第25話 家族になろうよ06
「はふ」
お風呂に浸かりました。
ラピスと二人で。
ヒステリーから立ち直ったラピスを連れて入浴。
「…………っ」
ラピスはそわそわしています。
僕の拒絶されたのがトラウマのようです。
けれどその根幹は何となく察せられるね。
「えと……兄さん……?」
「ごめんなさい」
「何が……?」
「ラピスの気持ちを踏みにじった。安易だったことは認める。ルリにも怒られた。僕が愚かだった。もっとラピスの意を汲んで、愛妹を優しく抱擁すべきだった」
「兄さんのせいじゃ……ない……」
赤眼は悲しむように細められる。
「兄さんの言った通り……私は兄さんで自慰してるだけ」
「うん。多分だけど」
だいたい分かる。
「未来の僕は死んだんでしょ?」
「知って……いるのですか……?」
「ルリが過去に跳躍してくる理由なんて、あまり無いからね」
ついでに嘔吐するほど鮮明なトラウマを夢に見るのは。
「あう……」
「で、過去世界の……生きている僕に懐いた」
「ざまぁないです」
「こっちこそ」
白い髪を撫でる。
シルクのように滑らかで、照明の色にエンジェルリングを作り、濡れているのに涼やかだ。
「にゃふん」
「僕を無くしたルリを一方的に責めてゴメン」
「仕方ないです」
「良くない。全然良くない。尤も、こっちのルリに怒られたおかげなんだけど。謝罪がしたい。本当にごめんなさい」
「私が……」
ムニュンと胸が押し付けられます。
狭い風呂なので互いに重なる形。
ちと淫靡。
「私が……悪いですから……」
「僕が死んだから……やり直しを要求したの?」
「です」
「時空跳躍って出来るようになるの?」
「私に限定するなら」
「ラピスだけが?」
「インタフェースですので」
「にゃむ?」
「ソレについては後刻と言うことで」
「アイマム」
ふい。
シャワー千両お風呂万両。
「結局ラピスは何のために過去へ?」
「贖罪です」
「贖罪……」
何をしたんだ……未来の僕。
「誰も味方がいない中で、それでも私のために必死になってくれた兄さん。その兄さんを今度こそ幸せにするために私は世界を遡行しました」
「死ぬ運命を変えられるの?」
「簡単です。司馬セーフティがありますので」
「ああ、アレ」
なんかとんでもない絶対防御。
見えない宇宙服とも言う。
「兄さんは興奮してくれるんですね」
「そりゃ大好きなルリの未来形が裸で迫ればね」
「愛しております兄さん」
「うん。それは知ってる」
唇に唇が押し当てられました。
キス……というより唾液の交換。
クチュクチュと淫靡に唾液が音をして、舌下で互いの唾液を舐め取り、
「ん……っ……はぁ……兄さん……っ!」
「ちゅ……う……じゅ……ラピス……!」
ラピスにしろ、僕にしろ、発情している。
無論、手を出す気は無い。
勿体ないにも程があるけど、家族でその様なことは……。
「あーっと……」
あまりに発情しかけて自動ブレーキが発現すると、理性が劣情に打ち克った。
「何か? 処女ですよ?」
聞いてござんせん。
「四谷がビッチで久遠が妥協案って言うのは?」
「ええと……その……」
「?」
「死んだ兄さんを忘れて、四谷さんが久遠さんと恋仲になるんです」
「だからビッチ……」
「ええ、そして久遠さんでビッチは妥協するんです」
「ん? 本命は?」
「今更聞きますか普通……」
えーと?
「兄さん」
真摯な瞳。
吸い込まれそうな紅色。
「改めてお願いします。私と家族になってください」
「うん。僕もそう言おうと思ってた」
「では……っ!」
ギュッとラピスの裸体を抱きしめる。
「家族になろうよ」
本当に……僕を想って時を越えてきたのなら。
「ところで両親が生きていた頃には戻れないの?」
「戻れますけど不都合なので」
何がよ?
「司馬ルリは軽木兄さんが居れば心丈夫ですので」
たしかに僕もルリさえいれば他は要らないんだけど。
「もう……拒絶しないでくださいね……?」
「反省してる。本当にゴメン」
「だから大好きです兄さん」
ムニュウと胸を押し付けられました。
家族でコレは在りなのかなぁ?
残酷なラブリーエンジェルの命題。




