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第80話 恋の下火はまだ燃えて01


「ようこそいらっしゃいました覇王陛下」


 執事さんが慇懃に一礼してくれた。


 何がどうの。


 僕らはイギリスに来ていた。


 アートのお誘い。


「友達の家に遊びに行く」


 と云えば真っ当だけど、現実とは齟齬がある。


 ぶっちゃけ豪邸ですらない。


 富豪の屋敷を漠然と思い浮かべて、その数十倍の規模を思い起こせば多分アートの屋敷になる。


「宰相閣下。四谷様。久遠様。お嬢様がお世話になっております」


「気にしなくて構いませんよ」


 ラピスがヒラヒラと手を振る。


「えと……」


「あと……」


 四谷と久遠はドン引きしていた。


 心情的には僕もソッチ寄り。


「宰相閣下におかれましては永久機関の提供まこと有り難く」


「お礼ならアートに。私はソレに応えただけです」


 ラピスはあまり謙遜をしないので本音なのだろう。


 それにしては自然体が身についているけども。


 なんとなーくジト目を向ける。


「何か?」


「いえ」


 何を思うでもない。


 けど、確かにラピスの規格外を目にした気持ち。


「相承りまして」


 そしてリムジンが僕らを乗せて屋敷の庭園を走る。


 窓から花畑や泉、公園などが見えた。


「開いた口がふさがらないってのはこのことだな」


 感嘆とする久遠に、


「金持ちの業ですね」


 ラピスが皮肉る。


「マジ?」


 四谷は少し不安そうだ。


「マジ」


 僕がグッとサムズアップ。


 エンジン音をBGMにシルバーマンの屋敷を眺めやる。


「力の入れ方間違ってない?」


「庭師に働く環境を提供出来るので無駄ではありませんが」


 それを人は本末転倒という。


 別に庭師さんに文句を付けるわけでは無いけども。


 ソレにしたって厄介な事柄には相違なく。


「イギリスは石油が取れるのに司馬さんに帰順して良いの?」


「何事も先手を取るのがビジネスのコツですね」


 あっさりと。


 確かに事実の一側面。


「それにしてもアートがね」


「仲良くしてくださって有り難い限りでございます」


 と執事さん。


 然程のことでもないんだけど。


 ぶっちゃけ相手方が絡んでくるだけだ。


「学友ね」


「宰相閣下にありますればハーバードでも歓迎されそうですが」


「無理よ」


「失礼。何故でしょう?」


「インタフェースの演算能力は人智を越えるから」


 サクッと言ってのけるラピスさん。


 恐い物無しだね……。


 ウチの妹……。


「インタフェースはシルバーマンも様々に擁しておりますけども」


「私はレベルが違うから」


「の……ようですな」


 慇懃に一礼する執事さん。


「それにしても何処まで」


 四谷はどこか現実逃避。


 整頓された自然を眺めやり……述べる。


「なんか映画の撮影に使われてそうだよね」


 息を呑む。


 理論と計算で構築された自然美。


「もうすぐ屋敷ですので」


「……屋敷ね」


 ラピスが苦笑した。


 多分皮肉だろう。


 庭でコレなのだから、推して知るべしか。


 いいんだけどさ。


「アートは?」


「今日は屋敷にご滞在なさっております」


「もしかして都合悪かったですか?」


「まさかでございます。なんと申しましても覇王陛下のスケジュールは何より優先事項ですので」


 あんまり実感も無いのだけど。


 陛下の憂鬱。


「何時もは?」


「大学に通ってらっしゃいますな。お嬢様は知識欲が旺盛にあらせられますので」


「ハーバードやオックスフォード……」


「でございます」


 ぶっちゃけ大丈夫なのだろうか?


 IRAに真っ先に狙われそうな物だけど。


「ていうかラピス狙いでうちの学院に転校してもいいの?」


 ぶっちゃけエスカレータ式の進学校だ。


 そりゃ偏差値はそれなりだけど、とてもハーバードやオックスフォードなどとは比べる天秤として軽すぎる。


 普通にラピスをそっちに所属させた方が外聞的には申し訳が立つはずだ。


 其処をあえてとなると……。


「宰相閣下と縁を持つのはシルバーマン財閥として自然な判断でございます」


「それで直系が?」


 そう相成る。


 礼を尽くすわけなのかな?


「国は違いますが三顧の礼でございますな」


 にゃるほど。


「えーと」


「シルバーマン財閥の直系が頭を下げて漸く一分の礼が出来ると言うことですよ」


 単に使用人を派遣するだけでは、「礼を欠く」と。


 その心意気は褒めたいけど、僕としては何だかな。


 普通に接してくれればそれ以上はないんだけど。


 けどそれも不躾か。


 世の中は業の深きこと。


「お嬢様がお世話になっております」


 慇懃に執事さんは一礼して見せました。


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