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第41話 体育祭なんてやってる場合か04


 着々と体育祭に向けてカレンダーが捲られる。


 体育祭を明日に控えた日付。


 五月の中旬だ。


 あらかたの準備は終わり、明日を迎えることになった。


 エスカレータ式の学院で、部によって別々に催されるけど、得点の采配はチームとして一喝採点。


 個別優勝と総合優勝の二つがある。


 僕は参加しないので四谷と久遠を応援するくらいだけど。


「んー」


 教室でパックジュースを飲みながらホケッと。


「お暇ですか」


 ラピスが尋ねてくる。


 ――誰のせいかな?


 そんな思いもありはすれど、ラピスに皮肉を言ってもしょうがない。


「結局台湾はどうなったの?」


「永久機関を敷設して総統に挨拶しました」


「……………………」


 何をかいわんや。


 どっちにツッコむべきか?


「穏やかな国ですね」


「表面上はね」


「一応支援をする方向で進めていますけど大丈夫でしょうか?」


「いいんじゃない」


 誰も文句の言い様もないはずだ。


 システムメギドフレイムがあれば反発も無いかもしれない。


 それほどうちの愛妹は凶悪的で。


 ――正確には根底に差す……が正しいのかな?


「兄さんも台湾に行きますか?」


「日本が心地良いから大丈夫」


「ですね」


 そこはラピスも同意らしい。


「他の国は?」


「今のところ」


 ぶっちゃけ国際的には(論じ方の問題……その一つの側面として)僕とラピスはテロリストなのだから、諸手を挙げて万歳とは行かないだろう。


 日本が臣国にならないのも米国政府……というよりホワイトハウスに追従する形だからでもある。


 そこら辺は僕じゃなくても覚っているし、なおラピスが認識していないはずもない。


「俺は良いと思うんだがなぁ」


 隣の席でパックジュースを飲んでいる久遠がそう言った。


 染めている金髪は鮮やか。


 爽やかな歌舞伎者だ。


「久遠グループの御曹司として?」


「だって無制限のエネルギー供給だぜ? 日本にはエネルギー資本がないから司馬さんの技術提供はむしろ歓迎すべきだろ」


「そーなんだよねー」


 否定はしない。


「しかも自動車市場では電気自動車が主流になる可能性まである。実際に台湾から受注が増えたらしいぞ?」


 永久機関の敷設。


 エネルギー総オートメーション化。


 国策としても電気自動車は黒字事情だろう。


 なお技術を持つ日本も敷設されればタダ同然で自動車を動かせる可能性まである。


 無論電気会社の人件費もあるので無料とはいかないだろうけど。


「なんかそう考えてると」


 とは四谷。


 パック牛乳。


「体育祭の準備なんてしてる場合なの?」


 ご尤も。


 けどま、それは僕の問題で、四谷と久遠に肩代わりしては貰えないモノだ。


 信用していないわけではなく、むしろ大切だから距離を取りたい思春期の複雑怪奇な若手心と申せよう。


「明日は頑張ってね」


「気楽だな」


 久遠が忍んで笑った。


 むしろキョトンとしたのは僕の愛妹の一角……ラピスからだった。


「一応兄さんもスポンサーですよ?」


「ソレだよね」


 正確には自称国庫からの捻出だ。


「政治的にどうなのか?」って話だけど、「世界制覇王国は地球全土を領土にする」と宣言している。


 であれば超法規的な資金運用もできるわけだ。


 別に世界制覇しても国から徴税しているわけでもない。


 東証で稼いでいるだけだ。


 その未来予知にも似た演算能力の度合いが、「開いた口がふさがらない」類なだけで。


 いいんですけどねー。


 殊にラピスの暴走を抑えられる自信は僕にはないし、止めてどうなるとも思えない。


 ラピスを否定しているわけではないよ。


 単にハチャメチャさ加減が僕らの沈鬱を払拭してるってだけで。


 それに……一応、犯罪では無い。


 犯罪よりタチは悪いけど。


 中には『陛下ファンド』なる単語まで出る始末。


 株のテクニカルタームの一つだ。


 ラピスが売買した株が注目を浴びて値がつり上がる現象。


 そりゃ副次的にラピスに追従すれば無難に稼げるだろう。


 遅れるほどに最高値を掴まされ破産もありえたりして。


 生きるってのも大変だ。


「兄さんは参加したいですか?」


 今更だね~。


「大丈夫」


 ラピスの白髪を優しく撫でる。


 艶やかで、流水の様で、幾らでも梳いていたい。


「ルリズムが適うだけで僕は幸せだから」


「にゃあよう」


 朗らかに笑うラピスの笑顔は百十五点。


 限界突破はこの際、僕の愛の証。


 潤む赤眼は、偏に乙女心を発露し、兄への敬意と慕情に揺れた。


「愛されてるな~」


「兄さんですから」


 答えになってないよ?


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