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第81話 明ける

遅くなってすいません!

〈side小雪〉


 ⋯⋯。⋯⋯それから、数時間?下手すれば数日、過ぎた。時間の感覚が曖昧だ。そもそも、この場所で時間なんて何の意味も持たないのか⋯⋯。

 その間、私は代わる代わるとやってくる村人に暴力を振るわれ続けた。全身が痛い。手足を動かすこともできない。呼吸するだけでも痛みが走る。それに、なんだか、意識を保っていることすら億劫だ。なんでまだ私は死なないのか、そんなことばかりを繰り返し考える。

 そろそろかな。ぼーっとした頭に闇がかかる。眠い⋯⋯。

 私の意識が落ちていく。



 ⋯⋯。目が覚める。目に映る景色に変わりはない。なぜか、体の痛みもある程度引いていた。意識がない間は殴られていなかったのだろうか。もういっそ、意識のないまま殺してくれたら楽なのに⋯⋯。私がここまで生きてる時点で簡単には殺してくれはしないか⋯⋯。

 自殺する方法もない。体中が痛いとはいえ、死ぬほどではないし、ナイフなどの道具もない。地面に伏せて死のうとしたこともあった。途中で息苦しさに耐えられず顔を上げた。

 意識の戻った私に気づいたようで、村人の一人が私のところへやってくる。そのまま、私に拳が振るわれる。その拳を私は受け入れる。躱そうとも思えない。

 その拳を受け、顔が痛む。そのまま、体のほうにも拳が振るわれる。小柄な私の体は少し宙を舞って落ちる。そして、私は倒れこむ形になる。地面に伏せた状態になった私を村人は蹴飛ばす。私の体はそれによって地面を転がる。そのまま、連続で蹴飛ばされ続ける。それによってころころと私は転がる。口に土が入り、血と混ざり合って気持ちの悪い味が口の中に広がる。吐き気すら催す。

 それが続き、私は仰向けの状態になる。空いっぱいの青が忌々しく思える。地を這うこちらのことを知らずにさえわたっている。仰向けになった私を幸いと、村人は踏みつける。腹を思いきり踏みつけられ、吐き出すように息が漏れる。何度も、踏みつけられているうちにあばらが折れたようで、息を吸うだけでずきりと鋭い痛みが走る。さっきまでの痛みはまだまだだったんだな、と他人事のような考えが頭をよぎる。

 それから数分して、どうやら折れたあばらが肺に突き刺さったようで、血を吐き出す。思わず、あおむけ状態からうつ伏せになる。その血を吐き出すときに漏れた声に憤ったようで、私を蹴飛ばす力が増す。一度の蹴りで、一メートルくらい転がっていく。

 そのうちに、壁に突き当たり私は壁に挟まれた状態で蹴られ続ける。衝撃が逃がされなくなった蹴りが私に突き刺さる。先程よりも増した痛みに、あぁ、と声が漏れる。それに憤ってまた村人の蹴りの力が増していく。

 そんな蹴りを受け続けている私は意識を保つなんてことができるはずもない。そのまま、また意識が落ちていく。



 また、目を覚ます。私の体の痛みがなくなっている。ふと、思い至ることがあった。私の『戻す』能力。それで傷を治しているのではと。試しに能力を使ってみる。案の定、私の傷の一つが治癒する。

 ⋯⋯。そんな光景を見た私には絶望しかなかった。つまり、無意識のうちに能力で傷を癒し続けていたということ。気絶したタイミングで発動させていたのだろう。無意識的に発動するものを意識的に止めるのは難しい。よりにもよって意識を失ったタイミングだし。

 もうやだ。なんで、なんで死なせてくれないの?これのせいで私は未だに生きている。これがなければもう終わっていたのに。痛いのなんてなくなってたのに。

 今まで、停滞していたはずの思考がとんでもない速度で巡っていく。こんな時に限って、私は心を閉ざせなかった。逃げ道が閉ざされていたと知ったのだ。それは仕方ないと言えるのかもしれない。だからといって、心が壊れないままを保てるわけもない。

 思考が散り散りになっていく。冷静に何も考えられない。近づいてくる村人に気付くこともできない。振るわれる拳を条件反射で躱してしまう。

 そんなことをされて、村人が怒りを抱かないはずもなくさらに強く私に向かって拳を振るう。私は、それすらも躱してしまう。それにさらに憤った村人はナイフを取り出す。私の自殺を防ぐためか今まで出されたこともないものだ。

 それを奪って自殺しようと、冷静だった私なら考えられたかもしれない。しかし、そんなことを考えられる精神状態じゃない。

 生存本能からか、村人の手にあるナイフを奪い取る。そのまま、村人にナイフを突き立てる。村人の胸から血が飛び出る。その返り血を正面から浴びた。生暖かい血だったがそれで私の体温が冷えていくような感覚がした。それと同時に、頭も冷えてくる。

 冷静に状況を理解していく。手に持つナイフと、今もなお血を噴き出している村人。

 それを見て、私は⋯⋯特に何も感じなかった。虚無感、と呼ばれるものが頭の中を支配していた。なんだか、何もかもがどうでもよくなってくる。

 でも、なんだか、それだけじゃ終わらなかった。ふわりと私を理解する。今、私はこの村人を殺した。それで、よく分からない虚無感に襲われている。全てがどうでもいいと思っている。

 こんな時に彼の顔が思い浮かんだ。復讐を目的とする彼を。



 そして、私の中に熱がこもっていくように感じた。ぼんやりとしていた思考も今ははっきりしている。虚無感も消え去っていた。

 だから、私はナイフを握る手に力を籠める。全て分かったような気がした。だから、これからやらないといけない。これは、過去の自分が気付けなかったことだから。私は、私の理想のために、生きる。


イ「一切合切会話がない」

宵「ここで入れると空気がね⋯⋯」

イ「一つもないのもどうかと」

宵「し、心情描写に力を入れたのでどうか許して⋯⋯」


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