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第42話 刹那 過去2

〈side刹那―過去―〉


 今まで、こんな組織への侵入は複数回あり、そこにもいくつかこのような計画書があったが、いざ、自分に関わるものとなると様々な感情が沸いてきた。怒りはもちろん、悲しみのような感情もあり、何も感じないような感じもする。

 とりあえず、今どう思っているのかとかはどうでもいいか⋯⋯。内容から何があったか考えたほうが有意義だろう。

 割とこんなことを考えられる余裕があるのはかなり不思議だ。なぜかなんて言われてもわからないが。

 で、だ。僕の両親が死んだのはこの組織の仕業だと考えられる。違う『皇家』である可能性もあるが⋯⋯。でも、『皇』という苗字は珍しいので可能性は薄いだろう。目的については一切かかれていない。思い当たる節は全くない。そして、なぜ僕が殺されなかったのかは不明だ。外部委託とあるため、安全を取ろうとほかに任せた結果、情報の共有がうまくいかず僕だけ取り残されたのかもしれない。全く情報がないため分からないが⋯⋯。

 とりあえず、この組織を潰すことはもう確定だ。許すことはできない。とはいえ、この結論に至ったのもこのビルから戻って、寝る前にだが。夜の就寝前っていうのは心の整理にはとてもいい。今までの経験談だが⋯⋯。

 そして翌日、僕はまた組織へと向かっていた。

 一応、この組織について説明しておこうか。

 能力者が現れ始めた結果、能力者による犯罪が増加した。それを止められなかった警察、そして政府の権力が低下。政府はもちろん対策を講じようとしてはいたが全く成果を上げられず、衰退。ぎりぎり、硬貨の信頼くらいは残っているが、ほぼ、形だけの組織になった。そして、それに危機感を覚えた能力者たちが警察に代わる組織を作ろうとして、作られたのがこの組織だ。そして、この組織は政府直属の組織となった。政府の権力が全くなくなるのはいけないため、こうなってよかったといえるだろう。

 その後、この組織の権力は拡大。結果、様々な場所に拠点を持つ組織となった。

 で、今僕はその組織に所属し、その一拠点に向かっている。

 ボスのいる部屋の扉をノックし、


「どうぞ」


と、声が返されたので、そのまま入室する。僕は、この組織の依頼全般に才能があったらしく、僕は重要な依頼だって任されるようになった。今回の依頼は重要な依頼に分類されている。この組織は、何でも屋のようにい思われているのか、本当に何でも任せている。犬の散歩から庭の草取り、挙句、家の家事なんてものもある。本当に、民衆は何を考えるのだろう。


「ふむ。今回任せた件はきな臭いとは思っていたが⋯⋯お前にも関係ある可能性もあるようだな⋯⋯」


 僕の提出した報告書に目を通しつつ、そう呟く。


「ここで黙っていてもいいんだが、それでは、お前の働きに支障が出るかもしれない。何よりも、納得しないだろ」


 この支部のボスはこういうことを隠そうとはしない。


「ああ」


 だからと言って、僕は動揺していない。


「お前、変わったか?まあ、そこは置いておこう。一応の確認だが、お前にも知る権利がある。どうする?聞くか?」


 僕はそれに首肯で答え、その様子を見たボスは話し出した。


「とは言っても、情報はほとんどないんだがな。目的は不明。構成人数も不明。ときたもんだ。厄介なことこの上ない。分かっているのは、氷山の一角に過ぎないかもしれない。そこを頭に入れた上で聞いてくれ。この組織がかかわっていると思われているのは重要人物の暗殺が主に挙げられる。他にも、事件の端々に表れていたりするのだが、大きな特徴はそこではない。理由は不明だが、遺跡などに不法に侵入するというケースが多いんだ。この様子から、能力の始まりについて調べているのではないかと考える人もいるらしい。大きな声では言えないんだが、不自然なくらいにここには情報が入ってこないんだ。つまり、俺たちの組織も裏でかかわっている可能性が否定できない。そんなことをして何になるのかはわからないがな」


 そこまで言って、ボスは話を区切る。


「分かっているのはこんなもんだ。簡潔に言ったが、このほうが分かりやすいだろ?まあ、お前もこの組織を追うつもりなら警戒は怠るなよ。話は以上だ。帰ってもいい」


 そう言われて、僕は身を翻して、その場を後にした。


 いざ、復讐という目的を立てると、訓練にも身が入るもので、僕はめきめきと力をつけていった。この組織ではトップクラスの実力だ。実際、トップなのかもしれない。だが、組織一つを相手取るとなると、まだまだ実力不足だ。

 もちろん、その間も依頼がないわけではなく、いくつか任された仕事もあった。僕はそれらのすべてを実践訓練だと思って取り組んだ。人間、絶対に達成したい目標があると、何でもできるのだと実感した。

 そして、僕はまた新たな依頼を任されるのだった。




〈sideボス〉


 刹那が去って行った後を見ながら、俺は一人ため息をついた。


「あれは完全に復讐者の目だな⋯⋯」


 こういうところのボスをしているだけあって、こんな人間は何度も見てきた。確かに、その時は目標があって、着実に努力を重ねていける。もちろん復讐が悪だと思っているわけではないが、あれはダメだ。

 そして、どうしたものかと考えた結果、今回の依頼だ。とある組織の壊滅が依頼内容だが、俺の目的はそこにはない。あいつのそばに誰かをつかせること。それが目的だ。あの組織には何人かの能力者を捕えているという。その一人をツーマンセル制にして刹那につけようというのが狙いだ。実際、いい人材がいるのかはわからないし、あいつが心を開くとは限らない。さらに、刹那の復讐対象の組織ともかかわりがある。そこに気づかないといいが。結局、かけな部分が大きい。

 でも、あのまま放置しておくと、孤独になる。それはまずい。復讐者の最後は孤立、そして無気力だ。だから、その時に支えてあげられる人を置いておくしかないのだ。


ノベルアップにも投稿し始めました。

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