第24話 始まり
今回で、???編は完結です。
〈side???〉
さて、その後も1、2年過ぎた。もう、私の気持ちなんて言う必要ないよね。うん。
なんていうのか、そう、恋なんだろうな。今更なんだけどね。
ただの感謝だと言われたらそれまでなんだけど。
少なくとも、私は彼に救われたし、育ててくれたといっても過言じゃない。
「じゃあ、今日も任務行くぞ」
彼はそう言って、歩き出す。私もそれについていく。
未だにちゃんと話せないのが少し悲しい。
「さて、今日の任務はっと」
彼はそう言って、紙を確認する。してないのかと、突っ込む力は私にはない。
確認した彼は顔をしかめる。そして、私を見て、
「お前は来ないほうがいい」
そう言って、彼は私を置いて歩き出す。
「⋯⋯待って」
私は声を絞り出す。
その声を聞いて彼は立ち止まる。そして、
「お前にはかなりつらいと思うぞ」
そう言って、先ほどの紙を差し出す。私に見せずに同行拒否するのはよくないと思う。口には出さないけど。
そして、私はその紙を見る。そこには、胸糞っていうんだろう。そんな内容があった。
とはいえ、彼が私の同行を拒否した理由も分かる。
内容は、私をこき使っていた組織みたいなところに侵入して、組織を壊せとのこと。そりゃあ、私にはつらいと思うだろうね。それにトップは能力者みたいだ。能力は不明みたいだけど。
だからといって、行かないような人間じゃない。
「行く」
彼にそう言って私はついていく。
「いいのか?」
って、彼が聞いてくるが、私はそれに頷く。
愛想がないと評判の彼だが、だいぶ柔らかくなってくれたと思う。根はいい人だからね。きっと。
「分かった」
彼は、根負けしたように私の同行を認めた。私のような目にあってる人がいるなら私だって行きますよ。もちろん。
そして、私たちは例の組織にたどり着いた。彼は、
「今回は相手も能力者だ。気をつけろよ」
と、私に声をかける。私は頷いて、警戒心を一段階上げる。
そして、私たちはその組織へと乗り込む。私にもついていけるくらいのスピードにしてくれているから助かる。
「じゃあ、まずは人質達を解放するぞ」
そう言って、能力者の少年少女を監禁している部屋に向かう。
警備が甘いというわけでもなく、見回りは彼が気絶させて、私が記憶を消す。施錠は彼が壊してる。
やっぱり、私には何もできないな⋯⋯と痛感しつつ進んでいく。
そして、監禁された人たちを解放して、組織の人員を叩く。
これからは、記憶を消す必要もないので私は完全に仕事がなくなった。
彼が、襲ってくる相手を倒していく。殺しはしない。情報は大切って考えてるんだと思う。
「お前もやるか?」
私の心中を察してか、彼はそう声をかけてくれた。
きっと、間違った判断なんだろうけど⋯⋯。問題はないだろう。
私も、襲ってくる人たちを気絶させていく。全員が全員能力者ではないので楽々倒せる。
そして、私たちは、その組織のトップの部屋にたどり着いた。
「よくここまで来たな」
そう言って、組織のトップらしき人は笑った。
「じゃあ、捕縛させてもらうぞ」
彼はそう言って、襲い掛かる。
「なるほど、君たちも能力者か⋯⋯」
初め、そんな風に言っていた相手だったが、私も彼も攻撃の速度を速めていくと、だんだん余裕がなくなってきた。
そして、
「ここは引くしかなさそうだな⋯⋯」
そう言って、後ろの扉に声をかける。すると、あいつの仲間が飛び出してくる。そして、そいつらの相手をしている隙にあいつは逃げていった。
その後、私たちは増援を蹴散らして、あいつを探す。
そして、見つけた。
奴は何の変哲もない部屋にいた。この建物から逃げていればよかったのに。
「さて、次は君たちを殺すぞ」
そして、奴は後ろの扉へと飛び込む。私はそれを追いかけようとして⋯⋯。
彼に止められた。
「あの扉は地図にない。相手の能力も不明な以上、無策に飛び込んだらだめだ」
そして、私たちは自分たちの組織に戻ってきた。書類を集めて、気絶した敵を引き渡して、といろいろあったけど。
「指示があるまでは勝手にその扉の先に行くなよ」
上司のその台詞で、報告が終わった。
そして⋯⋯
そして、その夜、私は例の組織の場所へやってきていた。もちろん、扉の前。
しばらくして、彼が姿を現した。
「はぁ!?なんでお前がいるんだよ!」
「来ること、わかってた」
私だって1年くらい関わってるんだ。彼が、あの情報を見て来ないわけがないと思っていた。
「で、止めるのか?」
そう言って、彼はナイフを持つ。それに私は、
「私も、行く」
と答えた。それを聞いた彼は、心底わからないという顔で、
「はぁ?お前はあいつから言われて止めに来たんじゃないのかよ」
と返した。あいつは、上司のことだろう。あの人も事情を知ってるし。
「違う。私は私の意志でここにいる」
「はぁ、わかった。が、なんでお前が来る」
と私に問うてくる。一緒に居たいだけなんて言えるわけもなく、
「⋯⋯」
それには、私も黙るしかなかった。後から、嘘でもつけばよかったなんて思った。その様子を見て、話してくれないと分かったのか、
「だったら、どうしても来るんだな?」
と聞いてきた。
私はそれに頷く。
「あぁ、もうわかった。好きにしろ」
そう言って、彼は、前にいた私を追い抜いて、扉の向こうへと行った。私も急いでそれに続く。
ん?私の名前?私は、『小雪』だよ。
なぜ、名前をここまで引っ張った?