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第7話 軽木の纏う諸事情06


 家に帰る前に市立図書館に寄った。


 娯楽としては良い感じ。


 金もかからないし空間を圧迫もしない。


 ゴミにならないし手間も過小だろう。


 とりあえず海外のSF作品を借りてみる。


「本屋じゃ売ってないしね」


 誰に向かっての言葉か。


 いいんだけど。


 両親が居なくなった以上、ルリの保護は僕の仕事だ。


 出来れば不自由は与えたくない。


 兄としての矜持。


 あるいはシスコンか。


 愛らしい妹。


 愛しい少女。


 シルクの髪とルビーの瞳。


 おかげで日光に弱く、引き籠り。


 因果関係は其処じゃないけど。


 日光に弱いのは単に虚弱体質。


 引き籠りは人間不信だ。


 僕にしか心を開かないという小動物のような愛らしさ。


 シスコンだと笑えば笑え。


 けれどもルリの笑顔は何にも代えがたい。


「つまり……シスコンですね」


 我ながら残念なコンプレックスだけど、一周回ってむしろ誇らしげに胸を張れる妹愛の究極よ。


 妹は可愛い。


 これは絶対の真理。


 ――この世の妹の、可愛くないなんて事は無い……ってライトノベルで言っていた!


 借りた本をパラ見しながら帰途につく。


「ただいま」


 誰も居ないだろう玄関口で独り言。






「お帰りなさいませ兄さん」




 ……。


 …………。


 ………………。


「……………………ん?」


 不意に聞こえたソプラノに耳を疑った。


 ついで目にしたのは鮮やかな白と赤。


 揺れる白と輝く赤。


 少女が一人。


 玄関口で僕を待ち受けていた。


「えと……」


 鍵はかけたはずなんだけど……。


 泥棒にしては礼儀正しく、どこか既視感。


 何にせよ、ウチは盗まれて困るモノもないので、ルリ関連でさえなければ、お邪魔して構わないんだけど……。


 いや、権利書は困るか。


「兄さん!」


 白い髪と赤い瞳の少女は僕に抱きついた。


 アルビノ。


 美少女。


 乙女。


 どこかで見たか――と言えば毎日見てる。


 司馬ルリ。


 僕の妹の特徴だ。


 けれどもルリは小学生。


 僕と同じ身長ではないし、抱きついた際に押し付けられている胸元の隆起は、未だ御業の埒外。


 それらが明確に別人だと告げている。


 もしも急激に成長したというのなら、僕のカルテジアン劇場は多分ホムンクルスが気を相違えている。


「兄さんだぁ……」


 感嘆としながら、僕に抱きついてスリスリしてくるアルビノ美少女。


 顔の造型もルリを思わせれど、どこか別人風。


「どなたでございましょう?」


「ルリです」


「えーっと……」


 何と言うべきか。


 何を言うべきか。


「ルリさん?」


「司馬ルリです」


 ほほう。


「大っきくなったね」


「兄さんのおかげで」


「牛乳でも飲んだ?」


「時々」


 んーと。


 本当にいきなり大きくなったわけじゃなかろうな?


「あう……お兄ちゃん……」


 階段の折り返しから、此方を覗きやっているルリ(本物)。


 知らない人が家に上がっているので、警戒しているのだろう。


 そしてその愛妹に似るに似すぎて胡散臭い乙女が、僕に抱きついてスリスリ。


「えへへ~。えへへ~」


 頭の中がお花畑なのか……態度がお花畑なのか……見えている景色がお花畑なのか……どうにも判断に困るポンコツ性。


「司馬ルリさん?」


「ルリで良いですよ?」


「それは妹にしか言わないことにしてる」


 可愛いルリは、ちゃんと存在している。


「私も妹です!」


 ピッと主張する司馬ルリさん。


「年齢は?」


「十五歳!」


 同い年~。


「ルリとはどういう関係?」


「過去の私です!」


 黄色い救急車って何番でしょう?


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