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閑話 クリスマス1

クリスマス記念ということで⋯⋯。

 少し時は戻り、僕が異世界に行く前の話。

 その日の朝、僕は訓練に明け暮れていた。年末ということで、活動している組織の数も減り、任務の数も減った。秘密組織がそれでいいのか、と思わなくはないがそれは気にしないとする。

 そうして、今日は十二月二十四日。クリスマスイブだ。まっとうな高校生として過ごしていたなら、彼女なんかを作って一緒に居たり、彼女ができなかったらできなかったでそれをうらやんでみたりと、そんな日々を過ごしていたんだろうな。青春の日々に少しうらやましいと思ってしまうが、僕にはそんな余裕はない。そう思っていたのだが⋯⋯。


「というわけで、俺たちの組織も休暇を用意しようと思う」


 という、ボスの言葉により強制的に休日を作られてしまった。しかも、その間はこの建物も完全に封鎖するらしい。つまり、訓練場は利用できない。かといって、外で訓練しようものなら情報の漏洩につながりかねない。

 要は、完全に僕はすることをなくしたのだ。今まで、訓練と任務、たまの休息くらいしかとってこなかった弊害だ。休息と言っても、一日眠っているような休日なので何かをしているというわけではない。体調が悪くならない限り休むこともなかった。だからか、こういった休日を過ごすことには慣れていない。いや、そもそも過ごしたことがない。

 僕がそんなことを考えていると、小雪がとことこと歩み寄ってきた。


「⋯⋯あ、えっと」


 僕の傍に来たはいいものの口を出てくる言葉はしどろもどろとしたもので、全く何を言おうとしているのか分からない。


「あぁ、うぅ」


 小雪はその言葉を最後に完全に口を閉ざした。そうして、僕の傍から離れていく。いや、ほんとに何しに来たの。小雪の後姿を見ながら僕はそんなことを思った。



 それから少しして、また小雪がうつむきがちに僕の傍までやってくる。物陰から視線を感じるような気がするのは気のせいだろうか。この頃の僕は小雪の僕への好意に気づいてはいなかったのでその恋を応援する集団がいるとは想像もつかなかった。


「⋯⋯」


「⋯⋯」


 結局両者一言も放つことができず、なんだか気まずい空間が出来上がる。僕から何か話そうかと考えるが、小雪の用事もよく分からないので話しかけていいものかと思ってしまう。

 それから、二、三分が経った頃、とうとう小雪が口を開いた。女性が話し始めるのを待つのって男としてどうなの、と今更ながら思った。


「⋯⋯えっと、今日空いてますか」


 なぜか敬語で小雪は僕に話しかけてくる。

 僕はついさっき今日一日暇になってしまったばかりなので、全然空いている。


「ああ、大丈夫だぞ」


「⋯⋯!」


 それを聞いた小雪は一見分からないような笑みを浮かべる。この頃の僕はだいぶ小雪の表情も分かるようになってきていた。


「⋯⋯えっと、それじゃあ一緒に出かけよ」


 これで精いっぱいだったようで、小雪は顔を伏せる。物陰からはよく言えた、というような喜んでいるような気配を感じる。


「別にいいが」


 僕も暇だったのでありがたい。にしても、小雪はどうして僕なんかと出かけようと思ったのだろうか。僕はたぶん愛想がいいほうではない。むしろ不愛想と言った感じだと思う。そんな人間と出かけたいって⋯⋯。ああ、今日はクリスマスイブ、ということで誰かと過ごすことに憧れを持っているのか。小雪は以前とある組織にとらわれた状態だったから、そう言った青春に憧れているのだろう。僕はそんな見当違いの結論にたどり着く。


「――!?」


 飛び跳ねようかというくらいに小雪から喜んでいるような空気を感じる。そんなに喜ぶようなことかね⋯⋯。ここまで喜ばれると、相手が僕なのが申し訳なく思えてくる。


「だったら、いつどこで待ち合わせる?」


 今の服装は戦闘用のものなので、このまま街にお出かけというわけにはいかないだろう。僕は特に気にしないが、小雪は女の子だからさすがに、な。


「⋯⋯えっと、それじゃあ」


 小雪と待ち合わせ時間と場所を決めた後に僕らはいったん別れた。



 それから一時間ほどが経った。僕は待ち合わせ場所の前で小雪を待っていた。一応、僕も街行の服に着替えた。


「⋯⋯待った?」


「いや、ちょうどいいくらいだ」


 少しして小雪の声が聞こえてきた。僕はそれに返答しつつ、後ろを振り向く。そこにいた小雪の姿は、コートを羽織って、マフラーを巻いたものだった。いつもと違う姿に少し見とれてしまいそうになるが、それは気にしない。


「それじゃあ、行こうか」


「ん」


 今回は僕が先導して街を歩いていく。まず、僕らは服屋の前まで来て歩みを止めた。偏見にはなるが、女性は服を見るのが好きだというイメージがある。

 そうして、僕らは服屋へと入っていく。いらっしゃいませ、という挨拶を受けながら、服を見ていく。


「⋯⋯これ、どう?」


 小雪も服を持ってきて確認をしてくる。僕がそちらのほうに目を向けると、なぜか男性物の服を持つ小雪がいた。


「どうって、僕の服にってことか?」


「ん」


 どうやら、僕の服を見繕っていたようでそんな返答が返ってきた。


「自分の服も選んだらどうだ?」


 こういった服を着る機会は少ないので、おしゃれに興味がない僕はそう返すのだが⋯⋯。


「⋯⋯後」


 とのことらしい。その後しばらく僕が着せ替え人形にされたのは言うまでもない。


明日も書かないといけませんね⋯⋯。

あと、割とこういう話を書くのは好きだったりする。

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