第97話 大丈夫かこの展開06
そこそこ準備も進んでいるとのこと。
学院の文化祭についてです。
メイド喫茶。
よく定番で出るけど、出費は結構激しい。
予算内で収められるような企画では本来ない。
もっとも茶葉はアートが用意したので、そこは予算に勘定されず、浮いた金銭が別所に回されたこともあり、僕のクラスについては、「客さえ来ればどうにかこうにか」との様子らしい。
「文化祭か」
スマホでググると国際社会への一石の投じ方が論点になる。
「大丈夫かこの展開?」
思いはすれど波紋は打った。
伝播は早い。
情報化社会の弊害だ。
チンギスハンの時代ならまた別の展開があったんだろうけど。
「兄さん?」
寝間着姿のラピスが僕を見る。
場所は我が家の寝室だ。
「何?」
「いえ。すこし眉をひそめていらっしゃったので」
「色々とね」
「やりすぎでしたか?」
何が、かは論じるまでもない。
「気にしてはいる。けど気に病んではいない」
核兵器も無いなら無いで日本にはあまり関係ない。
元より持ってないし。
相対的に僕らの住む属国が安心安全の度合いを増したのは事実だ。
あえて言うなら米国と中国の思惑と計算と妥協の結果で、本国が板挟みになっていることが気がかりだけど、覇王としてなら他人事だ。
「僕を世界で一番幸せにするんでしょ?」
「はいです!」
本当に……花が咲くように笑うのはルリもラピスも魅力的。
「ですから遠慮無く仰ってくださいね?」
「おきどき」
ヒラヒラと手を振る。
「兄さんっ」
ジャンピングハグ。
それからベッドに雪崩れ込み。
十八禁シーンはありませんので悪しからず。
「ラピスは甘えん坊だね」
「兄さんにだけです」
「知ってるから愛おしいんだよなぁ」
「本当ですか……?」
ルビーの瞳が覗き込む。
慕情の熱が透けて見える。
「嘘偽り無く」
ラピスの頬に手を添えて、僕は真摯に口にする。
「えへへ……えへへ……えへへ……」
にゃーと鳴くラピスさん。
抱きしめて胸板に頬ずり。
余程嬉しい様だ。
ルリの言った通り。
「僕にとってのルリ」が、「ラピスにとっての僕」とのこと。
家族……か。
両親が死んで、塞いでいた失望を吹き払った問答無用。
人はソレを希望と呼ぶ。
未だ真意は覚れないけど、「ラピスが僕を好き」は今では無条件に信じられる。
おかげで世界が混乱していますけど、他国の出血は僕の視界には入らない。
責任も帰結しないだろう。
そもそも誰も殺してないし。
本物にはしてしまったけど。
ノーベル平和賞受賞者も言っていた。
「世界を平和にしたいなら家に帰って間近な人を愛しなさい」
と。
一字一句正確ではないけれども。
言いたいことはよく分かる。
それはラピスにも言える。
僕が死ぬ未来……あるいは過去……を許せず運命をねじ曲げる。
時間的な異物。
この世界の例外。
世界はラピスの分だけ広くなった。
先にも述べたけど、「一石を投じる」の典型。
波紋の伝播。
さてお立ち会い。
どうなるかは……、
「明日考えましょ」
人民の沸騰は各国の管理下だ。
殊更に王国が出しゃばることもない。
そもそもにおいて、国民の支持率を期待されるだけでも政治家の仕事だ。
社会情勢にシステムメギドフレイムが楔をうっても、健全な政治を実行していれば国民に不満は無いわけで。
「クーデターが起きるのはその国に徳が無いからです」
とのこと。
ラピスも似たような感想のようで。
暴力を使えば革命で、紙面で解決すれば選挙となるのか?
結局の話、独裁国家も実状は然程変わらないんだけど。
国民を鏖殺すると政治が出来ないので、結局国民と世論の手綱をどう握るかというだけの話。
これが直接的民主主義ならまだしも違ったろうけども。
でもあれは人口が少ないから出来たのであって、一人一票は間接的な支配構造な気もするね。
実際がどうだかは、僕にもわかんない。
「兄さん!」
「はい」
「そんなことより兄さん!」
「はいはい」
「にゃー!」
パジャマ姿の愛らしいラピスが、僕をハグして胸板に頬をスリスリ。
感嘆の吐息をついて、それはそれは嬉しそうに彼女は笑む。
「兄さんの匂いが大好きです!」
「そんなフェチを持ってるの?」
「兄さん限定で!」
光栄に思うところなのだろうか?
ちょっと不審に思ってしまう。
いやまぁ好きと言われたら、それ以上はないけども。
ルリ限定で。
僕は青天井でルリが大好きなんだけど、そんなルリ……ラピスも青天井で僕のことが大好きなんだろう。
相思相愛。
けれどルリとラピスは同一別個体。
――どっちも愛してる、は大丈夫かな?
「大丈夫です!」
力強くラピスは述べた。
「大好きです!」
ミートゥー。




