第41話 刹那 過去
〈sideミナ〉
私は、小雪ちゃんを呼び出して、話を聞いていた。聞いてしまった。
いや、こんな重い話が出てくるとは思っていなかったんだよ?
小雪ちゃんが刹那のことが好きだって気づいたから、何かそっち関係で悩んでるって思って聞いてみたんだよ。だからって、こんな回答に困るようなことを話されるとは⋯⋯。無理やり聞き出した私も悪かったとは思うけど⋯⋯。
とりあえず、現状をまとめてみようか。
まず、小雪ちゃんと刹那は同郷、同世界?まあ、今までの様子から割とわかりやすかったかな。
で、刹那の両親は亡くなっていると⋯⋯。
その両親を殺した相手に復讐するため、能力を求めてこの世界にやってきて、記憶を失っているってことね。
で、なんで小雪ちゃんは秘密にしたいのかっていうと「楽しそうだったから」と。
おそらく、昔の刹那より今の刹那のほうがってことだろう。それが刹那のためになるかっていうと微妙なところだけど、失敗したら取り返しのつかないことになるわね。
はぁ⋯⋯。こんなの刹那次第で、私にわかるわけないじゃない。まあ、小雪ちゃんが私に相談したわけじゃないっていうのはわかるんだけどね⋯⋯。こんなこと聞いたら、何もしないわけにもいかない。
何より、これを小雪ちゃん一人で抱えるっていうのはさすがに、荷が重いでしょ⋯⋯。とはいえ、協力するなんて言ったところで、素直に受けてくれるとは考えにくい。
小雪ちゃんに目を向けると、私が告げ口することを恐れているのか、目を伏せている。これ⋯⋯どうしたらいい?
「えっと、とりあえず刹那には言うつもりないから安心して⋯⋯」
ちょっと無理やりに言葉に出す。
「⋯⋯ん」
答えてはくれたものの、まだ目を伏せたままで、信頼されてないのかなって考えてしまう。そんな様子を見てか
「⋯⋯ずっと考えてた。これが正しいのかって⋯⋯。でも、今のほうが幸せそうで⋯⋯。間違ってるならって考えると⋯⋯」
と、小雪ちゃんが言った。信頼されてないわけじゃなくて安心した。って、そうじゃなくて、小雪ちゃんの行動が正しいのか⋯⋯か。そんなの分かんないわよ。
でも、言えるのは、この行動は小雪ちゃん自身が傷つくってことね。これって、自分が好きな人に忘れられるってことでしょ。それも自分で忘れさせるも同然。そんな状態じゃ、精神が追い込まれて当然よ。何とか協力してあげないと⋯⋯。
「間違ってるかは⋯⋯正直わかんないけどさ、小雪ちゃんのほうが刹那とは付き合い長いんだし、合ってるんじゃないかな?無責任なこと言って悪いけど⋯⋯」
「⋯⋯ん。参考にする⋯⋯」
これはしない奴だよね?まあ、仕方ないんだけどさぁ。
現状だと、こっそりとサポートすることしかできないのかな?ちょっと可愛そうな気はするけど。心をゆっくりと開いてもらうしかないか。そう結論付けた私は、小雪ちゃんに声をかけて、小屋へと戻ることにするのだった。
〈side刹那―過去―〉
あれから、僕は能力者として、警察のような組織に所属することになった。能力者はこのような組織に所属するという時代になっていた。昔じゃ、職業選択の自由とかって、ネットとかが騒いでいただろうが、組織ができる前の、能力者による惨状を知っているためか、そんな声は聴かない。まあ、少数は騒いでいるかもしれないが、現在は仕方ないことだと黙認されている。
もちろん訓練もあるが、しんどい。能力の使用は多少疲れるくらいで、そこまでしんどくはないが、単純な運動となるともともと運動するような人間ではなかったためすぐにばててしまう。
「さて、次の任務についてだが⋯⋯」
今、僕は次の任務について話をされていた。この任務が僕の今後を左右するとは思ってもいなかった。
そして、僕は任務場所であるビルに来ていた。任務内容としては、情報収集だ。警察との違いはここだろう。完全に不法侵入だし、なんだったら目撃者も気絶させるくらいまでなら許される。これは、少しの時間で簡単に犯罪可能なので手遅れになる可能性が高いためである。
で、このビルには何があるのかっていうと、とある組織の拠点の一つなんじゃないかって考えられたためだ。その組織というのが犯罪組織ではあるが、僕には何の組織かわかってない。僕のような一スパイに渡せるような情報ではないというこちら側の組織の判断だ。僕が一般や他の組織に情報を渡したときのための措置だろう。
僕はそのビルの入り口のドアの前に立つ。もちろんカギはかかっているが、ドアノブのついたタイプのドアだ。僕はそのドアノブを握って、軽く能力を発動させつつ回転させる。
がりっ、っと小さな音が鳴って、扉は開く。これなら後日、見られても鍵の故障と考えられるだろう。今の音は、音の周波を加速させて、人間には聞こえないくらいの高周波に変換している。この能力は割と無茶苦茶できる。
僕は、そっと扉を開けて、足音を立てないようにゆっくりと歩く。そっと、扉を閉める。
時折能力を使用しながら、部屋をまわっていく。人の気配はないが念のためだ。
そして、僕は資料室に入った。セキュリティーについてもなんとかかいくぐって、訓練すれば割とできるもんだなって思った。
資料室に入った僕は、保管された書類に目を通していく。写真にも収めつつ、資料をめくっていくと、
『襲撃予定』
と書かれた紙があった。そこには、いくつかの家名と、殺害方法についての記述があった。その中に、
『皇家 外部委託 焼殺』
という記述を発見した。
少し、過去話が続きます⋯⋯。