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第22話 とある少女

???の過去になります

〈side???〉

 私は、生まれつき髪が白かった。アルビノとかじゃなくて、原因もわからない。目は赤くないし。だからなのか、母も周りも私を忌み子として差別してきた。殴る、蹴るの暴行される日々が続いた。彼らは、別に私が忌み子なんて思ってはいなかったと思う。そういう体でのストレス発散だったんだろう。何もしてこない人も面倒ごとにかかわりたくないのか私のことは無視していた。

 だからといって、彼らを憎むことはなかった。何の感情もなくなっていた。

 それが当然。そう、受け入れていた。

 幸い、性的な暴行は受けていなかった。多少の忌避感があったのだろう。



 そんな日々が数年続いた。私は15歳になったはずだ。体は、栄養不足で大きくなかったけど。

 そして、それが宿ったのはそのころだった。

 能力。そう呼ばれるようになるものだ。

 私は、それを手に入れた。能力の内容としては『戻す』だった。


 そして、私は引き取られることになった。能力者は貴重らしい。

 だからといって私の生活が変わることはなかった。殴る、蹴るの暴行は続いた。もちろん、能力での労働も追加された。労働の時間で暴力の量は若干減っていたけど⋯⋯。そのころにはもう、司法は死んでいた。

 そして、数か月、下手をすれば数年、私はそこで暮らしていた。ある日、そこに侵入者が現れた。


「さて、ここが目的の組織か⋯⋯。反吐が出るな」


 周りを見渡して、傷だらけの能力者たちを見てだろう。唾を吐いた。私のけがは戻してなくなっていた。そのため、他よりもこき使われていた。


「侵入者だ!捕獲しろ!」


 そう声を上げ、彼に襲い掛かった。が、そこからは完全な無双状態だった。一方的に相手を沈めていく。一撃で。

 そして、彼はここのトップも潰した。もう、ここは壊滅だろう。



 そして、私たちは後からやってきた人たちに回収された。みんな何の抵抗もしていなかった。

 久々に外の空気を吸ったような気がする。

 助かったにもかかわらず、結局私は何の感情も浮かんでこなかった。変わっていなかった。私の心は、死んだままだった。

 それからの日々は、その組織の一員として生きていくことになった。私たち能力者は訓練をすることになった。一人一人に担当者がついて、教えるらしい。

 私の担当者は、私たちのいた場所へと乗り込んできた少年だった。あの時はよく見ていなかったが、私と歳は変わらないと思う。まあ、私のほうが小柄だけど。


「よろしく」


 初め、そう言って彼は私に手を差し出してきた。笑いながら。似合わない。


「ん」


 私は、そう答えるだけだった。手を取ることができなかった。

 そんな、私に彼は特に気にした様子もなく、


「それじゃあ、訓練を始めるよ」


やさしい声音でそう言った。


「まず、君は『戻す』能力であってたよね?」


 私は頷いた。


「じゃあ、どんなことができる?」


 それに私は答えようとしたけど、声は出なかった。だから、壊れたものを実際に戻して直して見せた。壊れたものは、あたりを見渡して、適当に見つけたものを直した。


「なるほど、じゃあ、傷も治せる?」


 その問いに私は頷く。その様子を見た彼は次に、


「位置を戻せたりはする?」


 と言う。そんなことしたことない。試しに、先ほど直したものを、元の場所に移動させるように能力を発動させる。結果、それは元の場所に戻った。それを見た彼は


「分かった。戦闘はできそうだな」


とつぶやいた。


「さっさと始めるか」


 そう言って、彼はナイフを手に取り、私に切りかかってくる。寸前のところで躱す。


「その調子で躱し続けろ」


 言われた通りに躱し続ける。

 もちろん、すべて躱しきることなんてできないので、いくつか切り傷ができる。能力で治す。


「さて、さらにスピード上げるぞ」


 そう言って、彼はさらにスピードを上げる。回避ができないくらいの猛攻。為すすべなく私は首元にナイフを突きつけられる。


「はぁ。能力で移動すりゃいいだろうが」


 呆れたように彼はため息をつきそう言った。言われた通りにする。能力を発動させ、自身を移動させる。

 けど、移動した途端に、こちらに振り向きナイフを振るってくる。何とか回避し、再度移動。

 でも、彼は私の位置を把握し、ナイフを振るってくる。

 能力のおかげで回避しやすくはなったけど、この人が強すぎる。

 どうしたらいい?


 その後も、この訓練は続いた。そして、2時間くらいが過ぎたとき、


「じゃあ、休憩しよう。まだ訓練は続けるぞ」


と彼は言った。

 休憩後ももちろん訓練は続くのだった。



 数か月そんな日々を過ごした。そして、


「さて、今日から武器を持ってみようか」


 そう言って、私にナイフを渡す。もちろん、ナイフなんて持ったこともないから、使い方もいまいちわからない。

 でも、彼は使い方を教えてくれないだろう。彼は、そんなことをしている時間はないというように焦っているように私は感じていた。


「さてと、始めるか」


 そう言って、彼は案の定ナイフを振るう。私は、それを躱し、能力で後ろに回る。振るう。

 それを彼はナイフではじく。振るったナイフでそのまま、後ろのナイフをはじくって、やっぱり人間業じゃないと思う。

 その後も、ナイフでの攻防は続いた。結局、経験の差で私が負けた。

 強くなりたい、なんて感情が浮かんできた。これが感情なのかわからないけど。

 でも、強くなって何がしたいんだろう?その答えが分かるほど、私に感性が戻ってきたわけではなかった。


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