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第71話 苦死羅空華

少し長めです。

〈side刹那〉


 この薄暗い石造りの空間に似合わない少女は、不健康そうな顔をしていて不気味だった。しかし、それも石と苔でできたこの空間と見比べると可憐だった。不健康そうな青白い顔色を除いたとしても、十人に聞けば十人すべてが美少女だと答えるであろう。


「そんなに身構えなくても構わないよ。特に戦おうとかは思っちゃいないから」


 ナイフを構えた僕に向かって少女は言った。だからと言って、ナイフをあっさりと手放すわけにはいかない。僕は警戒を続ける。


「んー、まあいっか。そう簡単に警戒を解いてもらえるわけもないよね」


「そりゃそうだろ」


 すぐに警戒を解いてもらえるとでも思っていたのだろうか。そんなあっさりと警戒を解いているようだと僕らの組織ではやっていけない。


「分かったよ。だったら、どうすれば話を聞いてもらえる?」


「さあ、能力がないことを示して、武器を捨てて、手足を動かなくしたら」


「武器を捨てるくらいならいいけどさ⋯⋯」


 そう言って少女はナイフと銃を投げ捨てた。


「警戒をやめてくれるわけではないよね、やっぱり」


 能力がなければ多少警戒を緩めてもよかったかもしれないがそうはいかない。


「能力かぁ。予知の能力って言ったら信じる?」


「それを示せよ」


「そうだなぁ。特にこれと言って特殊な未来が起こるわけでもないし⋯⋯。強いて言えば、今のままでいくと君は死ぬよ」


 いきなり、死を宣告された。医者の余命宣告よりも雑だった。


「それが信じられるとでも?」


 こんな言葉をすぐさま信じるわけがないだろうに⋯⋯。


「うーん。そうは言ってもなぁ。特にこれだっていうのは⋯⋯」


 そう言って、少女は少し考えこむ。それすら様になっているのだから美少女というのはすごいと思う。


「そうだ!⋯⋯今から私たちの間に本が落ちてくる」


 すると突然、僕らの間に本が落下する。


「これで証明でいいでしょう」


 そう言って、どや顔をする少女。まあ、確かに言ったとおりになった。ただな、そうだ!、とか言ってなかったかこいつ。何かを落とす能力だろうか。それとも、言ったことが現実になるみたいな。もしも後者なら僕の死は確定してしまった。ま、流石にそこまでの能力ならば制約はあるだろう。小雪の能力で蘇生は不可能であるように。


「いい訳ないよな?」


 結局、能力が何であるとしても証明できていることに放っていないだろう。先ほども言ったように、そうだ!の一言が信憑性を失わせている。


「むぅ。そこは信じるところでしょうに」


 少女はなぜかそう言って膨れる。


「あ、そいえば私名乗ったっけ?」


 そして、唐突に話題を変えようとする少女。


「いや、話をそらそうとしているのは分かるからな」


 若干呆れつつ僕はそう言った。


「もういいから、話だけでも⋯⋯あれ?別に警戒したままでもいいのか。じゃあいいよ、そのままで。ああ、後、私は苦死羅 空華っていうんだけど、よろしくね」


 少女は、結局自己完結して僕に話をしようとしているようだ。後、自分の名前も結局名乗るんだな。にしても、苦死羅ねぇ、不吉な文字列だな、とそんなことを思っていた。

 話を聞くことに関しては問題ないだろう。先程の、ほんの落下してきた減少から考えるに僕と長い会話をすることが能力のトリガーだとは考えにくい。


「それじゃあ、話を始めましょう。ぱちぱちぱち」


 自分で効果音を言いながら、少女は手を叩く。それはどちらかでいいと思うのだが⋯⋯。いや、そもそも拍手すること自体がおかしいのだけど。


「何から話そうか?いざ、話すってなるとどこから話せばいいのか⋯⋯。何か気になることとかない?私が答えられるなら答えるよ」


 結局、少女の話がすぐに始まるというわけではなく僕に話題が振られる。


「とりあえず、お前をどうにかする方法だな」


 こいつのおかげでかなりの時間を食っているのだ。さっさとこいつから離れ、人質となりえる人々の救助に向かいたい。


「どうにかするって、怖いなぁもう。正直に言ってしまえば私の戦闘力は皆無だからさ、一瞬で殺すことくらいはできるよ」


 何が可笑しいのかそう言って、からからと笑う少女。

 それはともかく、殺すか⋯⋯。あまり敵じゃない人間を殺したくはないんだよな。不思議なことにこの少女からは殺気を感じない。もしかすると、殺気を隠すことがとんでもなくうまいのかもしれないが、まあ先程のポンコツ具合からは想像できない。


「とりあえず、私の希望を言うとね、ここで私の話し相手にでもなってほしいって訳」


 お前の希望は聞いていないのだが⋯⋯。


「僕にも用事があるんだ。もう無視していくぞ」


 人質の救助をまずは第一優先にするべきだろう。


「ん?用事?⋯⋯ああ、ここにつかまってた人?それなら外に逃がしておいたよ。正直、君の組織の救援は期待できないからさ」


 僕の目的を知っていたようで、そんなことを言い放つ少女。信用することはできないが、意識を集中させると、僕と少女以外の気配が地下にはないので事実と思ってもいいだろう。


「つまり、君のすることを私がやっておいたってこと。なら空いた時間を私にくれてもいいんじゃない?」


 どういう論理か分からないが少女はそんなことを言ってくる。


「はぁ、分かった。付き合ってやる」


 いつもなら絶対に無視するところなのだが、不思議と僕はこの提案を飲むことにした。


「うん。今の君ならそういうと思ったよ。じゃあ、気になることを聞いて」


「気になることか⋯⋯。能力の起源とか?」


 ぱっと思いついた学者たちの頭を悩ませている質問をしてみる。答えられるはずもないだろうに。


「能力の起源かぁ、まあ言っても大丈夫だよね。まず、君たちの言う『もの』の能力、これは神様が『創造』の力で『変化』を作り出そうとした結果生まれたものだよ。結局、『変化』作れなかったみたいだけど。で、次が『動作』の能力だっけ、これはさっきも出てきた神様が『変化』の力を『創造』の力で打ち消そうとして作り出したものだよ。『変化』を作ろうとしていた時よりも『変化』に近づいてるのは皮肉だよね。って、こんな感じでいいかな」


 予想は外れて少女はさらりとそう答えた。内容は、『創造』の力で『変化』を創ろうとしたり消そうとしたりと『創造』は何がしたいのか分からない支離滅裂な内容だったが少女は確信をもって言った。

 しかし、そこが問題というわけではない『もの』の能力を知っている。つまり異世界の存在も知っている、ということになる。当然、敵組織の中であるから知っている人がいるのは当然なのだが、敵側の人間であるということを示す。すぐに僕は後ろへ飛びのき少女から距離をとる。


「目的はなんだ?」


 僕を殺すわけでもなくここで会話しているだけというのもおかしな話だ。


「目的?私の?そうだなぁ、何かと聞かれると困るのだけど、強いて言うなら時間稼ぎかな?」


 特に嘘をついている様子もない。時間稼ぎというのは事実だろう。


「時間を稼いで、何がしたい?」


「⋯⋯それは言えないかなぁ。少なくとも今の君には」


 少女はそう言って、僕の質問をはぐらかした。


「⋯⋯そうだね。じゃあ時間稼ぎがてら昔話をしようか。君にも関わる?大事な話だから心して聞くように」


 なぜそこが疑問形なんだ。少女の空気に飲まれて僕はそんなどうでもいいことを思っていた。

 そうして、少女は語りだす。


宵「タイトルの不穏さ⋯⋯」

イ「内容は軽めなんだけどね」

宵「まあ今回は神話のまとめ回のようなものだから」

イ「あの意味の分からないやつね」

宵「一応伏線なんだけど⋯⋯」

イ「もうちょっと書き方工夫するべしだね」

宵「善処します⋯⋯」

イ「それと、苦死羅って名前考えたのは深夜テンションでしょ⋯⋯」

宵「実際深夜だった⋯⋯。とはいえ、大事なキャラだから」

イ「正直、伏線が多すぎるんじゃない?」

宵「作者も分かってないくらいあるだろうね⋯⋯」

イ「最終回後に伏線解説の回でも作る?」

宵「それしかないかなぁ」

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