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第122話 エピローグ




「愛してるよルリ」






 たったそんな一言で私は救われました。


 兄さんを取り戻すために宇宙を一度崩壊させ再構築した魔王であるというのに。


 全てを知り、自分の罪を自覚し、自責してきた私。


 なのに兄さんは、


「そんなルリの有り様が尊い」


 と仰ってくださいました。


 万知万能の力を得て、やり直しを要求したズルい私を。


「えーと……」


 今日はクリスマス。


 色々ありましたけど数日前に世界征服は完了しました。


 全ての国が臣国となって、世界制覇王国は地球全てを併呑してのけました。


 無論私が本気を出せば地球どころか宇宙まで支配は出来るのですけど、そこまで風呂敷を広げても意味は無いでしょう。


「お騒がせしております。世界覇王こと司馬軽木です」


 兄さんは番組を一つ借りて世界統一宣言を行ないました。


 さすがにクリスマスは特番があるのでお茶の間ジャックをするわけにも行かず、結果として細々と。


 まぁ兄さんがテレビに出るだけでも視聴率満員御礼でしょうけども。


「全ての国家の皆様方。我が王国の臣国と成ってくださり、まずは感謝の言葉もありません」


 マイクでそう語り一礼。


 記者会見。


 カメラのフラッシュが目を焼きます。


「第一種永久機関の敷設は全ての臣国で執り行う予定ですが、コレについては技術者の希少性もあって後手に回らざるを得ません」


 ぶっちゃけ私だけですしね。


「敷設については必ず執り行いますので、逸らず焦らず待って貰えればと」


 また記者のカメラがフラッシュを焚きます。


「それから」


 と隣に座る私に流し目。


「世界覇王としてこちらの司馬ルリを王妃とし、王国第二位の権力者とすることを銘記なさってください」


 あう……。


 全世界に発信するプロポーズ。


 とてもではないですけど信じられません。


 兄さんの慕情が此方に向かっていることが。


 けど事実で。


 本音で。


 真剣で。


 そして何より誠実に兄さんは私を想ってくれます。


 どれだけ私が自己嫌悪しても、そのほつれを取り繕う兄さん。


 世界で一番格好良い……私だけの兄さん。


 いえ。


 私と……それからもう一人のルリと、ですね。


 それから質疑応答に入ります。


「陛下。世界を征服したご感想を」


 記者の一人が質問します。


「実感が湧きませんね」


 それが兄さんの答えでした。


「僕が見ているのは目の前の風景でしかないので、他国については視界に入りません。世界を征服したことは事実でも、ワンワールド主義ではありませんし、臣民の統治は臣国に任せることしきりですので」


 肩をすくめられます。


「王妃殿下との馴れ初めをお願いします」


「運命です」


 絶望なんですけど。


「全てを棄てて愛し合った恋人ですね」


「妹御……と聞きましたが?」


「義理のです。それに妹萌えは大和人の文化ですので」


 苦笑い。


 別の記者が質問する。


「その発言には少し戸惑います。陛下は日本も臣国としているはずですが……」


「先にも言ったとおり形式上です。日本人としての生まれまで否定するほど狭量ではありません」


 中々に大人な回答です。


「結婚式は何時のご予定でしょう?」


「一応僕が十八歳になってから……としか申しようがありませんね」


 日本に順ずる……との発言です。


「今後の国政について伺いたいのですけど……」


 そんな感じで記者会見は続きました。




 中略。




「あー……疲れた」


 予約していたケーキを買って我が家に帰る私たちです。


「あの……お帰り……」


「ただいま殿下」


「殿下は……お姉ちゃん……」


「ルリも殿下だよ」


「浮気……?」


 ロリルリが私に視線を投げます。


「ルリだって立派な兄さんの愛すべき人です」


「いい……の……?」


「餅論ですとも」


「おっぱい小っちゃいよ……?」


「未来形が居るので問題ないでしょう」


「あう……」


 こんな可愛らしい時期が私にも在ったんですね……。


「じゃ、食事にしよっか」


 家事戦士に変身する兄さんでした。


 エプロンが戦支度。


「チキンとケーキとポテトと……」


 昨日調理していたクリスマスディナーを温め直してテーブルに並べます。


 降誕祭クリスマス


 誕生日を祝う日……となれば在る意味で世界制覇王国と世界覇王の誕生日でもあります。


 偶然……でしょうか?


 兄さんが葡萄の炭酸ジュースの栓を抜くとポンと気圧の飛び出す音がします。


 さすがにワインもシャンパーニュも飲めませんので。


「それではお手を拝借」


 私たちはジュースの注がれたグラスを持ちました。


「メリークリスマス」


 カチンとグラスをぶつけて乾杯。


 この再会と……兄さんへの全てを込めて。


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