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第65話 結末

〈side刹那〉


 瞬間、僕の体は炎に包まれる。完全に油断したな。僕は自分の治癒能力を速めてやけどしたそばから治していく。そうして、一瞬息を止め、燃えることそのものを速める。すると、炎はあたりの酸素を燃やし尽くして消滅した。その後、少しその場を離れて呼吸を再開する。服はというと、僕の組織の超技術で燃えないものらしい。誰かの能力なのかね⋯⋯。


「ふ、ふざけるなよ。なんで死なないんだよ」


 少年は僕に対して理不尽な怒りをあらわにする。死ぬわけにはいかんだろ。


「俺が⋯⋯死ぬわけにはいかねぇんだよ」


 怒り狂った少年は僕に殴りかかってくる。経験もない少年の攻撃をかわすことなんてたやすい。僕はそれをひらりと躱す。

 それでも少年は僕に殴りかかってくるのをやめない。はぁ、ここで折れたりするなら殺すことに躊躇しないんだがな⋯⋯。ここまで僕に向かってくるとどうしたものかと思ってしまう。怯えている様子を見ても自分がみじめになって、僕に向かってくるとためらいを抱いてしまう。自分の性格が面倒だと思いつつ、僕は少年の攻撃を回避し続ける。

 何がこいつを動かしているんだ?多分だが、死にたくないとかではないと思う。死にたくないだけなら命乞いをするのが普通だ。それなのにも関わらず、怯えはあるものの動けなくなることはない。

 先ほど言っていた妹、だろうか?


「何がしたいんだ?」


 僕は少年に尋ねる。


「あんたじゃ、僕を殺すことはできない」


 少年は、その言葉に黙り込む。分かっているのだろう、僕には勝てないと。これだけ攻撃しても、一切攻撃が当たっていないのだ。能力で焼き尽くそうとしても、完全に防ぎ切った。


「⋯⋯だから何だっていうんだよ!僕は生きないといけないんだ!」


「そうか。僕もお前を殺さないといけない」


「⋯⋯」


 僕がそう返すと少年はまた黙り込んでしまう。


「俺が家を燃やしたからか」


 そこは分かってんだな。


「⋯⋯分かった。ただ、頼みがある」


 少年は、観念したようにそう吐き捨てる。


「頼みを聞いてやる義理はないが⋯⋯」


 僕はそう返すが、そんなことは気にせずに少年は言葉を続ける。


「⋯⋯妹を助けてやってくれ。確かに俺は何人も殺した。だが、妹は関係ないだろ」


「⋯⋯」


 どこにいるかも分からんやつを救えと⋯⋯。というか、僕はお前を殺したいだけだぞ。


「⋯⋯相手の組織の場所は教える。だから、頼む。俺が死んだと報告が行く前に助け出してくれ」


 場所か⋯⋯。おそらく、こいつは僕の家を燃やすために別の組織から派遣されてきたんだったな。

 だったら、こいつが今から言う場所も僕の復讐の対象である組織というわけだ。


「多分だが、その組織には行くことになる。だから、そのついでに救助することになるだろう」


 僕がそう言うと、少年は軽く笑みを浮かべる。


「⋯⋯素直じゃないんだな。まあ、いいか。ありがとな」


 少年はそう言って、今日初めての満面の笑みを浮かべた。

 それに向かって僕はナイフを振り下ろした。



 そうして、僕は組織に帰ってきた。


「なるほどな。で、次はそこに行こうとしてるのか」


 ボスが僕にそう声をかけてくる。


「そうなる」


「そうか。で、少年の妹は救うのか?」


 ここのボスもまた人格者だったな。異世界で出会ったギルドマスターと言い、このボスと言いトップに向いていない人間がトップになるのか。


「さあ?道端で会ったらな」


「何言ってんだか。組織に侵入するのに会わないなんてことはないだろうが」


 そう言ってボスは苦笑をこぼす。


「だったら分かった。お前にその任務を任せる。できるな?」


「ああ、もちろんだ」


 僕らはそんな会話をして、僕は部屋を後にした。

 そうして、僕は自分の部屋まで戻る。作戦決行は明日だ。もうすぐ復讐も終わるのだと想像すると明日という日が楽しみに感じる。何が楽しみなのかと言われるとなんといえば分からないが、僕の目標が達成される可能性があるのだ。



 そして、そして、僕は翌日を迎えた。いつも通りに朝食を食べて装備を取りに部屋を出る。今回の任務は人質の救出や情報収集、そして組織の人間の捕縛と言った、複数の目的があるため朝からの任務となっている。捕縛と言っても生死は問わない。

 準備を終えた僕は一応ボスに報告をしに向かう。


「行くのか?」


「ああ」


「そうか⋯⋯。死ぬなよ」


 突然そんなことを言われる。意味が分からない。僕は死ぬことはないと思っているわけではないが、いきなりそんなことを言われた。流石に不謹慎じゃないか?


「もちろんだ」


 僕に死ぬつもりは毛頭ないのでそう告げる。

 そうして、僕はその部屋を後にする。さて、最終決戦の始まりだ。



〈sideボス〉


「はぁ」


 思わず俺はため息をこぼす。まだ、俺の前には情報整理の仕事があるからだ。前回、刹那が潜入した組織から入手した情報、それが膨大かつ重要すぎて俺以外にまわすこともできねぇ。それを刹那は認識してないんだろうが。

 そして、一番の問題はあいつだ。刹那が捕らえてきた少年。そいつは間違いなく刹那の復讐の対象だったが、生かした状態で刹那は連れて帰ってきた。刹那もいい方向に変わっているってことだろうな。だからこそ、小雪を異世界に置いてきた理由が謎だが。

 まあ、この仕事が片付いたら俺にも仕事がある。いろいろと調べていく中で分かったことだが、ここまで、倒なことになっているなんてな⋯⋯。俺の推測が正しければだが。そこから推測される最悪なシナリオを防ぐため俺も動かないといけない。


ボスは何を知っているんだ⋯⋯?今までの話の中に伏線はありました。気づかせるつもりのない。

分かったらすごいと思います。間違いなく。

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