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第88話 文化祭の準備03


「文化祭……」


 ルリが呟く。


 夕餉の後にそんな話題。


 僕はテーブルクロスを縫っていた。


「覇王陛下のする事でしょうか?」


 とはいえ、


「学生は学院で平等」


 でもある。


「無理に道理を蹴っ飛ばす必要もなし」


 でファイナルアンサー。


 ルリは小さな口でコクコクと茶を飲む。


 余った茶葉をシルバーマンから貰ったのでソレだ。


 淹れ方は教えられなかったので素人芸。


 けどまぁ素材が良いので、ダメ舌にも美味しいと感じられる。


「美味しい」


「あとでお礼を言っておくよ」


 アートに。


 スマホで。


「お兄ちゃんは本当に器用」


「自慢できる芸じゃないけどね」


 やってることは刺繍の基礎だ。


 あまり褒められる類でもない。


「そんなこと……言わないで……」


 悲しそうなルリ。


「可愛い!」


 ロリルリを抱きしめる。


 勿論縫い針は安全に置いて。


 ロリルリって言葉は凄く良い感じな気がする。


 じゃあラピスは?


 乙女ルリ。未来ルリ。春リ。


「……うーん」


 いまいちしっくり来ない。


 馬鹿なことで悩んでいる自覚はあれども。


「お兄ちゃんの……喫茶店は……楽しそうだね……」


 かしまし娘がウェイトレスになればそりゃね。


 ツイツイと運針に戻る。


「いいな……」


 少し憧憬。


「大丈夫?」


 ルリが僕のせいで文化祭に憧れと寂しさを持つのなら、すぐにでも破棄する方針だ。


 ルリ第一主義。


 それがルリズムで、僕の信念……ソウルに根ざした根幹だ。


 僕が楽しまなくても問題は無い。


「そういう……意味じゃ……ない……」


 逆に恐縮されてしまった。


「お兄ちゃんは……私を……好きすぎ……」


「ルリだもの」


 正真正銘の。


 他に何がいりようや?


 ルリと一緒に居るだけで、僕は生きている意味を見出せる……というか、むしろ他の事柄は些事だ。


「えと……その……」


 恥じらい。


 赤面。


 鼻から喀血しそうなほど可愛い。


「ルリ……最高……」


「あう……そうじゃなくて……」


「はいはい?」


「頑張ってる……お兄ちゃんが……好き……」


「そっか」


「うん……だから……楽しんで……ね……?」


「相分かり申した」


 ナデナデする。


 ルリの可愛さはオリオン三連星すら敵わない。


 天の明星ですら霞んで見える。


 天使。女神。ミロのヴィーナス。


 悉くがルリには及ばないのだ。


「あう……」


 赤面。


 同色の瞳が僕を捉える。


「お兄ちゃんは……」


「何か?」


「ナデナデすれば……私が幸せって……思ってる……?」


「わりかし」


 結構最低なことを言っている気がする。


 けれどルリとのコミュニケーションは僕の魂だ。


 ――『じぶん』そのものだ。


 母さんとした約束と誓約。


 大切な人を護るために僕は『僕』をベットする。


 であるから僕とルリは家族でいられ、


「そこにラピスが付随する……か」


 巡り巡ってそゆことに為る。


「お姉ちゃんは……メイドさん……」


「想像するだけで可愛いよね?」


「だよ……」


「ルリにもメイド服作ってあげよっか?」


「いいの……?」


「ちっちゃな司馬のメイドさん……」


 性欲のたがが外れてしまいそうだ。


 いい加減条例違反も犯しそうな勢い。


 それもこれもルリが愛らしいのが悪い。


 世界の至宝。


 責任は僕に帰結するけど、それだけルリを見ると、僕は平静で居られない。


「お兄ちゃん……目が恐い……」


 は!


 引かれてしまった。


「えと……その……つまりルリが可愛いってだけで……」


「本当に……?」


「お兄ちゃんを信じなさい」


 コックリ頷く。


「でも……私も……メイド服……?」


「まぁ地球人皆メイドになれば世界平和が訪れるからね」


「そなの?」


 さいです。


 譲り合いの精神。


 日本人の美徳でもございまして。


「お兄ちゃんは……むしろ……」


「むしろ?」


 むしろ何だろう。


 残酷。被虐。迷惑。


 ……それとも力になれない?


「優しすぎ……」


 それは予想していなかった。


「自覚はないけどなぁ」


 ルリが居るだけで満足なだけで、身贔屓はするけど、ルリが可愛いことに全く以て異論は無く、単純に明快な事実が残るのみだ。


「優しい……か。想われるのは光栄だけどね」


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