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第93話 大丈夫かこの展開02


 ネットは大論争になっていた。


 核すら通じない世界制覇王国の軍事力。


 まぁ通じないというか、先手を打って封じただけですけども…………たしかにスターウォーズ計画としての側面も持つので、大陸弾道弾を衛星軌道上から撃ち落とすことも可能ではあったりして。


「実際に国防総省的にはセレクトボタンも有り得る様子でしたし」


 とのラピスの事。


 ルリは朝食を取ると部屋に引っ込んだ。


 少し悪いことをした。


 何をするでもないのでテーブルクロスをチクチク。


 フリフリの刺繍。


 ちょっと自分でも驚くくらい凝っている。


 こんな凝り性だったっけ?


 僕…………。


 ラピスはスマホを弄っている。


 時折、


「にゃはは」


 と笑ったり。


 反米。


 反中国。


 特にこの二つが沸騰している。


「恨み辛みを鎧にしていますから」


 無邪気に笑う妹さん。


 いや、たしかにそうだけども。


 基本的に民主主義も共産主義も建前が違うだけで、結局は政治の一形態なだけであって。


 まぁ政党批判が公然と出来る民主主義の方が僕は好きだけどね。


 テレビのニュースを見ながらチクチク。


「ミスター司馬! どうか理性を取り戻されたし! 米国は世界に責任を負わなければならない!」


 報道官さんの御言葉でした。


 通訳はラピス。


 基本的に王国と米国は犬猿だ。


 水と油とも言う。


 片や軍事独裁…………国家……?


 片やネオコン。


「どう妥協しろと?」


 そんな命題も提起される。


「ま、しばし踊り狂うのを見るのも一つですね」


 戦争が起きようと知ったこっちゃない。


 そう言ったも同然だ。


 そして、「私としては第三次世界大戦が理想的です」とのこと。


「何故よ?」


 と尋ねてみる。


 背中に嫌な汗。


 そりゃ第三次世界大戦とか言われると……。


 その気になれば、大混乱に陥る。


 顔も知らない人間のために流す涙はないけど、このままでは僕がA級戦犯。


「大国の軍事力とエネルギー保有が世界を支配しておりますので、それさえ否定できれば大国の覇権なんて障子の様に、です」


 軍事力。


『システムメギドフレイム』


 エネルギー。


『第一種永久機関』


 絶望的なまでにラピスは地球を凌駕している。


 まぁ露骨特異点を持たれている時点でチェックメイトではあろうけど。


「で、小国が第三次世界大戦を切り抜けるためには何を必要としますか?」


 えーと……、


「軍事力?」


「ええ」


 抑止力が一夜で潰えた今、大戦前夜の模様らしい。


「で、簡潔に頼れるのは?」


「ああ」


 世界制覇王国の軍事力だね。


 大国の発言力を限りなく低下させ、威信を無くし、発展途上国が沸騰。


 石油や技術のグローバル化が進む中で、関税の重要度が増す。


 必然だろう。


 大国としては小国がデカい面をするのは面白くない。


 特に米国は、石油の源泉を求めるために理由をでっち上げてイラク戦争の戦端の開いた経緯がある。


 中東の資本家になるのも軍事力あったればこそ。


「となると……」


「石油資本が中東の独占を見ますね」


 意外と結構どこにもあるけどね。


 ただ米国がビジネスとして流通を支配できなくなる。


 ここで王国の二面性が発露される。


 小国は臣国として王国の庇護下に入れば国際的に有利な地歩を築ける。


 大国はエネルギー支配が滞れば第一種永久機関も視野に入る。


「なんだろ……その悪魔の方程式は」


 色々とヤな予感。


 カーテンの隙間からチラリと見ると、悲喜こもごもに民衆の波。


 シュプレヒコールなのか……なんなのか……。


 世情。


 御苦労なことだ。


「で、結局思惑通りに世界は動くの?」


「知りません」


 そうだよね。


 配線工事のように技術に則って運営するわけでも無し。


 場合によっては王国と連合軍の潰し合いもありうるし、ラピスが負ける青写真は描けないけど、敵を作っても良い事は無いなぁ。


 本気で地球程度は欠伸混じりに滅ぼせる。


 それも成層圏の話ではない。


 地球という質量……むしろ太陽系まで含めても一瞬で無くせるだろう。


「結局はどこまで妥協できるかですねー」


 ぼんやりとラピスの呟き。


 本当に事態を把握しているのか不安だけど、


「握る手綱もないですし」


 本人も似たような物らしい。


 精神的には不安と言うよりワクワク感に彩色されてるけど。


 どうにかこうにか。


「世界制覇王国じゃなくて世界平和王国と呼ぶべきでしょうか?」


 ――ここまで国際世論を踏みにじっておいて?


 いやラピスの本気具合は重々承知しているけど、それにしたって灼熱の魔王は事この点に関する限り冗談を言わない。


 つまり百パーセント本気だ。


「世界平和王国……ね」


「とても愛嬌のある名前だと思えます」


「じゃあ僕は覇王にならなくて良いの?」


「ソレは困ります! やっぱり世界制覇王国で!」


 僕を世界で一番偉くしたいラピスさんの御言葉でした。


 僕を世界で一番幸せにする。


 そのために未来からやってきたのだから。


「核を取り戻せ! 威信を取り戻せ! 世界を混乱させる王国を敵と為せ!」


 ニュースで高らかと政治主張。


「米国さんも大変だ」


 テーブルクロスをチクチク縫いながら、僕は国際情勢に同情した。


 いや、愛妹の起こした結果なら甘んじて受け入れますけどね?


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