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第89話 救い

〈side刹那〉


 瞬間、僕の体は何かに押し倒された。



〈side⋯⋯〉


 ふわりふわりと、奇妙な浮遊感に襲われる。ここは、どこ?私は誰だっけ?一瞬そんな疑問が生まれるけど、すぐに消える。不思議と思考がまとまらない。

 なんだか、何かに、どこかに、体が落ちていく。水底に落ちて行っているような。ゆっくりと、確実に私の体が落下していく。手を伸ばしてはみるけど、手が水面まで届くことはなかった。

 それが、ひどく怖く感じた。特に理由はない。むしろ、落ちていくこと自体は心地いい。このまま、ゆっくりとこの流れに身を任せてしまいたいとすら思ってしまう。だけど、それじゃ駄目だと、何か、心が訴えてくる。私はまだ、ここに居ちゃいけないのだと、そう主張している。

 けど、どうしても、それがなぜか、思い出せない。だから、あと一歩、行動を起こせないでいた。水底はきっとまだ遠い。そう直感していた。だから、その間に、私は思い出したい。そうしないといけない。

 だというのに、全く体が言うことを聞かない。何もできずに私は落ちていく。誰かが、掬い上げてくれないものか、そんな思考が頭をよぎった気がする。

 しかし、それと同時に私はひどく憤りを感じた。そんなことを考えた自分に。私は動かないといけないのに、誰かに頼ろうなんて、そんなことを思っちゃいけない。それじゃ、彼の隣には⋯⋯。

 ふと、私に熱が戻ってくるのを感じた。だから、私は落ちてしまうわけにはいかない。死ぬわけにはいかない。届けと、私は思い切り手を伸ばす。

 もっと、もっとと、手を上へ上へと伸ばそうとする。そして、掴み取る。それは光り輝いて、私の中へと戻ってくる。



〈side小雪〉


 目を覚ます。そこには、首のない私の体があった。私はここにいるのに首のない私も目の前にあるという不思議。恐ろしい⋯⋯。

 自分の姿を見下ろしてみるけど、そこには私の体は⋯⋯。

 !!

 いや、ちゃんとあるよ。あるけど⋯⋯。

 すぐに、私は目の前の首のない私から服を拝借する。私の返り血を『戻す』。そして再度、その服を着る。

 ふう。

 一息ついて、意識を切り替える。

 そりゃそうだよね。生き返ったっぽい直後だと、服着てないよね。

 落ち着こう。

 ⋯⋯よし。

 部屋にあるナイフを私の手元に『戻す』。

 じゃあ、急ごう。私は能力を発動させ、元の世界まで私の位置を戻す。

 すぐさま、目の前の景色が切り替わる。この世界に来るために開いた扉の前。ひとまず、ここに移動した。私たちの組織まで戻ってもよかったが、彼が居なかった場合に確実にしばらく拘束されることを確信していたからだ。早く、早く彼に会いたかった。

 会って文句の一つでも行ってやろうと思った。意地でも、隣に居座ってやろうと思った。何度も言うように、それはきっと私じゃなくてもいい。でも、私がしたいから。それが、今の私の意志だから。

 ふと下を見ると、何かの紙が落ちていることに気づいた。それを私は拾い上げる。それは何かの地図だった。何やら一か所に印がつけられている。地図に写っている地域には行った覚えはある。だけど、そこに何かがあった記憶もない。

 印がついている場所に至っては、ただの森だった木がする。ひとまず私は、そこに行っておこうと思った。これを、彼や彼の組織が発見していたのなら行かないわけがない。その時に担当となるのは間違いなく彼だろう。彼は組織の中では最強だ。

 今ちょうど、彼がここにいるとは限らないけど、一応行ってみる価値はあるだろう。

 そう考えた私は、その地図に写っている地域に移動する。一度行ったことだけはあるから、『戻す』能力で移動できる。たどり着いてすぐに、印の記された場所に向かう。

 鬱蒼と茂る森を進み、印の場所辺りまでたどり着く。その周りを探っていると、突然目の前に建物が現れた。

 そして私は中へと入る。そこには、また紙が落ちていた。拾い上げてみるとそれは、この屋敷の地図だった。これにも、印が記されている。誰かの罠である可能性も考えるが、行ってみるべきだろう。

 そう考えて私は、その屋敷の中を移動して地下へと続く階段を降りる。そして、その下にある扉を開ける。そこには、少し長めの洞窟がありその奥にまた一つ扉があった。なんのための洞窟だろう?

 そんなことを考えつつ、奥の扉までたどり着く。そしてそれを開こうと力を籠める。すると扉は開くわけではなく、奥側へと倒れこむ。どうやら壊れていたようだった。

 そして、奥に広がっていた景色はぼろぼろに破壊された部屋に、血だらけで横たわる男と女。女に至っては原型をとどめていないが、おそらく私を殺した女だった。

 そして、ナイフを両手で握り、自分の首元へ突き立てようとしている彼の姿だった。

 だから私は、地を蹴り彼のもとへ駆け出す。全力で。

 そして、私は彼が首へナイフを突き刺す前にたどり着く。そして、力の限りに彼を抱きしめた。

 つもりだったが、勢い余って彼を押し倒してしまう形になる。その反動で彼の握っていたナイフは回転しながら飛んでいく。そして、私と彼は倒れこむ。


イ「都合がいい展開だね」

宵「あの地図とかめちゃくちゃだよな⋯⋯」

イ「誰かが用意したの?」

宵「さあ?それは知らない」


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