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第43話 体育祭なんてやってる場合か06


「総合優勝……赤組!」


 成績発表とともにクラスメイトたちは沸いた。


 熱狂。


 青春。


「おー」


 と僕。


「やったじゃん」


 ドンと背中を叩かれた。


 四谷だ。


 ついで久遠。


「おめでとう」


「司馬もだぜ」


 いやー、何もしてないんだけどね。


「応援してくれたじゃん!」


 四谷はソレが嬉しいらしい。


 奇特なお人。


 けど確かに応援はしたし、有償……優勝を願っていたのも心理的には事実だ。


 その上で、担当クラスが総合優勝するなら、それは確かに嬉しいわけで、こんな時くらい喜びを分かち合いたくもある。


「打ち上げしない?」


「クラスでやるでしょ」


「そっちは司馬……参加しないし?」


「さすがにね」


 遠慮とは違うけど、「苦労の分かち合いが出来ない」も事実。


 南無三。


 終了宣言と共に熱狂が収まると、帰り支度。


 さっそく打ち上げについて、周りのクラスメイトがはしゃいでいた。


「じゃあ打ち上げいくぞ! 参加費千五百円!」


 クラスの上位グループが企画していた。


 中々阿漕な商売だけど、そんなものは青春テンションの前では、水に濡れた障子も相応だろう……正に。


「ほらいってらっしゃい」


 四谷と久遠を指で誘導。


「司馬と一緒が良いぞ」


「すまんけど僕にソッチの趣味はない」


「冗談でも止めてくれ」


 うげ、と舌を出す久遠だった。


 ジョークにしてはブラック過ぎたのは、たしかに僕も覚るところだけど、このイケメンは女子に困っていないし、当然の反応ではあろうぞ。


「ポッ」


 と赤面する四谷。


 乙女のカルマだ。


 あえてツッコミはしない。


 ま、確かに乙女の妄想と情欲をかき立てる意味で、僕と久遠はちょっと距離が近い……いや、認めたくはないとしても。


 そんな馬鹿なことを考えていると、


「兄さん!」


 廊下から教室に愛妹が現われる。


 晴れやかな笑顔だけど、この場合は不安を煽るも必然で、けれどそれはおくびにも出さず、僕はラピスに微笑んだ。


「御苦労様」


「兄さんこそ」


「何もしてないけどね」


「スポンサーじゃないですか。なお応援チームの勝利ですよ? 兄さんの苦労の集約と言って申し分ないはずです!」


 天耳通でも持ってらっしゃるの?


「ラピスは何してたの?」


「えーと、ちょっと暴力を」


「いいんだけどあんまり過剰にしないでね?」


 僕の肩身が狭くなる。


「基本不殺主義なのでそこは問題ありません。武器兵器を無力化するだけですので」


 ヒマワリの笑顔で規格外な事を話すのも少し慣れた。


 我が妹ながら恐ろしい。


「打ち上げに行きましょう」


「いいけど」


 四谷と久遠に視線を振る。


「参加」


「以下同文」


 そゆこと。


「じゃあ中華を」


 ラピス的にはそんな感じのようだ。


 帰り支度を済ませて久遠に車を回してもらう。


 久遠グループの御曹司だけあってこう云うときは便利だ。


 別に肩書きで友情付き合いしてるわけでもないけど……まぁその辺の過敏な事情は後刻と言うことで。


「司馬さんは何してたんだ?」


「チベットの高僧と政治談義」


 ずっこける久遠でした。


 そりゃまラピスの能力と発言力なら頼られて不思議もない。


 いやぁ、本気で大丈夫なのか不安になってくるね……ラピスの行動力と突発的挑戦の意図に対しては。


「体育祭なんてやってる場合じゃねえな」


 久遠の言葉が正解。


「現時点で無理を通せば道理が反発するので忍耐の時期ですけど」


「ブリックスと米国の掣肘がどう意味を為すかにもよるな」


「さいです」


「どゆこと?」


 と聞いたのは四谷。


「場合によっては世界大戦」


 まぁ被害が出るのは相手方だろうけど……たしかに個人対世界の世界大戦勃発は覚悟の範疇に属すべき事柄だろう。


「世界大戦……」


「エネルギー資本の時代だからね」


 そう云う意味でもラピスは軽からぬ意味を持つ。


 本人は、「兄さんに喜んで貰えれば他はどうでいい」状態なんですけど。


「大丈夫なの?」


「さてね」


 妹の愛らしさは不足無い。


 別に責任の範囲で暴走するなら僕は好きにさせる。


 結局宰相次第。


「体育祭は面白かったから良いんじゃない?」


「陛下は大らかだな」


 久遠が笑った。


「器量良しと褒めて良いのよ?」


「本当に司馬は」


「いつも通りだな」


 君らもね。


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