第4話 魔物襲来
「えーと、それの説明は長くなるんだけど、ここはもともと中級冒険者の狩場だったんだけど、謎の魔物の姿を見たっていう話があって封鎖されてるんだよね。話を聞く限りだと、この辺りにはいないはずの魔物の姿と酷似していて、その魔物も高ランク冒険者2,3人がかりでようやくまともに相手できるくらい強いんだよ。ほんとに勘弁してほしいくらいに」
そんなに強い魔物がいたんだ。今遭遇したのがそいつじゃなくてよかった。絶対殺されていただろうし。
「で、私はその調査に来ているんだけど、そんな中で、近くの村や町の住人じゃなくて、その森に倒れてるって少し悪いけど怪しさ満点でしょ。だから迂闊に町へ連れていけないんだよ」
要は、召喚みたいなことをされたんじゃないかって考えているわけだ。僕にそんな能力はないけど、まあ安全のためにってことか。
「ギルドの命令で名目上は監視ってしてるわけ。まあ、拘束して報告に来いってときは、そのまま拘束もせずに報告に行ってるんだけど。ギルドが何もしていない一般人を拘束っていうのはどうかと思うけどね~。まあ、そんな感じの理由で町に送れないってわけ。調査もあとちょっとで終わるし、もう少し待ってほしいかな。そしたら多分、刹那と関係はないってことになると思うから」
「僕が本当に犯人だったらどうするんですか」
そんなことしてるのにギルドから重要な依頼がもらえていいのか。
「そもそも犯人なら話をしている途中にでも襲い掛かってくるだろうから、犯人じゃないでしょ。寝てる時も逃げ出したりしないし」
能力があれなのに襲い掛かれるわけがないだろ。反撃されて串刺しになる未来しか見えない。寝ているときも警戒してるんならどうしようもないし。
「ともあれ、初討伐おめでと。戦闘は見てなかったけど、こいつを討伐できるくらいならE、D級くらいはあるだろうし、冒険者として食べていけるよ」
食べていけるかは重要だが、今ここで話すような内容じゃない気がする。
「あっ、そうだ、明日から私の調査に同行してもらっていい?さすがに一人じゃあ、警戒しつつの調査は難しいからね。まあ、魔物を初めて倒した直後だし、無理強いはしないよ」
犯人候補を調査に同行させてもいいんだろうか。そんな疑問が頭をよぎるが、まあ犯人じゃないしいいか。
「邪魔じゃなければ」
魔法の練習にもなるし、魔物を倒せばレベルも上がるかもしれない。
「そう!じゃあよろしくね、刹那」
「よろしく」
「じゃあ、小屋に戻ろうか。日も落ちてきたころだし」
そうして小屋に戻った僕らは明日まで休息をとるのだった。
次の日、僕らは森の中を歩いていた。調査は森全体を行わなくてはならないらしく、現在その四分の一ほどが終わったいるらしい。魔物に遭遇することはあったが、ほとんどはミナが対処していた。僕は必要なかったんじゃないだろうか。
しばらく歩いていくと、開けた場所に出た。その部分には草木が全くと言っていいほど生えておらず、明らかに異質な場所だった。そのような場所があたり一面、円形に広がっているのだから、人為的なものと考えて間違いないだろう。今回の調査の件と関係があるのかはわからないが、関係している可能性は大だろう。そんなことを考えているとミナが声を上げた。
「魔力の残滓が残ってる。ここで何かしらの魔法が使われた可能性が高いね。でもこの魔力の質は・・・」
そう言って、彼女は舌打ちをした。
「それにここまでの空間に影響を及ぼす魔法または能力は探知されずに使えるものなの?そうだとしたら、よほどの実力者。認識できないような能力または魔法を使える協力者がいるとも考えられるなぁ。認識阻害の魔法や能力は時間がたちすぎていて、残滓は残っていないよね。それじゃあ、調査しても何も出ない、か。ほんとに厄介なことになったなぁ」
などと、彼女は思考をしていた。
そのせいだろう。背後から魔物が近づいてきていることに気づかなかったのは。
〈sideミナ〉
「後ろ!」
刹那の声が聞こえた。
「しまっ!」
しかし、気づいた時にはもう遅かった。私はその攻撃をもろに受け、吹き飛ばされる。
今までの魔物ならば、私がそんな簡単に吹き飛ばされることはなかっただろう。しかし、その魔物は、あの獣とは比べ物にならないほどの強さ。
調査対象の魔物だ。A級のロックバード。見た目は恐竜のプテラノドンのような形をしていて、全身が黄色、黄土色をしている。何よりの特徴は、岩のようにごつごつとしている羽だろう。
私は、吹き飛ばされる衝撃をいなし、多少土で汚れているもののけがはなかった。そして、刹那のもとへと走っていく。
「さすがに倒すのは無理だから逃げるしかないかな」
そう言って私は、自分のバッグの中に手を入れる。しかし、私が取り出したのは、石のかけらだった。
「転移石が・・・」
おそらく先ほどの攻撃で砕けてしまったのだろう。
「こうなったら、戦うしかないね。正直勝てるとは思えないし、増援も期待できない」
本来、そんなことを言うのはよくない。彼に不安を与えてしまうかもしれないからだ。しかし、現状、彼に少しでも援護してもらわないと厳しい。そこで安心させるようなことを言うと、油断が生まれてしまうかもしれない。だから、緊張感を持ってもらうためにああ言うべきだと思った。
「さあ、いくよ」
そう言って私は周りにナイフを展開した。