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第70話 侵入

〈side刹那〉


 そうして、僕は念願の組織に向かっていた。かねてからの目標であった復讐の達成が近いのだ。良いイメージは持たれないかもしれないが、僕にとっては重要なことで、正直に言ってしまえばこのために生きてきたと言っても過言ではない。今思うと、異世界から帰ってきて早々に組織の手掛かりが見つかることは奇跡に近いだろうな。

 今まで、探し続けても見つけることができなかった組織だ。早めに見つかって良かったと思う。記憶を失っていた時の経験のせいで復讐に対する気持ちが薄れる可能性もあった。

 だからと言って、小雪を恨んでいるというわけではない。小雪だって考えてのことだったと思うし、最後には話してくれた。確かに小雪は僕が一時期、記憶を失ったままの状態にしていたけれど、小雪が居なければ今もなお忘れたままだったのかもしれない。だから、恨もうとは思えない。言われたときは混乱して雑な言葉で別れてしまってが、それでよかったと思っている。

 小雪は優しい少女だ。そんな少女を僕の復讐につき合わせるわけにはいかない。こちらで任務をしていたといってもそれは生きていくためで好きでしていた訳ではないと思う。だから、あちらでも暮らしていくことは可能だろう。そもそも、僕とは異なる人間なのだ。僕と同じ環境で生きるべき人間ではない。そのほうが、きっと小雪にとって幸せな人生なのだから。

 そんなことを考えているうちに、その組織へとたどり着いた。今回の組織のアジトは、またも森の中にあるようだが、異世界にあったものと同じように近づかないと認識することができないようだ。認識を変えるような魔法があるとは思えないため、能力由来の効果だと考えられる。鎖で触ってみたが解除されることはないため、能力者本人を拘束する必要があるのかもしれない。

 近づいたことで僕にも認識ができるようになってきた。以前は気づかなかったが、見えないというわけではなく認識できないという状態らしい。アジトがある場所の奥の景色が今まで見えていた記憶はなかった。

 そして、今回のアジトは屋敷という形をとっている。見つかることを想定していないのか、罠の存在は見当たらない。一応、警戒をしつつその屋敷に近づく。小さな穴をあけ先に人、そしてセンサーがないことを確認してから扉を開ける。

 屋敷の中に入ると、まず目に映る大きな階段。その階段は途中で左右に分かれ、その上にはよくわからない絵画が飾られている。そうして、その空間は上につるされているシャンデリアによって照らされる。このシャンデリアは以前と違って電気で動いているようだ。屋敷のエントランスと聞いて想像できる通りの構造をしている。

 足音を立てないよう、慎重に歩を進めその内部を探索していく。まずは、人質となりかねない、囚われている人間の救出だ。あの、『燃やす』能力の少年の妹がここに含まれる。僕の復讐が目的とは言え、他の人間を巻き込むことは避けたい。まあ、避けたいというだけで、どうしようもなくなれば見捨てるしかないのだが⋯⋯。犠牲者なしなんて言うのは希望論に過ぎないし、綺麗事でもある。もちろん、できる限り被害者がゼロになることを目指しはする。

 まず、探すとしたら地下だろう。勝手なイメージだが、牢屋は地下にあると思っている。外部から部屋の位置が見えることはない点など利点はあるのだが⋯⋯。

 そのまま、探索を続けること数十分。ようやく、地下に続く階段を見つけた。それは堂々とそこにあるのだが、思っていた以上に見つけることに手こずった。見つからないような位置なら牢屋などへ輸送することが困難になるため分かりやすかったはずなのだが⋯⋯。

 そんな考えが頭に浮かぶが、それを振り払って今は現状を見ることにする。下に続く階段。おそらく先は地下階であるため、この道をまっすぐに進む以外に先に行く方法はないだろう。無理やり外から穴をあけてもいいが、大きな音が鳴ってしまうので本末転倒だ。

 考えても仕方ないので、そっとその階段を下ることにする。下りないという選択肢はないのだから。下からだれかやってこないか警戒しながらさらに階段を下りていく。薄暗いランプが照らしているだけの階段は不気味さのある暗がりで、足を踏み外す可能性もある。こういった道がずっと続くとかなり精神が弱るだろう。心霊的な怖さではなく、常に注意しておかなければならないが故の疲労だ。小雪はこう言った場所は苦手だったようだが⋯⋯。若干顔を青ざめさせていたのを覚えている。

 と、話がそれた。その光を頼りに進んでいくと、階段の終わりが見えてきた。この間に踊り場などはなく常に進み続けるしかないため、なおさら精神力を消耗した。この道にも消耗させる意図があったのだろうか?

 そうして僕は最後の一段を下る。その時、目の前から突然こつんと、足音が響き渡る。


「いらっしゃい。侵入者くん」


 目の前に現れたのはこの薄暗い雰囲気に全く似合わない可憐な少女だった。


うわ⋯⋯。会話文少ない⋯⋯。

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