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第117話 夢の果てにて在りし物02


「幸せです」


 ルリは夕餉をモリモリ食べた。


 ちなみにネットは大炎上。


 主に僕のせいで。


 大火というか……ほとんどメギドフレイムに匹敵する勢い。


 先の通りに宣言を発すると、米国の貧民層が暴動を起こしたとのこと。


「まぁそうなるよね」


 鰤大根を食べながら僕。


「富裕層の重税で貧民層に分配」


 となれば典型的な共産主義なんだけど経済格差の酷い米国に於いては火薬庫に火を放つが如しだろう。


 まず大国以外は親王国派で固められ、ラピスの超演算で捕捉されるので、財産の隠匿から外国への高飛びまであらゆるセーフティが意味を為さない。


 世論も過激に親王国派の論調が高まりつつあり、ホワイトハウスもてんやわんやとのこと。


 大統領の胃薬が心配だ。


 既に股間がスマッシュされているのはハト派の新聞には面白おかしく吹聴されていた。


 まぁ、「その原因が何言ってんだ」って話だけど。


「基本的に政治ゲーム世界ですからね米国は」


 同じく鰤大根を食べながら嬉しそうにラピス。


 ちなみに嬉しそうなのは鰤大根を食べているからで、米国の暴動とは関係がない。


 宰相閣下は心臓だ。


 しかも御本人は決して罪悪感をカケラも持っていない。


 結局のところ、国家が僕を優先してくれれば、他に述べる意見も無いものだろう。


 僕は……まぁ世界覇王になっても良いけど、ルリとラピスと一緒に居ることが幸せで、後は四谷と久遠が距離を置かないでくれれば言うことなしかな?


 さすがに引かれそうなのは、ちゃんとわかってございます。


「大丈夫なの……お兄ちゃん……」


「偏にね」


 ぼんやりと。


 鰤大根。


「ルリは何も心配しなくて良いから」


 頭を撫で撫で。


 毎度だけどこれがルリには一番効く。


「コホン。それでどう思います?」


「いいんじゃない。国防総省も機能していないんでしょ?」


「銃社会なので警察と貧民層の銃撃交差が心配なのですけど」


 煽った君が言うか。


 いや担ぎ上げられている僕が言うかって話もあるけど。


 何はともあれ、


「混沌は産みの苦しみだね」


 他に言い様もなかった。


「兄さんは大物ですね」


「世界覇王ですので」


 にしては鰤大根が美味しいけど。


 貴重な食材が、たまに臣国から送られてくるけど、そもそもがあまり扱いづらい。


 隣にアートがいて良かった。


 一流のシェフも派遣されているので、こう言った場合は役に立って貰っている。


 アートの方も宰相閣下の力になれるなら、と喜んでいる節さえある。


「贅沢して良いんですよ?」


「ルリとラピスがいるだけで十分贅沢してるんだけど」


 どんな大富豪だって、ルリとラピスを妹には出来ない。


 僕と結婚すれば話は別だけど、生憎と僕に同性愛の素質も無かったりして。


「あう……」


「あう……」


 二人揃って照れ照れ。


 きゃっわいいなぁもう!


「兄さんはジゴロです」


「今更~」


「格好……いい……」


「ありがと」


「米国の状況は?」


「死傷者多数」


「メギドフレイムで牽制しないの?」


「して止まると思います?」


「無理かな」


「私も同じ結論です」


 鰤大根。


「ニュースでやるみたいですよ」


 何を?


 大統領の演説を。


 リビングのテレビを映す。


「米国国民諸氏! 世界覇王を僭称する共産主義者の甘言に乗せられてはならない! 秩序は米国と共に! 我々は世界警察として毅然としてテロリストに立ち向かうべきだ! 誓って言おう! ミスター司馬陛下が貧民層を救うことは有り得ないと!」


「説得力がありませんね~」


 ラピスは苦笑した。


 僕も同意見。


 鰤大根。


 すでに経済格差は社会を蝕む癌だ。


 どこかで爆発はするだろう。


 覇王陛下と宰相閣下は導火線に火を点けただけで……導火線の先の爆弾の大きさを育てたのは、何より米国のエリート層の手腕と言える。


 見事な采配で、そのシステムを作っただけでも賞賛に値するだろう。


 一種、発明としてなら文明への貢献度も兼ねて、たしかな威力。


「いいんだけどさ」


 股間スマッシュ大統領の演説も分からないではないけど。


「断固として云う! 我ら米国が蜂蜜でコーティングしたテロリストの妄言に乗せられることはないと!」


 軍事力の衰退も甚だしいのに。


 それでも突っ張るところなのだろう。


 論調を整え世論を統一……せねば勝てる勝負も勝てなくなる。


 こっちにラピスがいる時点で決定したような物だったけど、その時間が短縮されたことは素直に敬服できる。


 血は流れたけど、そこは自己責任。


 世界制覇王国のせいではない。


 少なくとも僕がその責任を背負うと潰れてしまう。


「戦おう! 皆で! 取り戻そう! 平和を! 愛すべき国民よ! 秩序を持って世界悪と戦い抜こうではないか!」


 そんな盛り上がりの中、


「ファイヤ」


 ラピスがボソリと呟いた。


 灼光。灼熱。灼火。


 何時もの様に、何時もの如し。


 システムメギドフレイム。


 地球上……どころかあらゆる宇宙を俯瞰する絶対的スターウォーズ計画。


 世界全てが射程範囲。


 なおトリガーは宰相閣下の意識。


 核兵器と違って、トリガーを引くのはあまりに簡便だ。


「我らが国家は巨悪に負けない。ジャスティス万歳! この掲げた握り拳が世界にとっての責任と慈愛を証明するだろう!」


 とまぁ、演説のクライマックスで大きく掲げた大統領の右腕が、肩からごっそりと塵に変わった。


 メギドの火が落ちて、炭化したのだ。


 流石のラピスだ。


 別にアメリカの声明発表が、そのまま世界制覇王国のキャンペーンにすり替わったのだから、この手際の良さは舌を巻かざるを得ない。


 こと情報戦で勝てないのは知っていたけど、ここまで徹底されると可愛らしさに小悪魔が乗る。


「「「「「――――――――」」」」」


 もちろん記者や視聴者は超ドン引き。


 ネットはお祭り。


 僕らは鰤大根。


 オンソチリシュタソワカ。


 僕は印を切って大統領の無念に敬服を。


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