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第35話 私の愛妹は凶暴です04


 あっはっは。


 笑うしか無い。


 世界中で大混乱が起きた。


 然もあろう。


 この際世界制覇宣言には関知せずとも、地球全土の衛星と電波をジャックしたのだ。


 サイバーテロを最も分かりやすく示した形。


 言ってしまえば、「世界中のシステムを乗っ取れる」との宣言に等しい。


 当人曰く、「やろうと思えば出来ますけど」とのこと。


 数年後の未来は一体どうなっているのだろう?


 僕のツイッターも大炎上。


 ラピスの投稿した世界征服宣言の動画も視聴回数大回転。


 なお兄の贔屓目を差し引いてもラピスは極上の美少女だ。


 反発と歓喜が一対一。


 こと個人レベルならラピスを、「宰相閣下萌え」との意見もよく見かける。


 警察は追いやった。


 日本国は国事なので真っ先に反発するだろうと思っていたけど、テレビを見る限り迂遠に否定するに留まる。


「許されざる行為で在り、国民を抱える身として痛切に懸念を覚える」


 とのことで、思ったより政府はへっぴり腰だった。


 おそらくシステムメギドフレイムの情報も持ち合わせているのだろう。


「意外ですね~」


 ココアを飲みながらぼんやりとラピス。


 兄さんココアの味は、ラピスと……それからルリにとってとってもご褒美のようで。


「あのさ? 家に火を点けられたらどうする?」


「一応防衛対策は立てていますけど、その気になれば何処にでも泊まれますし」


 そ~ゆ~問題かな~?


「未成年の犯罪発露としては珍しい形で……」


 ニュースは少年犯罪の専門家が招聘され、僕とラピスの倫理観について何やら推測を立てていた。


 曰く、愉快犯としての秩序の無い精神性をしているのどうの。


 なんか刑事事件の側面から自分を評価されるのは新鮮だけど、


「ぶっちゃけ僕は何もしてないよね」


「はい。陛下」


 ラピスは嬉しそうだ。


「国際法廷に立たせるべきか否か?」


 そんな議論。


 電話のケーブルは引っこ抜いた。


 苦情、支援、アポイントメントがひっきりなしだから。


 世界覇王になることは……五十歩百歩譲っていいとしても、テレビに出てどうしろと?


 タレントじゃないんですけど。


 どちらかと云えば注目は僕よりラピスに向いている。


 ――僕は地味な大和少年だからね。


「兄さんは格好良いですよ?」


 それを贔屓目という。


 せめて久遠に言ってあげて。


「兄さんの方が格好良いんですけど……」


 キョトンとする嘘の無い赤眼は、否定するにも労力が要った。


「世界覇王陛下ばんざーい」


 世界各所では市民団体から大学サークルまで踊る馬鹿になる人もいる。


 世界激震の状況で悪ふざけする気持ちは分からないでもない。


「けしからんことだ」


 と述べたのはアメリカ大統領。


 生放送で英語だったけどラピスが訳してくれる。


「この少年少女のクラッキング能力は特筆すべきだが、その能力による世界平和への石の投じ方は非難に値する」


 当然です。


「完全にホワイトハウスを敵に回したね~」


 つまりひいては世界最強の軍隊……国防総省が敵に回ったと言うことだ。


「まぁ核兵器でも私たちは殺せないので気楽に構えましょう」


 にゃんごろ。


 テレビ前のソファでルリとラピスが甘えてくる。


 二人の愛らしい妹が……僕の腕の中に居る……これが幸福の最大級で無くて何だというのか?


「お兄ちゃんが……王様……」


「ルリを王妃にしてあげる」


「私は!?」


「ラピスは宰相でしょ。僕を庇護奉る」


「無念」


「いや、助かったのは事実だけどさ」


 両親が亡くなって空虚ばかりの僕とルリが、こうやって元気に振り回されていることを思えば、粛然とするより余程いい。


「そもそも世界全てを王制で統一するというのは人類の所産である自由主義と民主主義の否定に当たる。ゆゆしき事態で在り、テロリストの意識を疑って当然」


 ネオコンだなぁ。


「民主主義なんて投票で王様選ぶだけで根幹は専制主義と変わらない気もしますけど」


 ココアを飲みながらラピスがぼんやり。


「これは自由と民主を世界に広めるアメリカへの挑戦……そして民主主義によって幸せを得ている世界市民への挑戦だ」


 然程ですか?


「彼らは世界の御敵だ。共に力を合わせて戦おうではないか。例え相手がどれほど強力でもアメリカの掲げる正義が負けることはない!」


 テレビで握り拳を掲げて演説している大統領の四方に熱線が落ちた。


 壇上が灼かれ、熱で大気が揺らぎ、演説が止まる。


「……………………」


 腕を掲げたまま固まる大統領。


 そこから更に熱が落ちる。


 チカッと光るアメリカの空。


 まるで地団駄が振るう鉈のように……斜め下に暴力を振り下ろし、硬直した大統領の股間を熱線が蒸発せしめて消え申し……。


「……………………えーと……………………」


 僕はラピスを見た。


 宣言したわけでも、呪文を唱えたわけでも、遠大なコンピュータを操作したわけでもない…………のに、まったく無謬なく彼女はシステムメギドフレイムを発露した。


 当人曰く、「演算は脳領域で完結しますので」とのこと。


 システムメギドフレイム。


 地球の何処に居ようとも狙い撃つ熱線の爆撃。


 ホワイトハウスの徹底抗戦のテレビショーはラピス……というより世界征服王国の軍事力の際立ちのデモンストレーションで塗りつぶされた。


 もはやアメリカの軍事力がどうのと言うレベルを遥かに越えている。


 これはテロと言うんじゃなかろうか?


 国連に喧嘩を売ってる時点で、「正に」だけど。


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