第59話 乙女の少し04
「お付き合い?」
「ですね」
食後。
茶を飲む僕ら。
自宅での何時もの光景。
ルリは僕の膝の上に座ってテレビゲーム。
「お兄ちゃん……四谷さんと……?」
「ですね」
繰り言。
「何故?」
「牽制と練習」
ふにゃふにゃと経緯を伝える。
言ってしまえば、四谷の男子掣肘であって、それ以上ではないんだけど……そりゃラピスには許し難いことではあろう。
僕としてもシスコンの重病はあるので、ラピスの憤激は手に取るように。
「さすがビッチですね」
その評もどうよ?
「困ってるみたいだったから」
ジト目で、
「兄さんは」
とラピス。
どうやらお冠の御様子で。
いや仮に逆を想定し……ラピスが僕以外の男子と交際することになったら、スカイツリーからダイブしそうな気もするけども。
つまりそれだけの重圧を、僕はラピスに与えていることになるわけで。
割腹すべきか?
「困っている人がいたら操を売り渡すんですか?」
「そげなつもりゃーにゃー」
アートみたいな喋り方になった。
「でも四谷も趣味が悪いよね」
「そうは思いませんが」
「ビッチ?」
「四谷さんが、ですね」
南無。
「で、デートって何すれば良いんだろうね?」
「ブラブラと」
「ラブラブと……」
ラピスとルリの答えが相似した。
意味はかけ離れてるけど。
さりとて、
「百貨繚乱?」
他にスポットをしらない。
そもそもデート初心者なので、乙女をときめかせるデートスポットなぞ知っているはずもなし。
困ったな。
「どこでもいいかと」
ラピスは拗ねた口調でした。
お兄ちゃん大好きで、疑似恋人が出来たらそうなるよね。
こっちもこっちで心配りはしないと。
とはいえ今更反故にも出来ないけど。
四谷もなに考えてんだか……。
「ラピスのワープでハワイとか行けない?」
「行けますよ?」
「じゃあそれで」
ついでに何人か呼びますか?
僕とラピスと四谷……となれば後は久遠とアートか。
ハワイなら少しはデートっぽくなるし、ついでにリゾートとしては中々だろう。
「ルリは?」
「嫌……」
引き籠りですものね。
ハワイの日差しはきついだろう。
無人のビーチも探せばありそうだけど、まず外出が無理だ。
その上で、人がいなくても罪悪感は増し増しになる。
それくらいはお兄ちゃんである僕が察し得ないはずもない。
とまれ、
「恋人って何をすればその通りなのか?」
少し考える。
「セックス?」
「駄目です!」
ラピスの過剰反応。
むしろ反射に近い言葉だった。
ムスーッと膨れて、涙目になる。
「無論」
僕も頷く。
言うまでもないことで、全くそのつもりもない。
基本危ない橋は渡らない。
面倒事は僕のもっとも嫌うところ。
それにしては四谷に強く出られないのも、面倒事ではあれども。
――さてどうしたものか?
場合によってはシステムメギドフレイムが四谷を撃ち貫かんとするだろう。
「お兄ちゃんは……エッチ……?」
「ルリにはね」
膝の上のルリを可愛がる。
うーん。
マーベラス。
アルビノの超絶美少女ルリを可愛がり。
本当に可愛いのだ。
この義妹は。
この愛妹は。
この慈妹は
理性がダメになる程度には、大量破壊兵器にも匹敵する。
「あう……エッチ……」
その手の知識はある様子。
そりゃインターネットをしていればエロネタには耐性が付くだろう。
ルリは引きこもりで、パソコン関連は整えてるから、耳年増にはなるだろう。
ネットで人格が陶冶されるのは、別にルリだけの因業でも無い。
ちなみに僕と結婚してくれれば一生幸せにします!
「ルリもエッチしたい?」
「ふにゃ……」
真っ赤になるルリ。
可愛いなぁ可愛いなぁ!
「兄さんセクハラです」
「知ってる」
「にゃ……」
赤らめるルリの可愛いこと天元突破。
そのまま保存して、時の流れを止めたいほど。
哀しいけど未来像は此処にあって。
「私でも良いんですよ?」
「食指がなぁ」
「ビッチよりおっぱいありますし!」
知ってる。
見ただけで分かる。
『突出し尚のこと、黄金比の理』とは僕の評。
「抱いてください!」
大人に成ったらね。
まだ責任を取れる年齢ではない。
別に性事情に、その辺の青春群像は理屈で通るモノじゃ無いけど、なんとなくルリとラピスは大事にしたい。
は。
これが恋?




