第95話 大丈夫かこの展開04
「司馬」
昼食をとって刺繍に戻るとラインでコメントが来た。
四谷と久遠だ。
「ども。お騒がせ」
コメント送信。
「てことはマジ?」
「うわぁ」
二人揃ってドン引きらしい。
ニュースになってるし、覚りはするだろう。
「学院は?」
「司馬さん一色」
ですよねー。
「報道陣が囲んでるし」
「だな。司馬さんパない」
ここだけ切り取ると世界が違うね。
僕がどっちに属する感じかは悩みに悩むけど……心情的には全面を賭してルリとラピスの味方。
けれど常識がコレを邪魔する。
世界覇王として僕はどうすべきか。
今のままではラピスに負んぶに抱っこだ。
「学校まで押し寄せてくるんで校長以下が苦慮してる」
「面倒なら蹴散らすけど?」
主にラピスが。
システムメギドフレイムで。
「いや、それは」
久遠の焦りも分かる。
「最終手段じゃないか?」
そうなるよね。
その破壊性と応用性はちょっと類を見ない。
別段気にすることでもないけど。
ラピスは優しいし、可愛い。
だから信じられる。
エゴ百パーセントで動くルリの相似形は、とても純情な理由で僕を不幸から救ってくれるのだ。
「でも最終手段も手段じゃない」
「シャレになってない」
シャレのつもりもござらんが。
「何とはなればだから」
「それで軍事バランス崩壊させられたのが凄いんですけど」
全く以て同意見。
「で、陛下としては?」
「なるようになる」
世界覇王として考えることはないけど、ラピスの行為と好意も有り難い。
――妹萌え。
「日本が経済封鎖されるとウチとしては大打撃なんすけど」
久遠グループか。
「杞憂」
二文字で終わらす。
日本にとって僕は獅子身中の虫かもしれない。
でも日本食が好きなので、是非とも日本には頑張って欲しい。
チクチク。
テーブルクロスを縫う。
文化祭に向けての準備は着々と。
世界情勢はシャレになっていないけど、それはそれとして目の前の文化祭も、準備はしなければならないだろう。
だってそうでもしないと、学院に向けては楽しくないし。
ラピスのメイド姿か…………萌え。
「メギドフレイムは大丈夫なの?」
「なして?」
「放射能汚染って言われてるし」
曰く、「核兵器以上の放射線兵器」が反対派の論拠とのこと。
たしかにプロパガンダとしては妥当なところだろうけど、この際、僕はラピスを信じる。
――綺麗な熱兵器。
それがソドムとゴモラを滅ぼしたメギドの火だ。
でもさぁ。
放射性があったとして、
「仮にそうでも逆らえないのは事実だし」
他に言い様もない。
「あー、それは」
「だし」
久遠も四谷も反論に窮したらしい。
多分ラピスもその辺の対処は完璧なはずだ。
一応、軍事と経済を叩いているだけで市民を犠牲にはしていない。
一種、軍事系のサラリーマンは別として。
ただそこまでとくとくと説明して理解を得られても、「だからどうした」で済んでしまう案件だ。
我が妹ながら空恐ろしい。
――可愛いけどねっ!
可愛さは大事だ。
可愛いは正義。
だから僕は世界に喧嘩を売る愛妹のことが大好きなのだから。
「逆らわなければ大丈夫だから」
そんなゆるゆるの回答。
我ながら悪徳だ。
「えー」
「あー」
ご不満そうでした。
立場が逆なら僕も似たようなリアクションになるだろう。
「文化祭は大丈夫そう?」
「とりあえずは」
「浮き足立ってるがな」
そこは大丈夫か。
「なんでも口添えがあったとか」
「…………」
あー。
「アート?」
「はいな?」
「文化祭について根回しした?」
「とりあえず続けるようにと説得を」
多分説得じゃないだろう事は推し量れる。
「学院の運営と王国の運営は別難題ですゆえ」
そこを混同視するから叩かれるんだろうけど。
マスコミもそれが狙いだろう。
校長先生並びに理事諸氏には畏敬の念を持ってしまう。
単純に僕が通っていたと言うだけで世界情勢に巻き込まれれば、胃薬の一つや二つや三つほど欲しくもなるはずだ。
酒に逃げても僕は何とも否定できない。
申し訳ござらんが、別段制止するはずもなく。
合掌。
「文化祭楽しみですね」
スモモの花のようにほころぶラピスの御尊顔。
破顔の彩は喜色に満ちている。
ラピスにとって文化祭と世界大戦は同じスケールのようだ。
「で、結局サボり?」
とは四谷のコメント。
「しょうがないでしょ」
責任が誰に帰結しようと。




