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第51話 結局最後は⋯⋯

〈side小雪〉


「まず、結論から言おうかな」


 ミナさんはそう前置きをして、


「私にはそれが正しいかは分からないから、そこは理解しておいて」


と告げた。私は期待していたわけではないけど少し落胆する。


「このことについては考えてはみたんだよ。で、その答えがこれってわけ」


 どういうことだろうか?私は思わず首をかしげる。


「言わないなら刹那は小雪ちゃんの言う幸せに過ごすことができる。言ったなら、小雪ちゃんのことを思い出してくれるかもしれないってことになる」


 忘れられたままはそこまで堪えていないけど⋯⋯。


「相手をとるか、自分をとるかってことね」


「それなら相手、刹那をとる」


 私は意思を込めてそう告げる。


「そう?まあ、そうだと思っておくね」


 本心なんだけどな⋯⋯。


「まあ、ならそれが刹那のためになるかってことなのかな。そうだとしても正しいとも正しくないとも言えないんだけど」


 彼のためになるか、か⋯⋯それはそれで少し違う気がする。


「そもそも、私は刹那の性格とかはよく知ってるわけじゃない。まだ小雪ちゃんの方が分かるでしょうね」


 伊達に数年一緒に活動してきたわけじゃない。もちろん、刹那の性格とかはある程度分かっている。


「そこで聞くんだけど、今刹那に本当のことを伝えたらどうなると思う?」


「⋯⋯多分、なんで黙ってたんだって言われる」


 少しの希望を込めてそう答える。いや、推測から目をそらしていただけかもしれない。


「それだけ?」


「⋯⋯っ」


 でも、そこを追及される。


「⋯⋯もう一緒には居てもらえない」


 あぁ、分かっていたことだけど、いざ口に出してみるとそうなんだと無理やりにでも理解させられる。逃げることはできない。

 私が一緒に居たいから黙っているべきか悩んでいるのか、そうなら、いや、そうなのだろう。私はやっぱり自己中心的な人間だ⋯⋯。


「何考えているのかは分かるけど、私はそれが悪いことだとは思わないよ」


 私は勢いよく顔を上げる。きっと怪訝な表情を浮かべている。


「人間っていうのはみんな自己中心的な考えだからね、私はそれが悪いとは思わない。きっと、内容が違ったら刹那は良かったって言ってくれるんじゃないかな。人間らしくなったって感じで」


 人間らしい?


「昔、組織に捕まっていたころ、刹那たちに保護される前の小雪ちゃんって何も感じないし考えようともしてもいなかったの思うのよね」


 確かにあの頃は何もなかった。今考えるとかなり辛いことをさせられていたのに、淡々とこなせていたような気がする。私はその頃まだ、いなかった。


「それが今、刹那が離れるかもというだけで悲しいでしょ。それって、その頃の小雪ちゃんじゃ考えられないことだったはずなのよね」


「⋯⋯でも、それは彼に迷惑をかけることで、私の思いなんて考えない方が!」


 私も焦っているのか強く言ってしまう。


「そんなもんよ。刹那の復讐への思いだって、小雪ちゃんの迷惑になりかねない」


「そんなことない!」


 考える前に言葉が出てきてしまう。


「ふふ。そうでしょうね。小雪ちゃんは迷惑に感じていない。でも、それは確かに小雪ちゃんにもかかわってくる」


 ミナさんは少し笑ってからそう言った。否定のしようがなく黙り込んでしまう。


「結局、迷惑かどうかは本人が決めるものなのよ」


「だったら、刹那は拒絶されてしまう⋯⋯」


 私はそう呟く。


「割と押せば何とかなると思うけどなぁ。悪いほうばかりに考えてちゃ仕方ないって」


 意固地になってでも傍にいるということだろうか。

 ⋯⋯それでも、私にそれを耐えられる気がしない。かなり長い間私を拒絶し続けるだろう。そんな時間拒絶され続けて私の精神はきっと持たない。

 私がそれをミナさんに言ってみると、


「それは私にはどうしようもできないなぁ」


と、苦笑しつつ言った。


「それは小雪ちゃんの覚悟の問題よ。持たないなら言わなければいいだけだから。最初に言ったでしょ、それが正しいのかは分からないって」


 そう言ってからミナさんは真剣な顔に変わる。


「私としてはね、言ったほうがいいと思うんだよ。さっき、小雪ちゃん精神が持たないって言っていたよね。

 でもさ、言わないとしても、ずっと無視されるわけで、私はそれのほうがつらいと感じるだろうから。実際に小雪ちゃんの立場になった事がないから何とも言えないけど⋯⋯。

 これは私の一意見だからさ、最後は自分で決めなきゃ駄目だよ」


 ミナさんはそう言って話を締めくくった。

 最後は私がか⋯⋯。

 考えたって分からない。そもそも、私が何をしたいのか、何を望んでいるのか、それがはっきりしないことには何とも言えないだろう。

 まず私は刹那が忘れているほうがいいと思っていた。でも、あいつに出会ってから思い出していたほうがいいんじゃないかと感じ始めた。つまり、初めの頃は忘れているべきだと考えていたということだ。

 なぜだろうか?私の保身が私の目的だとしたら、そのタイミングで思い始めるのは違和感がある。

 結局、私は答えを出すことができないまま、ミナさんの家を後にすることになるのだった。

 そう、分からなかった。


難しい問題かもしれないですね⋯⋯。

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