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第57話 ミナVS???

〈sideミナ〉


 ふと、私は刹那が歩いてどこかへ向かっているのを見つけた。心なしか今までよりも目つきが変わっているような気がする。小雪ちゃんが言ったのかな?だとしたら、小雪ちゃんがそこにいないのはおかしいか。

 つまり、小雪ちゃんとは別れて行動していると⋯⋯。ふと、私は刹那の後をつけてみることにした。

 刹那が小雪ちゃんが黙っていたことを受け入れられなかったのだろうか?正直、その可能性は低いと考えていた。彼女なりの葛藤があったのだ。それを刹那が気づいていないとは考えにくかった。むしろ、よく言ってくれたみたいなことを⋯⋯言わないか。

 だから、違和感を感じたのだろう。

 そのまま、刹那の後を追うこと2時間程度。私が刹那を見つけた森の中まで入ってきていた。どうしてここに来たのだろう。そんなことを考えつつも尾行を続ける。

 さらにしばらくして、ちょうど私が刹那を見つけた場所のすぐそばまでやってきていた。そのまま、刹那は何かを探し始めたようだ。この辺りで見つかるようなものは全く思いつかない。

 私はそんなことを考えながら、木陰に身を隠していると、突然刹那の姿が消えた。

 私は驚きつつ、刹那が消えた場所に近づいてみる。するとそこには先ほどまではなかったはずの扉が現れていた。

 この扉は一体?以前にあった屋敷と同種の方法で隠されているのだろうか?だとしたら、この扉は隠されるだけのものなのだろうか?私はその扉をさらに観察してみる。そこにあるのは扉だけで、一見するとどこかにつながっているようには見えない。

 隠されるほどのものでかつ、瞬間移動のようなことができる扉。刹那がくぐって行ったと考えられることから推測すると、この扉の先は刹那の元居た世界ということだろうか?そうだとすると、この森で刹那が倒れていたのも納得がいく。

 つまり、刹那は小雪ちゃんを置いて元の世界に戻った可能性が高い。ここで、刹那を追いかけるべきか、戻って小雪ちゃんに話を聞いてみるか⋯⋯。戻るべきだろう。本当に刹那が小雪ちゃんを捨てたのなら、小雪ちゃんのことが心配だ。

 私はそこまで考えて、その場を後にしようとする。

 瞬間、私に向かって剣が振りぬかれた。私はそれを後ろに飛んで回避する。

 そして、私に向かって攻撃をしてきた相手の顔を見る。そこには、黒い髪をした青年がいた。どこか刹那に姿が似ているように見える。つまり、刹那の世界側の人間だろう。

 あの村であった男が動き始めたのだろうか?そんなことを考えながら、私はレイピアを抜く。


「私に任されたのは扉の守護なんですがね⋯⋯。まさか見つける『停滞者』がいるとは思いませんでしたよ」


 『停滞者』って何のことだろう?と疑問を覚えるが、それを振り払って目の前の青年に意識を向ける。そして、私はその青年に接近して突きを繰り出す。しかし、青年はそれを軽くいなして、反撃を繰り出してくる。

 私はそれを躱しきれず、頬から血が流れる。この青年は間違いなく私よりも戦闘技術は高い。下手をすると小雪ちゃんより単純な戦闘能力は上かもしれない。そうなると、隙をついて能力で一気に畳みかけるしかないだろう。

 私は再度接近し、今度は警戒をしつつ攻撃を仕掛ける。しかし、それも簡単に躱される。再度、青年は反撃を繰り出すが、それを予測していた私は余裕をもって回避する。しかし、それにもすぐに対応され、追撃が飛んでくる。それも回避するが、また追撃される。

 結果、私は防戦一方の展開を余儀なくされた。この流れで行くと、能力を使ったとしてもすぐに対応される未来しか見えない。

 幸い、青年の身体能力は低いようでそのおかげで何とか捌くことができている。言い方を変えれば身体能力が低くともそれを補えるだけの技量があるということだ。私は仮にもAランク冒険者なのだから、技術的な面ではあるほうなのに、この青年と言い、小雪ちゃんと言いはるかに私よりも技術の高い人間がいるという刹那の世界の戦闘教育はどうなっているのだろう。

 私がぎりぎりの回避を続けていると突然青年が後ろに飛んだ。


「⋯⋯『停滞者』の中では強いほうかもしれませんが⋯⋯所詮そのレベルですね」


 余裕だろうか?青年は突然話を始めた。実際、どうにか抜け出す方法は思いつかなかったのだけど⋯⋯。


「さっきから言ってる『停滞者』っていうのは何?」


 もうこの際、気になったことを聞いておこうと思って、私は青年に向かって質問を投げかける。


「さて?私以外の人間かもしれないし、この世界の人間かもしれませんね」


 この世界⋯⋯。つまり刹那の世界の人間だということか。『停滞者』についてはさっぱりわからない。


「あぁ、でもせっかくだからヒントでもあげましょうか。分からないとは思いますが⋯⋯」


 終始上から目線で話し続ける青年に多少イライラしてきた。


「『停滞者』はもう過去の存在ですよ」


 ⋯⋯それだけ?というか、私に向かって『停滞者』と呼んでいておいて、もういないって一体?


「さて、休憩はこのくらいにして続きを始めましょう」


 そう言って、再度青年は私に向かってくる。私はそれに合わせて、能力を発動させる。青年の足元に刃を発生させる。

 青年はそれに躓き、姿勢を崩す。そのタイミングで刃を一斉に発生させる。それらすべては、青年のもとへと向かっていき⋯⋯止まった。


「いやいや、危なかったですね。ですが私には届きませんでした、っね」


 青年は私に向かって剣を振るう。すべての刃が突然止まったことに呆然としていた私はそれに反応するのが遅れ、無理やりレイピアで剣を受けるが、衝撃を殺すことはできず、私は吹き飛ばされる。


「やはり、戦闘に慣れていませんね⋯⋯って、あっ」


 青年は突然そんな声を上げた。瞬間、私の空間の感覚を失う。だんだんと意識が混濁してくる。吹き飛ばされて頭でも打ったのかな。そんなことを考えていると、私の意識は闇にのまれた。

 私が吹き飛ばされた場所は偶然にも世界をつなぐ扉だった。


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