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第38話 図書館にて

 エントランスの道の一つを通って、調査を続ける。


「とりあえず、本か何かがある場所を探すか?」


「現状じゃ、それくらいしかないわね」


「ん。わかった」


 そうして、小雪が先導して歩き出す。


 そして、図書館のような蔵書数のある部屋にたどり着いた。


「え⋯⋯っと、ここから探すの?」


「⋯⋯そうなる」


 小雪は少し申し訳なさそうに答える。


「まあとりあえず、あの机の上にある紙や本を調べようぜ」


「そこに情報があることを願う限りね」


 ミナはため息をついて、その机へと向かう。


「ん」


 小雪もそれに続く。僕も机に向かおうとして、


「げっ」


 ミナがそんな声をあげた。


「これはちょっと⋯⋯」


 そう言って、一枚の紙を手に取る。小雪がその紙に目を向ける。


「⋯⋯これは銃?」


 僕も二人のもとへたどり着いて、その紙に目を向けると、そこには銃の設計図があった。


「銃って、あの組織の持ってた武器ね⋯⋯」


「あぁ、そうだな」


 確かにあの組織の人間の一部は銃を使っていたな。あの名前も知らない森にいた白衣の男とか、盗賊もどきとか。


「あれがあるだけで、この世界の武器の概念が変わっちゃうよ⋯⋯」


「一般人も戦える」


 この世界の戦争は、訓練した兵や一騎当千の将軍などが重要となっている。それが、何の力もなかった一般人も立派な戦力になる。そうなると、戦争は大きく変わるうえ、混乱もするだろう。

 それはそれとして、


「流石にこれは、完璧すぎないか?」


 明らかに、現代的な銃の機構だ。技術が飛躍しすぎている。

 ⋯⋯そう考えると、この銃の技術は、僕と同じ転移者によってもたらされた、もしくは銃だけこの世界に飛来した、と考えるのが妥当か。そうなると、僕以外の転移者がいるということが問題だな。敵に回っていなければいいが⋯⋯。

 そこまで考えて、一つ思い浮かんだことがあった。あの森であった男が転移者ではないだろうか。黒髪黒目の男⋯⋯。日本人の特徴だよな。僕が覚えていないだけで、日本であいつに会ったりしたのかもしれない。そうなら、あいつが僕のことを知っていたように言っていたことにも説明がつく。とはいっても、僕のことを相手が覚えていたことは不自然だが。


「どうかしたの?」


 僕が思案にふけっていると、ミナが声をかける。


「少し考え事をな⋯⋯」


 僕がそう返すと、


「⋯⋯そう。何かあった?」


小雪が割り込んでくる。


「あの村にいた男居ただろ。あいつが僕と同じ世界から来たんじゃないかって思ってな⋯⋯」


「それだけ?」


「それだけ?」


 ほかに何か考えられそうなことはあっただろうか?


「⋯⋯いや、何でもない」


 小雪はそう答えて口をつぐむ。


「ねぇ、小雪ちゃん大丈夫?」


 様子がおかしいことに気づいたのかミナがそう声をかけるが、


「ん。大丈夫⋯⋯」


 そう言って、小雪はまた口をつぐむ。ミナも、だったらいいけどとつぶやいて、質問をやめる。これ以上聞いても答えてくれないと考えたのだろう。


「⋯⋯で、どうしてそう考えたわけ?理由はあるでしょ?」


 少し間をおいて、ミナは会話を戻す。


「まず、その設計図だな」


「これ設計図だったの?」


「そこからか?」


 これ、設計図以外に何に見える?絵くらいしか思い浮かぶものがない。マジで何と考えてたんだ?

 僕は思わず呆れるが、まあ、この時代じゃ技術は秘匿されてるもんかと考え、話を続ける。


「単純に、技術が高すぎる。僕の世界と同レベルの技術がないと実現不可能だ」


「つまり、この世界にあるのがおかしいと」


「あぁ、まあ制作は能力で代用したんだろうが、この設計をするにはこの文明じゃ無理だ」


 現代の物理やらがないとできないくらいには考えられた設計だ。


「ちょっと刹那の世界の文明がどのくらいすごいのか見てみたいくらいだけど⋯⋯。まあ続けて」


「で、この技術をあいつが持ってきたとすると筋が通る。それに、あいつは黒髪黒目だったからな。僕らの国の特徴の一つだ」


「なるほどね。それなら筋は通るけど、異世界人があいつだって根拠はある?」


 根拠か⋯⋯。


「僕が覚えてないだけで、あいつは前の世界で僕を見た可能性がある。それなら、僕を知っているような口ぶりだったのにも説明がつくが⋯⋯」


「根拠としては薄いわね⋯⋯」


 そのまま、僕らは考え込む。


「⋯⋯ねぇ、そろそろ続き、調べない?」


 小雪が意見を出してくる。確かに、調べれば根拠に近いものは見つけられるかもしれないな。


「それもそうだな」


 僕はそう言って、近くの本に手を伸ばす。

 そこには、確かに

 ⋯⋯日本語が記述されていた⋯⋯。


 これは、相手に異世界人がいるのは間違いないか?本だけが飛来した可能性もなくはないが、可能性は薄いだろう。

 よくよく見ると、本に使われている紙も現代に近い。洞窟にあった、コピー用紙のような紙にも説明がつく。

 僕が、怪訝そうな顔をしていることに気づいたのか、ミナが


「何か見つけた?⋯⋯って、全く読めないじゃない」


「いや、これは僕らの世界の言語だ」


「そう⋯⋯。とりあえず、内容を教えてもらえる?」


「あぁ、と言っても、技術書だな。銃の構造について詳しく説明してある」


「それなら、それを参考にして銃を作ったと?」


「いや、参考にはしただろうが、読めないものを参考にして完璧に作れるとは考えずらいだろう」


「つまり、刹那みたいなやつが相手にもいるということね⋯⋯。で、それがあいつかもしれないと⋯⋯」


 それにしても、銃の機構だけを地球から持ってくるとか可能なのか。たまたま持っていたにしては都合がよすぎる。僕が言えたことではないが。

 相手の中に、地球と行き来できる人間がいると考えたほうが妥当か⋯⋯。


「ん。その言語ばかり」


 小雪も、あたりの本に目を向けてぱらぱらとめくりながらそう呟いた。


「ここには、そんな本がいくつもあると⋯⋯。いくつか魔法袋に入れて持っていきましょ」


「確かに、ここに時間をとられすぎるのもよくはないな」


 敵の屋敷で、夜を明かすとかはさすがに避けるべきだろう。

 僕らは、魔法袋に何冊かの本を入れて、図書館らしき部屋を後にした。


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