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第47話 刹那 過去7

更新が遅くなってしまい申し訳ありません⋯⋯。

〈side刹那―過去―〉


 その後は特に何事もなく森の中を進むことができ、今目の前には場違いな家が一軒建っていた。森の中にあると聞けば小屋のような建物を想像するだろう。しかしそれは、裕福な人の立てる一軒屋といったような建物だった。小屋として使うにはやや大きすぎるし、組織の拠点というには狭すぎる。実験施設としても強度的な面で考えにくいだろう。

 そうなると考えられるのは組織同士の交流場所、もしくは一つの組織の会議場所などだろうか。

 ひとまず、今考えても分かるものではないか⋯⋯。

 僕はそう考え、その内部に潜入しようと意識を切り替える。

 潜入ルートとして考えられるのは、まず玄関から侵入するルート。これは、真正面から突入するようなもののため、使う可能性は低いだろう。

 次に、窓からの侵入。開いている窓があればいいがそううまくいくとも思えない。仮にも秘密組織なのだ。そんなに警備が緩いとは考えられない。まあ、確認するだけなら大した手間ではないため確認はするが⋯⋯。

 だったらどうするかとなるが⋯⋯単純に能力を使用する。僕が壁を破壊し、小雪が音だけを発生する前に戻す。さらに侵入後に壊れた部分を戻して修復する。『戻す』という表現を疑いたくなるような作戦だが、実際できてしまったのだからしょうがない。

 リスクはほとんどない。強いて言えばセンサーがあることだが、窓から入っても正面から入っても変わらない。結果、この案を採用することにする。

 小雪に作戦を伝えて、僕らはその家に近づく。材質はコンクリートのようで、本当に普通の家と遜色ない。なんでこんな不自然な家にしたのかと考えてしまう。

 僕は能力でそこらにあった石を家の壁に投げつける。それに対して能力を発動させ、壁を破壊するまでの速度にまで加速させる。小雪も能力を発動させて音を消している。本当になんで音を消せるんだろうね。

 壁が音もなく崩れ落ちる精神がおかしくなりそうな光景を見ながらも、僕らはその家の中へと入っていく。


「じゃあ、壁を戻してくれ」


「ん」


 壁を戻す理由としては僕らの侵入をできる限り悟らせないためだ。崩れた壁なんてものが残っていたら明らかに不自然だろう。後は、ここを発端に家が崩れないようにするためでもある。そんなにもろい欠陥工事はしていないだろうが念のためだ。

 壁が逆再生するように直っていく様子を見て、やはり慣れないなと思っている間に修復は完了する。


「じゃあ、行くぞ」


 小雪にそう言って、足音を消しつつ家の中を進んでいく。小雪の能力で消してもらってもいいが、周囲の警戒をすることのほうがこのような任務には重要だろうと考えたためだ。できる限り僕はいないものと考えるようにと小雪には言ってある。僕が手を出すのは、先ほどの壁破壊など、小雪一人では不可能なものだけだ。もちろん、最優先は任務の完遂なので小雪に任せきって失敗というのは避けなければならないので、侵入経路などは僕が考えたが⋯⋯。

 というわけで、ここからは小雪に先導を任せる。若干不安そうな表情を浮かべた後に、僕の前に出ていく。いきなり先導するのだから仕方ないとは思うが、のんびりと教えている余裕はない。それに、誰だって初めてなのだ。座学としての知識は叩き込んであるので、後は経験あるのみだ。


 それから、この家の中を回って行ったが、特に情報は得られていなかった。得られた情報としては、キッチンが単独であったり、トイレも複数あり広かったりしたことからここは普通の家とは考えにくいということだった。

 後、小雪の先導のレベルは無口な点を除けば満点に近い。僕のようにソロに向いているだろう。うちはツーマンセルが普通なのでソロになれる可能性は低いが⋯⋯。無口なところにとやかく言うつもりはない。あんな組織にとらわれていたのだから無理もないだろう。

 そして、僕らは資料室のような部屋にやってきたのだが⋯⋯。

 そこには男が一人いた。


「ん?ここに侵入している奴がいるんだな⋯⋯」


 そう呟きつつ、こちらへと目を向ける男。


「で、目的はなんだ?と、聞くところなんだろうが、静かに入ってきている時点で調査なんだろうな⋯⋯。はぁ、めんどくせぇ。なんで俺が担当の時に来るかねぇ」


 そう呟きつつ、手に持っていたファイルを本棚の中に戻している。小雪は相手の隙を伺っている。


「おぉ、おぉ、怖いねぇ。そこまで警戒しなくてもいいんじゃないかな?お嬢さん。お兄さんのほうは少し警戒心がなさすぎるかなっ」


 そう言って、僕のほうへと銃を取り出して向ける。小雪は、辺りの本棚を指差して、


「⋯⋯そこに隠れてて」


と言った。まぁ、僕が力のない一般人だったら正しい判断だ。人質に取られるだけだからな。一応、僕は手出ししないということなので、力のない一般人と同じだ。言われた通りに隠れる。


「おっ、お人よしなんだねぇ。まあ、二人とも無力化すればいいか。ボスには殺したと言って、実験材料として持ち帰ってもいいよねぇ?材料が完全に尽きちゃって困ってたんだ」


 そう言いながら、男はにやにやと気色悪い笑みを浮かべる。こんな場所にいる時点で隠れる必要のない一般人ではないのだが、それが見抜けない時点で相手の程度は知れている。そして、こいつは何人かの人間を殺しているというような発言もあった。生き残りも、材料が尽きていると言っていたためいないだろう。ついでに言うと、こいつを持ち帰る準備もしていないので殺すに限る。

 さて?小雪に殺人はできるか、だな。


 僕はそう考えていたが、案外あっさりと男の心臓にナイフを突き立てた。人を刺す感覚に若干顔をしかめていたが、殺すことには抵抗がないようだ。辺りに血は飛び散っていないし、仮に飛び散ったにしても小雪なら能力で戻せるだろう。僕にも血の時間を加速させて消すこともできる。消えるまでの加速は体力をかなり使うが、そこまで大した消費ではない。

 その男を外に出て、燃やしたのちに土に埋める。こんな下っ端なら消えたとしても軽く裏切られた程度の認識しかしないだろう。あの資料室も大きな情報はなかったからな。後は、一番大きな部屋で、おそらく会議室でもあるんじゃないかと思う。

 小雪に土の表面を掘る前にまで戻してもらった後、再度僕らはその家へと戻るのだった。


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