第27話 説得?
久々の更新で申し訳ないです
さて、ユキの目的は何だろうか。
ちょっとナイフを突きつけるのはやりすぎたとは思うが⋯⋯。今思えば、おかしなこともあった。街の襲撃の時、ユキは冒険者たちを気絶させるだけで、殺しはしなかった。あの『人形』の男に操らせるためとも考えられるが、さすがに、あの人数は運べないし、目が覚めたら大変なため、数人に絞るのが正解だろう。それに、能力を隠すことなく見せたこともおかしいし、ギルドマスターを殺したのも不自然だ。
というわけで、話を聞きたいのだが、話してもらえるだろうか⋯⋯。ユキは僕が思考から帰ってきたのを察したのか、話し出した。待ってたの!?
「『人形』の能力で操られてた。わかってたと思うけど」
そこは、ギルドマスターの推測通りと。
「私も罪の意識はある。だから、情報は提供した」
善意で情報は渡したと。
「そのせいで、死刑はなくなった。死にたかった私は奴隷の主に殺されようと思った。だから、それまで抜け出したりはしなかった」
だから、今襲い掛かってきたと⋯⋯。
「全部、話した。殺して」
そう言って、手を広げる。よく見ると震えてる。
「はぁ、殺すわけないだろ。なんで死にたいのかわかんないけど、怖がってるやつを殺せるかよ」
「私は人を傷つけた。生きる場所なんてない」
「いや、どうしてそうなった?」
人を傷つけたからといって、生きる場所がなくなるわけがないだろ。それじゃあ、犯罪者に行き場がないし。
「私が合わせる顔がない」
ユキはそう言いかえた。なるほど、負い目を感じていると。
「じゃあ、お前は人を傷つけて、何もせずに逃げるのか?」
この子には、責任はないとか言っても意味はないだろう。
根はいい子なんだ。だから、その善意の方向を変えればいい。
「逃げてなんか⋯⋯」
そう言って、ユキは黙り込む。
そこに、僕はさらに追い打ちを仕掛ける。
「逃げだろ。傷つけたことが嫌だから、そのことから逃げようとしてる。違うか?」
返事はない。
「お前がつらいから過去のせいにして逃げようとする。結局、自分のためなんだよ」
「ちがっ!」
自分のためという言葉に反論したかったのだろう。
ユキは間違いなく善人だし、違うというのはわかる。恐らく、知らないのだろう。どうするべきなのか。だから、こんな行動に出たのだろう。
「じゃあ、何をするべきか、分かるか?」
それに、またユキは黙り込んでしまう。
「おい、それ以上をこの子に求めんのは酷だろ」
いつから目覚めてたのか、ギルドマスターが口を挟んできた。
それもそうか⋯⋯。
「まあ、少なくとも、死ぬのは違うだろ」
僕はそう締めくくって、口を閉じた。
「何かがしたいつっても、今のお前は刹那の所有物。自由にはできないが」
ギルドマスターが余計なことを言う。きれいに終わったつもりだったのに。
「ま、今は、刹那についていくしかないってことだな」
そんなこと言われたら手放せなくね?
「分かった。ご主人様?」
ユキの奴も、そばにあった、首輪をはめてそう言った。
ふざけてるのか?
分かりにくい相手だ。まあ、少なくとも操つらられていた時よりは話しやすい。
⋯⋯にしても、だ。少なくとも、『雪』の能力じゃあ首輪は外せないだろ。それには、
「能力。私は、『戻す』能力と、『雪』の能力があるらしい」
と答えた。
なるほど、まだついてない状態まで戻したのか。だが、使い勝手のいい能力だが『人形』に使われなかったのか?
「言ってない」
らしいです。知らないものは使えなかったのか。
とはいっても、そんな弱点があったとして、知ってたとして、結果は変わらなかったか。僕が負けたのは人質を取られたからだしな。
まあ、今回の件は解決だよな?
「そういえば、あの『人形』殺したけど、よかった?」
爆弾が放り込まれた。
ギルドマスターも驚いている。少女が組織のトップを殺したんだからなぁ。
なぜか、僕は冷静だった。
「はぁ、だったら少し話を聞かせてもらうぞ」
ギルドマスターは、ため息をついてそう言った。
「刹那、こいつを少し借りるぞ」
そう言って、ユキは連行されていった。
もう、することもないし、帰るか。そう思って、僕も街に戻るのだった。
で、またギルドに呼ばれたわけだが⋯⋯。
「いろいろと話は聞いたが、証拠がないからなぁ。減刑は厳しいだろうな。というわけで、こいつは預かってくれ。変なことはするなよ」
呼ぶ必要あったのだろうか。ユキを返されただけだった。
変なことはしないよ!
「よろしく」
ユキはそう言ってこちらへとやってくる。
「改めて、刹那だ。よろしくな」
改めて、自己紹介をする。なんとなくだけど。
「小雪。よろしく」
え?名前はユキじゃなかったの?
「はぁー」
ギルドマスターは再度頭を抱えている。
「小雪が本当の名前か?」
「ん、重要」
「それじゃあ、奴隷の契約すらいみねぇじゃねぇか」
名前が違うと契約は結ばれてないも同然ってことね。かなりがばがばな契約だな。
「もういいか。大事にしてやれよ」
そう言って、ギルドマスターは投げ出した。
「で、だ」
そして、話を切り替える。
「指名依頼を受けちゃくれないだろうか」
指名依頼か⋯⋯。内容を聞いてから判断しようか。
「前回会った時に分かったとは思うが、ミナの奴が全く動かなくなっている。それを何とかしてほしいんだが、どうだろうか?」
それは、冒険者に頼むことなのだろうか。後、無理やり人を動かすのはなぁ。
「本来依頼にするようなことじゃないんだがな、Aランク冒険者がいなくなるとこの町も大変なんだよ」
できない依頼もあるということだろうか。
「私情だが、あいつが心配だしな⋯⋯」
ギルドマスターは人格者だったね。
「分かった。受ける」
ちょっと、小雪さん!?勝手に決めないでほしいんだが⋯⋯。
こちらをじっと見つめてくる小雪。
「分かったよ。じゃあ、受けさせてもらいます」
小雪が即答しなくてもおそらく受けただろうしな。
「頼んだ」
そうして、ミナを元気づけなければいけなくなったのだった。