナイフをそいつのこめかみに刺突させる。

 神はすぐにそれに気づいて、空気を『創って』回避を試みる。だが、それは不発に終わる。小雪が『創った』そばから『戻して』消しているのだ。僕には回避を防ぐ方法は持ち合わせていないが、小雪はそれができる。一瞬でも、自分の力だと思った自分が恥ずかしい。パートナー失格では?

 と、そんな反省は後でするとして、僕の振るったナイフはそいつの脳を切り裂く。脳を切ってしまえば人間は死ぬはずだ。人間じゃないので怪しいが⋯⋯。

 僕に頭を貫かれたそいつは、重力に従って倒れる。そして、ピクリとも動かなくなる。おそらく、死んだのだろう。一応、警戒しつつそいつに近づいて、心臓も止まっていることを確認する。

 終わったか⋯⋯。完全に警戒を解くわけではないが、一段警戒を緩めた。それと同時に、どっと疲れのようなものが押し寄せてくる。小雪も同じようで、僕らは地面に座り込む。

 そして⋯⋯。


「お疲れ様」


 後ろからそんな声がしたと思ったら、肩に手が乗せられた。それと同時に、僕の意識が遠のいていく。小雪も若干目が虚ろになっている。そのまま、僕らは意識を失った。


イ「心臓刺しても死なないの?」

宵「死ぬよ。ただ、数十秒くらいは意識が残る」

イ「その間に彼らは治せると」

宵「そう。脳に血が流れなくなるだけだから、数十秒なら残っている血だけで意識が保てる⋯⋯はず」

イ「はずって、それでいいの?」

宵「理論上は正しいはず」


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