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第33話 ミナVS魔族 revenge

 あれから、数日が過ぎた。そして、僕らはミナの村に来ていた。


「ふ~ここにやつが⋯⋯」


「いるって決まったわけじゃないぞ」


 ミナは例の魔族に復讐心を燃やしていた。

 そして、視界に何かが現れた。


「ようやく来やがったか。強くなったのか?」


 本当に例の魔族が現れた。


「あいつに何かやり残したことはあるかって聞かれてなぁ。ここで待ってたんだよ。ここにいつかは来るだろ?」


「えぇ。廃村になろうとも私の故郷だからね」


 ミナは冷静に受け答えできている。今までなら、すぐさま襲い掛かっていただろうな。


「おお!ユキもいるのか!お前も強そうだったなぁ。こいつの次に戦ってやるよ」


「ユキじゃない、小雪」


 だからそこじゃないだろ!ミナが倒すとかいうところじゃないの!?

 次に僕を見て、


「お前は⋯⋯別にいいや」


と言った。それはそれでひどくない!?


「さて、さっさと始めようぜ!殺し合いをなぁ!」


 そう言って、ミナに襲い掛かる。それをミナは、身をひるがえして躱し、横へと回り込んだのちにレイピアを刺突させる。が、魔族の固い皮膚に阻まれほぼノーダメージだ。

 僕らは観戦に徹して、水を差すような真似はしない。


「ほお。まあまあ強くなったんじゃねぇか?まだまだだがなぁ!」


 そう言って、再度突撃してくる、魔族。

 ミナは先ほどと同じように身を翻して躱し、一歩引く。魔族は先ほどの攻撃時にミナがいた場所へと腕を振るっていた。


「同じことはしねぇと。それくらいじゃねぇと相手になんねぇからな!」


 魔族は、さらにヒートアップし、スピードに任せて、拳を振るう。

 それをミナはさばいていくが、圧倒的に手数が違う。だんだんと、傷が増えていく。


「けっ、これで終わんのか」


 つまらなそうに魔族は吐き捨てる。そこでミナは再度距離をとろうと、後ろへと跳ぶが、それに追撃するように魔族は追いかける。結果、距離をとることには失敗。


「そりゃ逃げるわな」


 そんなことをつぶやく魔族。

 だが、十分な時間はあった。ミナはあたりにナイフを展開し、それで、魔族の拳をはじく。


「なるほどねぇ。能力をこういう風に使うたぁ、考え付かなかったなぁ」


 感心したように魔族はつぶやく。そりゃ脳筋のお前じゃ、防御に使うとは思わないわな。


「だが、俺に傷をつけることはできねぇ。さあ、どうする?」


 笑いながら魔族はそう言った。全力でレイピアを突き刺せば刺すことはおそらくできる。だがその隙は無い。どうなるかねぇ。僕が手を出せばダメージは通るだろうが、まあそんなことは望んじゃいないだろうからな。僕らにできるのは見守ることくらいか。

 魔族は今もなお、熾烈な攻めを繰り出し続けている。


「確かに、それを続けられると、結局負けるのは私ね。でもさ、あなた、私しか見てなくない?」


 瞬間、あたりのナイフが消え、魔族の体制が崩れた。


「なっ!」


 魔族の足元には伸びた一本の岩が。

 ミナの能力は『刃』。刃は、剣だけにあるわけじゃない。地面の岩にも、どこにだって、小さな刃はある。それを延長してやれば地上に罠だって仕掛けられるってことだな。

 ミナは、その隙を逃さず、一気にレイピアを引き、突き出す。そして、魔族に深く突き刺さる。


「うっ。見事だなぁ!だが、俺を殺すには、ちと細すぎんじゃねぇか?」


 そう言って、魔族は笑う。それにミナは、


「これで、終わり」


とつぶやいて。能力を発動させる。

 瞬間、花が咲いた、『刃』の。きらめく刃は細く、それでも、光を反射し、美しく見える。そこを滴る血すら芸術の一環のようにも思える。

 そして、一瞬にしてそれは消えた。残ったのは穴の開いた、魔族の体。死体になっただろう。


「お疲れ」


 僕はそう声をかけた。ミナは感傷に浸っているようで、呆然としている。

 ⋯⋯そして、


「案外、何も感じないもんだね。復讐って」


と一言、つぶやいた。

 その言葉に僕も、小雪も無言を返すことしかできない。


「なんだかさ、殺したら、達成感だとか幸福感とかさ、なんだったら虚無感だとかさ、何かがわいてくるものだと思ってたんだよ。でもさ、実際には何も感じなかった。復讐できたって、村のみんなに喜んでもらえるような想像だってしたんだけどさ、今となっちゃ、何にも感じなくて、今まで何だったんだろうって⋯⋯」


 そう言った瞬間、


「何事だ?ん?あいつ死んでるのか。はぁ。死ぬことがやり残したことっていうのか?」


一人の男が現れた。黒髪に黒目で、黒いフード、黒づくめの男だった。


「こんなこと言ってる場合じゃないみたいね」


 ミナがそう言って戦闘態勢に移行しようとした瞬間、


「引っ込んでて」


 小雪が、その男に突撃していった。ナイフを構え、一気に飛び込む。それを男は軽く身をひねって躱す。


「なるほどな。お前たちがいたのか。ふむ。ならばあいつが負けるのも納得だな」


 小雪はそいつに向かって、再度ナイフを振るう。


「しかしまあ、残虐な殺し方をしたもんだ。全身穴だらけじゃないか」


 そう言って、男は軽く笑う。小雪の振るったナイフは自然な流れで躱す。


「では、ここからは反撃、といきたいところだが、メインディッシュとして見逃しておいてやる」


 そう言って、そいつはその場を離れようとし、ふと振り返って、


「そう言えば、お前は攻撃してこないのか?まあどうだっていいが⋯⋯」


そのまま、踵を返し去っていった。


「ねぇ、結局何だったのあいつ?」


「さあ?」


 知らない相手だと思う。小雪は最後まで相手にされていなかった。実力不足ってことだろうか。

 そんなことを考えていると、小雪がとことことやってきて、


「刹那、あいつ分かる?」


と、ミナと同じようなことを聞いてきた。


「さあな?どっかで会ったかな?」


 僕がそう答えると、小雪は少し息をついてから


「ん。分かった」


と答えた。小雪は知っているのだろうか?


「小雪は?」


と聞いてみると、首を横に振った。知らないんだろう。


「とりあえず、ギルドのほうに報告しとこうか。小雪ちゃんでも敵わないんじゃ私たちにはちょっと手に負えないし」


 小雪は戦闘スキルは僕らの中で最もあるからな。三人でかかったとしても、歯が立たないだろう。


「じゃあ、っと」


 ミナはそう言って、荷物を手に取る。


「村を見ていかなくていいのか?」


「いいのよ。別に里帰りってわけじゃないし」


「そうか」


 僕はそう言って、自分の荷物を手に取る。小雪はもう手に取っていた。


「じゃあ、デラクアに戻ろっか」


 そうして、僕らはデラクアへと戻ったのだった。


ミナの技は、相手の体内から刃を作り出して、貫くって技ですね。なんだったら、相手の体の位置に置換するようにも作り出せます。

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