第26話 VS小雪
そして、僕らがユキを受け取る時間になった。なんだか、人を受け取るって表現は慣れないな⋯⋯。
「はい。では、こちらが奴隷です」
代金を支払い、ユキを受け取る。
奴隷はまず、首輪をつけられる。すると、主人を傷つけることができなくなり、命令に絶対服従となる。今回の種類の奴隷の場合はだが⋯⋯。そして、主人は僕となる。
そして、ギルドマスターと合流。
「ほんとにありがとな。刹那」
涙ながらにギルドマスターは言った。
「じゃあ、少し移動していいか?」
僕は、そう提案する。彼女には少し聞きたいことがある。
そして、僕らは、人気のない草原まで来た。聞かれたくない話だしな。
「さて、色々と聞きたいことがあるんだが⋯⋯」
「そんなに重要なことか?」
ギルドマスターはそう言っている。彼に来てもらった理由は僕の協力者になってほしかったからだ。こちらにはユキという恩もある。
「まずは、僕の現状からか⋯⋯」
そう言って、とりあえず、今までのことを説明する。僕が異世界人である。というところまで。
「うむ。にわかには信じがたいが⋯⋯事実ならなかなかに大ごとだな」
ギルドマスターには異世界の存在がどれほど影響を及ぼすか考えているようだった。ユキは、こくこくと頷いている。あっさり信じたな。
「土地や資源、もちろん政治の問題もあるし正直表沙汰にはできそうにない。まあひそかに調べておこう」
ギルドマスターは協力してくれるらしい。
「次はお前に聞きたいんだが⋯⋯」
僕はユキのほうに視線を向ける。それにユキは、
「何?」
とだけ答える。
「あの刀についてだ」
それに、ユキは、
「これ?」
そう言って、氷の刀を作り出す。
それに反応したのは僕ではなく、
「はぁ!」
ギルドマスターだった。
「お前、能力者なのかよ。はぁ。首輪も意味なさないじゃねえか。どうして逃げなかった?」
それに、ユキは黙り込んだままだった。確かに、首輪が意味をなさないなら逃げることも可能だったはずだ。
それについては後で聞くとして、僕の質問をぶつける。
「その刀の形状をどこで知った?」
それに答えたのは、なぜかギルドマスターだった。
「東方の国にはそんな形状の武器はあるぞ。まあ、有名ではないが」
ファンタジーあるあるの和風の国だろうか?今更ではあるけど、謎でしかない。
「なるほど、元の世界の武器に似てたからな、気になった」
そうなると、ユキが元の世界と関係なかったってことか⋯⋯。だったら、
「少し戻って、なぜ逃げなかったのか教えてもらえないか?」
その質問に、ユキは答えなかった。
そして、首輪に手を当て、瞬間、首輪が外れた。
「なぁ!」
僕よりもギルドマスターが驚いている。
そして、ユキは先ほどの刀で切りかかってくる。僕は、それを避けて、ナイフを取り出す。ギルドマスターも臨戦態勢だ。
再度、振るってくる刀をいなしつつ接近する。ユキの目的は僕に勝つことだろうか。銃っていうずるしたし仕方ないか。ナイフを振るうがそれも回避される。
僕は、そこに追撃を仕掛ける。が、簡単に払われてしまう。
そこで、能力を発動し加速、再度ナイフで切りつける。しかし、それも見事に対応される。そのまま、距離をとられる。
能力を使ったまま、再度、接近を試みるが、刀を振るわれうまく近づけない。
無理やり近づくも、それにも対処され、また距離をとられる。
まずい。圧倒的に戦闘経験が違う。策もなしに飛び込んでも簡単に対処されるビジョンしか見えない。かといって、何とかできそうな策があるわけじゃない。
僕が思案している間に、ギルドマスターが気絶させられる。
考えててもだめだ。今更だが、協力するという手もあったはず。
僕は、加速した状態で接近して、ナイフを振るう。それにも、対処されるがゴリ押ししてみるか。さらに、能力を発動して、加速させる。冷静に対処されるも、手数で何とか⋯⋯。
〈side小雪〉
私の首をとらえるナイフに身を任す。そのまま、、、
あれ?いつになっても、痛みが来ない。
恐る恐る、目を開ける。そこにはナイフがあったが、私の首に届く前に止められていた。誰かが止めたとかじゃなくて、寸止めだろう。
自分で死ぬ勇気もなかったから、殺されることを狙ったんだけどな。死刑にもならないし。私にだって善意はある。組織の情報を話さないことはできなかった。
「なん⋯⋯で」
私は何とか言葉を絞り出す。死ぬことが目的だったからと言って、恐怖がないわけがなかった。
ペタンと私は座り込む。
自ら、死を待つのは疲弊するものだった。
「はぁ、お前、僕を殺す気ないだろ」
「っ!」
彼を殺すわけにはいかなかったから、手加減はしていたけど、少なくとも弱くはなかったはず⋯⋯。
「能力を使わないのはもちろんだけど、殺気がないからな」
殺気⋯⋯。確かに、意識してなかったな。
「じゃあ、何が目的か話してもらおうか」
彼は、私にそう聞いてきた。
もう、観念しようか⋯⋯。ため息が出る。
そうして、私は話し出したのだった。