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第66話 神話

〈とある神話〉


 変化の神が消えた後、世界の停滞は続いた。それに見切りをつけた創造の神は新たに別の世界を作ろうと考えた。現存の世界は変化の権能がある前提で作られた世界だからである。

 そうして、創造の神は一柱のみで世界を作り出した。その世界には、創造の権能をもととした力を広め、それを変化の権能の代用とすることで世界を回そうとしていた。しかし、それは失敗に終わった。創造の権能が他の権能の代用とはなりえなかった。

 結果、世界は変わらず、創造の権能による創造だけが溜まっていった。そうして、その世界もまた崩壊が近づいていた。それと同時期に無の神が元の世界で、不完全な変化の権能を生み出した。結果、その世界はまた正常な状態に戻った。しかし、創造の神はそれを許すことはできなかった。再度、変化の権能を排除しようと動き出した。

 創造の神といえども、同じ神の一柱である無の神の施した隠蔽を解くには至らなかった。創造の神が変化の権能を探している間に無の神は創造の神が作り出した世界を見つけた。

 無の神が気づいたからと言って、完全に解決することは不可能であった。無の神は自身の無の権能を使い、その世界に滅びを生み出した。結果、変化することはないが始まりと終わりが生まれることになった。溢れていた創造物は消え去り、世界が滅ぶ危機は去った。しかし、その世界は停滞したままだった。

 変化の権能はもう一つの世界で使ってしまっているため、その世界に変化をもたらすことは不可能であった。



〈sideミナ〉


 あれから数日が過ぎた。その間、私は訓練をし続ける毎日だった。

 そうして、今日もまた、訓練尽くしの一日になると思っていた。私が、廊下を歩いていると。


「刹那が例の組織に行くことになった」


男にそう声をかけられた。この男が、この組織のトップ、ボスと呼ばれる人間らしい。正直、この人がトップで大丈夫なのかというような人柄だが、仕事はできる。


「例の組織?」


 私はそう言葉を返す。例の組織と言われても分からない。


「刹那の家を燃やす指示を出した組織だ」


「なるほどね」


 刹那の復讐の対象の組織、そこに侵入することになったと。


「それが問題なの?」


 私としては、復讐をすることには賛成の立場だ。私もした側の人間だし。そして、復讐したことには後悔はない。


「危ういんだよな」


「危うい?」


 何が危ういというのだろう。間違いなく刹那は強い。そこらに負ける相手がいるとは思えないのだけど。


「ああ。自分を抑えられるのか、ということだ」


 なるほど。確かに私の時もあの魔族の姿を見たとき、自分を抑えることができなくて突っ込んでいってしまったからね。あの後も、小雪ちゃんに止められなければ間違いなく村に直行していたし。


「そういうわけでな、小雪に行ってもらいたい、ところなんだが今はいないからな⋯⋯。そこでお前に頼みたいわけよ」


 小雪ちゃんと接触するのは現状難しい。だから、刹那とかかわりのある私に行ってもらいたいと。


「正直、私の話を聞いてくれるかも怪しいんだけど」


 刹那は今、私がこちらの世界に来ていることを知らない。私が行くとなると間違いなくおかしな状況になる。


「それも分かってるんだがな⋯⋯。頼める相手が居ねぇんだよ」


「いや、いるでしょ。刹那の知り合いとか」


 こちらの世界で暮らしていたなら必然的に関わりあってきた人だっているはずだ。


「それが居ねぇんだよ。基本あいつが会話するのは俺か小雪だけだったからな」


 なるほど。本当に無口だったのは小雪ちゃんじゃなくて刹那のほうだったということか。

 と、ふざけてる場合じゃなくて、刹那が暴走しないように私がついていくね⋯⋯。正直、自分の世界に戻ることを優先したいけど、そうも言ってられないよね。


「分かりました」


 私は、その頼みを承諾する。うまくいけば刹那を協力者にさせることもできるかもしれない。小雪ちゃんに会いに行くのが嫌だとしても、助けられた恩を押し付ければ何とかなるだろう。刹那はそう言う人間だ。卑怯と言われるかもしれないが、小雪ちゃんが心配だということに変わりない。


「すまないな」


 男はそう言って頭を下げる。当然私にも利益があるので受けるに決まっている。だから、頭を上げる必要はないのだけど。

 そうして、私は刹那に隠れてついていくということになった。なるはずだった。


『緊急警報です』


 急にサイレンが鳴りながらそうアナウンスがされた。組織内は静まり返って、続きのアナウンスを聞き逃さんとしている。こうしてみると、この組織の連携がよく取れているのだと分かる。


『内部に侵入者がいます。戦闘員は戦闘態勢に入って、非戦闘員は急ぎ避難してください』


 その声を聞いた途端、一斉に周りが動き出す。戦闘員と思われる人々は戦闘服や武器を取りに、非戦闘員は隊列を崩さぬように案内人に従って避難していく。こういった経験が少なくないのかもしれない。

 私はというと、戦闘員と同じ役割として防衛を行うらしい。男も防衛に参加するようで戦闘準備を整えている。タイミングの悪い、と愚痴を言いながらだが。仮にもこの組織のトップなのだからもう少し警戒するべきだろうと思いつつ、私も戦闘準備を整えるのだった。


この神話が出たら察しのいい人は分かるんじゃないかな?

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