第34話 変化
「なるほどな。魔族の仲間か⋯⋯。まだ終わっていないとみるべきか関係はないのか⋯⋯」
「確かにね。メインディッシュって言ってたのも気になるし」
僕らは、ギルドに報告に来ていた。
「だとすると、警戒しておくに越したことはないか」
「だね。あいつが何者かも調べておいた方がいいかもしれない」
「同時に調べてみようとは思うが、黒髪、黒目でフードって⋯⋯」
そう言って、ギルドマスターは僕に視線を向けてくる。
「いや、無関係ですよ。見た目は確かに同じですけど」
見た目だけで判断しないでほしい。
「そこまで疑ってないから気にするな」
軽く笑いながら、ギルドマスターは言った。
「現状じゃ全く情報不足だね。はぁ、ようやくあいつを殺したっていうのに⋯⋯」
例の魔族を殺すことができたのに、安らぐこともできないんだもんな。きついだろうな。
「俺ができるのは、注意喚起くらいだ。調査はミナに任せる。この町の最高戦力だからな」
「分かってるって。後、刹那にも協力してもらえない?刹那は私と同等だし、小雪ちゃんに至っては私より強いからさ」
えっ、ちょっと?
「強いとは思っていたが、まさかそこまでとはな。まあ、もとより依頼はするつもりだったがな」
いやいや、聞いてないんですけど?
「じゃあ、三人とも頼んだぞ!」
そう言って、ギルドマスターは奥へと去って行った。
〈side???>
キーンコーンカーンコーンと、チャイムが鳴り響く。僕は、授業を受ける準備を開始する。
周りの人間は、あわてて自分の席へと戻っていく。
「さて、とりあえず、全員いるな~?」
そう言って、先生は僕らを見渡す。そして、
「いるようだな。じゃあ、授業を始めるぞ」
何気ない一日が始まろうとしていた。
気だるい授業を受け続けた。そして、その時は前触れもなく訪れた。
「???は居るか?」
慌てた様子で、見知らぬ先生らしき人が入ってきた。おそらく事務室にいる人だろう。
「おお、少し話があるんだ。ちょっとこっちまで来てもらっていいか?」
さて、僕は何かしただろうか?成績は、全然悪くはないはずだ。むしろ、いいほうだった。じゃあ、何か素行に問題でも?考えてみるが心当たりは全くと言っていいほどない。それに、慌ててくるほどのことでもないはずだ。
そんなことを考えながら、僕は教室の外へと向かっていった。
僕は教室の外へと連れ出され、
「さて、落ち着いて聞いてくれよ⋯⋯」
そうして、衝撃の内容が語られた。
〈side刹那〉
僕らは、これからのことについて相談しようと、ミナの家にやってきていた。
食堂は、内容が内容なので排除。僕らは宿なので論外。結果、消去法でミナの家での会議となった。
「とりあえず、二人とも、あいつは知らないんだね?」
「ああ。全く見当もつかない」
「ん」
「だったら、あの組織について調べることが先決ね」
「そうなると、あの屋敷か洞窟の調査か?」
「まあそうなるんだけど、屋敷はギルドが調べてるだろうし、洞窟もほとんど調べ終わっちゃったし⋯⋯」
「だったら、どこを調べるんだ?」
「そこで、小雪ちゃんはどこか知らない?」
そう言って、小雪に目を向ける。
確かに、『人形』は意識あるまま操る能力だったな。だったら、何か知っていてもおかしくないな。
「ああ、別に話しづらかったらいいよ」
「確か、もう一つ屋敷があった⋯⋯。森の中」
「えぇ?それよく気づかれなかったねぇ」
「えっと、周りから見えないようになってた」
たどたどしく話す小雪。
とはいっても、これ以上の情報はないらしい。おそらく、僕のいた森の中に近づかないと見えない屋敷がある。ってことらしい。
えぇ⋯⋯。そんなのあったの?あの森。
「なんかもう、あの森には何があってもおかしくないわね」
ミナに同意である。
「とりあえず、森に行ってみようか」
「ああ。分かった」
「まあ、今日は遅いから解散!」
〈side???〉
その場所は明るく、ここまで熱気が届くほどに激しく燃えていた。そんな光景を僕は呆然と眺めていた。
あの時、僕に伝えられた内容は、家で火事が起こったとのことだった。だからと言って、早退を認めるのはちょっと謎だが。
そして、その時家に残っていた親は焼死した。僕の家庭は特に問題はなく、平凡な家庭だった。若干、他の家よりも金持ちではあったが。
僕を受け取ってくれるような親戚はいないし、児童養護施設に入れられることとなった。
それらの話を聞いた後、別れてもいいということになった。そして、僕は家まで帰ってきていた。
そして、今の光景というわけだ。
それから、しばらく経った。
親が死んだ影響は大きかった。無気力というわけでもないが、なんだか、感情の起伏の幅が狭くなったような感覚だろう。
周りから見た僕の印象も変わっただろう。いい意味なのか悪い意味なのかは分からなかったが、一見するとクールになったように見えたのだろうか、それとも、周りに恨むような眼を向けたのだろうか。意識していないからか、分からなかった。
あぁ、その時から変わったことと言えば、もう一つあったな。この世界に能力が現れた。それは突然で、きっかけらしきものもなかった。一部の人間が、人間を超えた力を手に入れた。それに酔いしれるものも現れ、結果、犯罪者と呼ばれる人はほとんどが能力者となった。警察もそれに対応することはできず、結果として政府への信用も失われた。まあ、これによって変わったことはほとんどなかったのだけど⋯⋯。能力者が結成した組織によって、犯罪者は処罰され、その組織が警察に成り代わった。そうして、一般人の生活は変わっていない。
そんな感じでこの世界は変化した。ちなみに、僕は『速める』能力を手に入れた。
試しにちょっと遅らせて投稿してみました⋯⋯