表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/101

第75話 空華の扱い方

〈side刹那〉


「え、ダメ?」


 とぼけているのかそんなことを言ってくる空華。


「ダメに決まってるだろうが」


 ここに来たのはこいつが逃がしたと言っている人の居場所を聞きだすためだ。決して、雑談をしに来たのではない。


「ちぇー。まあ、十分な時間は稼いだと思うしいっか」


 不服そうな顔をしてそんな言葉を口に出す空華。


「とりあえず、この水飲み終わってからでいいかな?」


「よくない」


 僕はそう言って、空華の持つコップを取り上げる。これ以上こいつのペースに付き合っていたら、いつまでも先に進むことができない。


「あぁ⋯⋯」


 空華は僕の取り上げたコップに手を伸ばすものの、座った女性と立った男性の身長差を考えると届くはずもない。

 そうして僕は、そのコップの水を一気に飲み干す。空華の様子を見るに毒が入っているわけでもないだろうし、空華の性格を鑑みるに、この水がある限り先に進めない。

 そんな僕の様子を見た空華は、にやにやとした笑みで、


「間接キスだよ~」


と、そんなことを言ってくる。確かに、空華は美少女ではあると思うが、まあ性格が性格なのでドキドキするようなことでもない。それに、ここで水はなくしておかないと、ここから移動できる気配がない。


「⋯⋯うわ、無反応⋯⋯。つまらないなぁ」


 つまらないと言われましても⋯⋯。まずはその雰囲気をどうにかするところから始めてほしい。


「あ!失礼なこと思われた気配がした!謝れ~。裏切りだぞ~」


 空華は、エスパーなのだろうか。しかも、気配だけで謝罪を求めるとは⋯⋯。それは空華の推測だろうに。後、僕が何を裏切ったんだ⋯⋯。何かの反応を期待していた空華を裏切ったといったところだろうか。


「⋯⋯はぁ。さっさと案内しろよな」


 ため息をつきつつ、僕はそう言葉をこぼす。


「え~、どうしようかなぁ~」


 そんなことを言う空華に、僕は手刀を浴びせる。


「――っ!ちょ、分かった。分かったから、連続でたたき続けないで!」


「あ、無意識に」


 一発目は意識的にやったが、そこからは無意識に連続で手刀を叩きこんでいた。まあ、それだけ僕をイライラさせたということで。


「無意識に暴力を振るうな!暴力反対!⋯⋯ストップ、ごめんなさい。謝るのでその手を下ろしてください」


 今度は無意識的に手を掲げ、手刀を準備してしまっていたようだ。まあ、こいつを攻撃するのは仕方ない。雰囲気と言動がそうさせるのだ。自業自得としか言いようがない。


「⋯⋯同じ個所にしか手刀を撃ち込まないのはおかしいでしょ⋯⋯。訓練のたまもの?」


 空華は、頭をさすりながら、そうつぶやく。そうか、同じ場所にずっと攻撃していたのか⋯⋯。そんなことができるようになってるとは、驚きだ。


「分かったから、案内する」


 不服そうに空華はそう言って歩き始めた。そんな様子を見ても特に僕が何かを感じるというわけでもないが⋯⋯。

 そんな空華についていくこと数十分。たどり着いた場所っというのが⋯⋯。


「着いたよ」


 ⋯⋯着いたって言われてもな⋯⋯。周りにあるのは無骨な牢屋で、薄暗いランプが照らしている。さらに、先程まで空華が座って水を飲んでいた椅子が鎮座している。

 つまり、数十分の間館の中を歩き回っていたということになる。


「⋯⋯ちょっと、その手は何かな?」


 そんなことをされた僕の行動は決まっている。手を振り上げ、空華の頭めがけて振り下ろす。それを繰り返すこと一分程度。


「⋯⋯僕が悪かったです。本当に申し訳ございませんでした」


 流石の空華もこれは堪えた様で僕に向かって平伏していた。


「今後はこのようなことがないよう心がけますので、どうかご慈悲をいただけたらさいわいでございます」


 へりくだった態度の空華に少しイラっと来たので追撃を仕掛ける。


「謝ります、謝りますから!どうか、どうかお許しを」


 それから、さらに数分手刀を浴びせたところで僕の手が痛くなってきたので止める。その頃には空華も地面に倒れ伏し、バタンキューといった状態だ。


「⋯⋯ひどい目にあった」


 それでも一分もしないうちに復活するのが空華という人間で、このよう舐めた態度をとるのだ。

 そんな時は、手を上に揚げると⋯⋯。


「すいませんでした」


 すぐさま、許しを請うのだ。いや、こんな特技を知れてよかった。まあ、空華にくらいしか使わないが⋯⋯。


「で、ここに逃がしたのか?」


 そもそも、先が牢屋という時点で逃がしたといえるのかは微妙だが、理由もあるかもしれないので今のところは見逃しておいてあげよう。


「そうなるね。逃がしたというのかは微妙なところだけど⋯⋯」


 自分で言うのかそれ。まあ、その通りなのだが⋯⋯。


「で、どこにいるんだ?」


 辺りに人の気配もないので冗談である可能性もあるのだが⋯⋯。それなら追加の手刀を見舞うことになる。


「えっとね⋯⋯確かこの辺だったかな?」


 空華はそう言って壁に手をかける。すると、壁が割れるようにして空間が現れた。


「私の能力で隠しておいたんだよ。ふふ、これ以上の隠し場所はないでしょ」


 こいつの能力は予知ではなかっただろうか。予知の能力でこんなことができるとは思えないのだが⋯⋯。


「⋯⋯さて、みんな~。助けに来た人がいるから出てきて~」


 空華がそう声をかけると、ぞろぞろとその空間から人が出てきた。中には、あの炎の能力者から聞いていた特徴を持つ少女もいた。おそらく、あの子が妹さんなんだろう。にしても、空華が声をかけただけで出てくるのか⋯⋯。あの空華が信頼されているとは⋯⋯不思議な現象もあるものだ。


「えっと、あなたが助けに来てくれた人でしょうか?」


 恐る恐るといった様子で、その内の一人が声をかけてくる。僕は人相がいいとも言えないため、初対面の相手には怯えられてしまうこともある。ボスには表情が悪いと言われたような気もするが⋯⋯。


「ああ、とりあえず、外まで連れていくことになる」


 外で、待機している人に渡してからその人に引率してもらって避難してもらうということになると思う。


「⋯⋯あ」


 僕が言った途端、空華が不穏な声を上げた。


「えっと、その、何と言ったらいいのか、外で待機している人、いないかも⋯⋯」


 予想通り、そんな不穏な言葉を残すのだった。


イ「手刀を数分入れ続けるって、体力持つの?」

宵「⋯⋯能力で回復してるんだよ、きっと」

イ「能力の無駄遣い感が⋯⋯」

宵「結構みんな無駄遣いはしてるから問題なし!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ