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第93話 反撃開始

〈side空華〉


 タイミングの悪い⋯⋯。僕は心の中でそう愚痴った。

 確かに、小雪ちゃんと母親の再会は喜ぶべきことだし、僕の事情を忘れてしまう気持ちも分かる。結果、間に合わなかったのだから、愚痴の一つでも言いたくなる僕を許してほしい。

 所詮、一人間である僕には未来のことなんて分かるはずもなかった。ほんとに、確実な予知能力がほしいと心から願ったよ。

 と、そんなことを言っても仕方がない。今僕にできるのはこの空間を維持することだけだ。この空間は外の世界に割り込む形で作られている。だから、ここから外の様子も見れるのだ。

 確かに助かる機能ではあるんだけど、刹那君が自殺しようとしているときなんて何度止めに入ろうとしたことか⋯⋯。僕が入っても止まらないだろうし、小雪ちゃんなら止められると信じていたから待っていたんだけど⋯⋯。確かに、ドラマチックなタイミングで来たよ!でもね、それを間に合うか合わないかひやひやしながら見る僕の身にもなってほしいよ!

 それに、小雪ちゃんが来てからも大変だった。刹那君との感動の再開。しかし、その時の僕の隣には母親がいた。彼女も娘と長らく離れていたのだ。懐かしくて飛び出そうする。

 だからと言って、ここで出してしまうと、彼らの再会に水を差すことになる。だから僕が押さえ続けていたんだけど⋯⋯。仮にも神様だったんだから、僕みたいなのには簡単に止めることはできない。

 だから、四苦八苦しながら押さえつけていた。怪我を負わせてくるようなことはなかったけど、どっと疲れた。もう二度としたくはない。

 とはいえ、まあ、感動的なシーンを見れたから良しとするかな。

 で、今の現状だけど、悪いわけじゃない。おそらく、小雪ちゃんに自分の能力を『変化』に戻そうとしているのだろう。彼女の考えていた『創造』の神に対抗する手段と同じだ。

 それに『戻す』能力は隣の神様が『無』の権能に『変化』の復活を祈って『変化』させたものだ。『戻す』となるところは読めなかったらしいが、それは切り札足りえる。

 さて、あとは頑張ってね。⋯⋯というか、前も思ったけどここを見て面白い?



〈side刹那〉


 それから特にピンチと呼べる事態にはならなかった。回避をすることだけなら容易だった。むしろ、小雪を落とさないように注意するほうが神経を使ったと言っても過言ではない。

 そして、小雪のほうも完了したようで、終わった、との声が後ろからかかってきた。声に緊張を感じたような気がするが、気のせいだろう。

 そう思って僕は、小雪を自分の背から下す。下りるや否や、小雪はささっと僕から距離をとる。流石に、背負うのはやりすぎだっただろうか。恥ずかしさ故とは思ってもいない僕は勝手にそんなことを思った。

 と、そんなことを考えてる場合じゃない。今は『創造』の神とやらをどうにかしないといけない。僕らの周りには変わらず、凶器となりうる破片が飛び散っている。ナイフや岩など、殺傷性の高いものを創り出し続けているのだろう。

 だが、先ほどとは違ってそれらを躱すことは簡単になった。能力で認識を速めているわけではなくて、あの男の言っていた、分かるという状態だ。どこに、どう飛来してきているのかが分かる。どこに『創造』の神がいるのかも分かる。その全能感に酔いしれそうになるが、僕があの男を殺せたということは無敵の力というわけではないだろう。

 結局分かるだけで、体は元のままだ。一撃もらえば、ほぼ即死というのは変わらない。動ける限界の速度も変わらない。だが、そこまで心配するようなことでもないだろう。

 僕は、小雪のほうに目を向ける。


「いくぞ」


 そう言って、にやりと笑みを浮かべる。それに小雪は


「ん」


と返した。

 そして、僕らは駆け出した。飛来する攻撃はできる限り躱して、躱しきれないものは加速させ、朽ちさせる。これは、小雪の消去よりもやりやすいため、広範囲に使うこともできる。だったら、全てに使えばいいと思うかもしれないが、そうはいかない。


「けほっ」


 能力を使った結果、僕は血を吐いた。その都度、小雪が『戻す』ことで治してはくれているが、治っている気がしない。直感が、あまり多用してはいけないとささやくのだ。

 小雪もできる限り自力での回避をしているので、同じことを感じているのだろう。それでも、僕の回復をしてくれるのはありがたい。

 そして、僕はさらに速度を上げる。このままゆっくりと近づくわけにはいかない。いつ、僕らが限界になるかわからないからだ。先ほど血を吐いたように、この能力を使うのは負担が大きい。というか、持っているだけでもかなりしんどい。体がだるいとかではなく、何かを失っていっていると感じる。僕が侵食されていくような、そんな感覚。

 ⋯⋯これが終わったら、また小雪に『戻す』ことを頼むことになりそうだ。世話になってばかりだな⋯⋯。

 そう思った僕は、小雪を追い抜く。速度だけなら僕のほうが上だ。そして、小雪のほうに飛んできているものを朽ちさせる。僕が小雪を守る形になるわけだが、特に消耗が早まるわけじゃない。むしろ、小雪が能力を使わずに済む分消耗は少ないと言えるだろう。

 それが分かっている小雪は少しむっとしているようだが、何か言ってくることはない。それをほほえましく思えるが、少しくらい、僕にもかっこつけさせてほしい。


宵「空華のパートはここで入れるしかなったんだ、許して」

イ「⋯⋯苦労人?」

宵「本人もなんでこんなに胡散臭く思われるのかって思ってるそうです」

イ「そういうキャラとしか言えなくない?」

宵「全くその通り」

イ「もう少し健康的な顔色になれば⋯⋯」

宵「そういう問題でもないような⋯⋯」


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