表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/122

第26話 五分で出来る世界征服01


「吾妹子に恋ひすべながり胸を熱み朝戸開くれば見ゆる霧かも」


 今日は日曜日。


 いつも通りに起きて朝食の準備。


「兄さんと朝を迎える……」


「光栄だね……」


 ラピスとルリはコーヒーを飲んでいた。


 ミルク砂糖ありありで。


 いいんだけど。


 僕はブラックで飲みながら、ダイニングテーブルに朝食を並べる。


 フレンチトーストとベーコンとサラダ。


 ついでにフレッシュジュース。


「いただきます」


 ということで。


 いい加減ラピスの存在も馴染んできた頃。


 一週間ほどになるか。


 未来からやってきた妹。


 その目的は世界征服。


「何の冗談か?」


 とは思えど未来人の侵略はハリウッドの定番。


 ここは日本だけど。


「兄さんのフレンチトースト。至福です。ああ、こんなに幸せで良いのでしょうか。未来ガジェットで世界を灼き滅ぼしたい……っ!」


 そりゃようござんした。


 でも朝食嬉しさにて簡潔にハルマゲドンを起こされると、色々と問題が併発しそうで怖いんですが。


「ルリは? 美味しい?」


「ばっちり……」


 はむ、とトーストを食む。


 うーん……マーベラス!


 ルリズム原理主義過激派にしてみれば生きた御本尊だ。


 ありがたやありがたや。


 まさに妹萌え。


「兄さん?」


 ラピスが現実に引き戻す。


 愛らしい声は、数年育っても変わらないらしく、僕の耳が心地よく、あらゆる妹萌えを凌駕する妹萌えを喚起させられる。


「今日のご予定は?」


「布団を干して茶を飲む」


「すっかり主夫ですね」


「ルリと結婚するための花嫁修業だよ」


「あう……」


 悲しげに目を細めるルリ。


「僕が好きでやってるから気にしなくて良いよ」


 ルリの頭を撫で撫で。


「私も撫でてください!」


 ラピスも……まぁ妹か。


「はいはい」


 もう家族として受け入れていた。


 ラピスは僕と同衾して寝入るため、あやすのは僕の役割だ。


 心的外傷で悪夢をフラッシュバックするラピスの業で僕の罪科。


 色々という箇所箇所はあれど「なんだかなぁ」でファイナルアンサー。


「じゃあ電気屋さんに行きませんか?」


「何故?」


「世界征服のためです」


 方程式の構築が僕とラピスでは食い違うようだ。


「電気屋さんを襲うの?」


「それは強盗です」


「だよね」


 その程度の常識は共有するところらしい。


「では?」


「ビデオカメラを買いたいです」


 元気溌剌。


「まぁ君のお金なんだから好きに使って良いんだけど」


 さすがに一兆円渡されても使い途が無い。


「デートですね!」


「あう……」


 ラピスとルリの意見の相違が面白い。


「ルリも行きますか?」


「……無理……」


「一応セーフティ張ってますので太陽光は防ぎますけど」


「未来の私なら……分かるはず……」


「まぁ人間不信ですよね」


 引き籠りが簡単に治るなら、苦労は無いわけで。


「ラピスはどうしてそんな活発になったの?」


「んと……色々と生き急いでいますから」


「……?」


「基本兄さん有りきですね」


「にゃ」


「軽木ズムとでも申せましょうか。兄さんの語彙を借りるなら」


「軽木ズム」


「軽木至上主義。兄さん原理主義。兄さんしか見えないので、他者を気にする必要を感じないんです。だから人類が殲滅されても私とルリと兄さんだけは、生きていける環境を整えるつもりですし、その一端は示しました」


 司馬セーフティね。


 だから講義中も爆睡できるわけだ。


「そげなわけでデートしましょう」


「いいけどルリは大丈夫?」


「えと……その……」


「嫌なら断るよ?」


「そうじゃなくて……」


「お兄ちゃんに何でも言ってみんさい」


「好き……」


 ぐふぅ!


 喀血ってレベルじゃないよ。


「だから……ラピスお姉ちゃんと……楽しんできて……」


「相承りました」


 慇懃に一礼。


 そんなこんなで朝食終了。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ