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第116話 夢の果てにて在りし物01


「…………」


 眼を覚ました。


「……………………」


 とっさに言葉が出てこない。


「僕は死んだはずでは?」とは思えどしっかり生きている。


「夢……?」


 呟いてみると説得力を持った。


 長い……夢。


 両親を失い、守るべき家族がルリ一人となった状況。


 その果てに地に伏した僕。


 まるで……ラピスの語ったような結末。


「んと……」


 とりあえずは思考放棄。


 あまり追求しない方が良さげだ。


「……………………」


 スマホで時間確認。


 夕方の五時。


 ダイジェストとはいえ壮大な夢を見ていたのだから、


「そうもなる……か」


 嘆息。


 今日はバリバリ平日。


 学院はサボりになってしまった。


 ついでに朝の洗濯や、食事も作っていない。


「やっちゃった」


 ルリとラピスが待っているだろう。


 リビングに出る。


「おはようございます兄さん」


「おはよ……お兄ちゃん……」


 二人はリビングでテレビゲームをやっていた。


 ピコピコ……なんて今どきのゲームで電子音は付随しないけど。


「何してんの?」


「イギリスのメーカーが新規のハード出すってんでテストプレイ中です」


 マッチョなキャラが剣を振り回して無双していた。


 なんていうか、スーツとかマッチョが外国人って好きだよね。


 説得力はあるけどなんだかな。


 もうちょっとスラッとしたイケメンや乙女が大活躍する方が、日本人の感性には向いている。


 ここで愚痴ってもゲームの善し悪しが変わる訳でもあるまいに。


「ていうかネガティブキャンペーンにならない?」


 ワールドワイドテロリズム。


 世界覇王の名刺切ってゲームの宣伝したら不買運動に繋がるんじゃなかろうか? 


 一応英国にも第一種永久機関は敷設したけど、政治的にはまだ属国の扱いのはずだ。


 世界覇王も大変だなぁ。


 元より人望の無い身というか、そもそも認知がそんなにされていないだろう。


 世界中のお茶の間ジャックは……たしかにインパクト抜群だけど、主にネットに上がるのはアルビノの超絶美少女こと我が愛妹ラピスについてだ。


「いい加減王国も肯定的に評価されてきていますし」


 もとの下世話は米国とそに追従する国家の情報操作だからね。


 誠実をモットーにすればいつか世論も変えられる。


 ラピスは急いでいなかった。


 台湾に始まりイギリス……発展途上国。


 それぞれの富を豊かにし、ついで電気自動車の普及でエコにも尽力。


 日本の自動車産業も大いに潤った。


 しかも臣国とはいえ別に政治に口も出さず、文化や文明や風習にも寛大でぶっちゃけた話……放任主義で片付けられる政治体制だ。


 それは既に世界中に述べているけど。


「世界を支配する悪」が米国の論拠の拠り所だけど、臣国の皆様が、「何処が?」と思ってしまえばアドバンテージはこっちに転がり込む。


 結局最終的にはスポーツマンシップが勝つとのことだろう。


「朝と昼はちゃんと食べた?」


「カップラーメンを」


 そんなところだろうね。


 彼女らの家事スキルはあまり高くない。


 責められるべき事じゃない。


 むしろ妹の家事を僕が出来るだけでテンションが上がる。


 ルリやラピスの下着を洗えるなら洗濯だって楽しくなる。


 ……冗談です。


 別段、下着で興奮する趣味もない。


 とまれ、食事が雑なのはいただけない。


 世界統一国家の宰相閣下がカップラーメンとは……。


 二人はピコピコテレビゲーム。


 面白いのだろうか?


 ま、まずは為すべき事を為すだけだ。


「夕食は何が食べたい?」


「鰤大根!」


「同じく……」


 そろそろ寒いもんね。


 良い具合に季節の料理。


 僕も大好きだし。


 鰤大根も、愛妹も。


「いいけど」


 となると食材か。


 さすがに鰤は冷蔵庫に常備していない。


 している方がどうかとの意見もありますれば。


 買いに行きますか。


 スマホと財布となんやかや。


 外着にも着替えないとなぁ。


「ところで兄さん。少し付き合って欲しいことがあるのですけど」


「何でございましょ?」


「動画で宣言を」


「覇王陛下の御言の葉?」


「です」


 コックリ頷かれた。


 お茶の間ジャックも久方ぶりかな。


 ネット動画では、王国支持派の動画が面白半分に載せられて削除を繰り返されているようだけど。


 思想の自由をうたう意味では、米国さんの対処は矛盾してはおりませなんだか?


「で、何て?」


「米国が臣国になったら富裕層に重税を課して貧民層に分配すると」


 ――共産主義の尖兵かな?


 だいぶやっていることが財閥やエリート主義への挑戦状なのだけど。


 暗殺……は無理でも、暗殺未遂をすると、ホワイトハウスが灼熱に沈みかねん。


 別段だからってどうこう言うつもりもないけど、基本的に僕らって台風の目だよね。


 こっちは凪で、周りが破滅していく。


 システムメギドフレイムは、股間スマッシャーと化している側面が有り、まぁモノホンになられれば子孫繁栄にも関わる重大事なワケだけど。


 で、共産主義ギリギリの発言を世界制覇王国の政治とするワケか。


「いいけどさ」


 起爆剤にならなければ良いけど。


 暴動が起きても不思議ではない。


「実際に富裕層の財産管理は重箱の隅まで把握しているので海外に逃げても大丈夫ですよ」


 そっちの方が戦慄もする。


 いやラプラスレコードの超演算恐るべし。


「というか逃げるも何も王国は地球全てが領土なんだけど」


「でしたね」


 コロコロとラピスは笑った。


 ぐうかわ。


 さすが自慢の妹。


 その笑顔を見るだけで、僕は今日の鰤大根に魂を賭けられる。


「さてそれでは」


 鰤と大根の調達に。


「我ながらゲームが上手いですねルリは」


「ラピスお姉ちゃんも……人のこと……言えない……」


 同一人物なんですけど。


 どこか微笑ましい姉妹の会話だった。


 あの時は死んで、悲しませるだけだったけど、今は……、


「今は……」


 ラピスが救ってくれた。


 それは確かだ。


 ところで口座の額がちょっとファンタジーになっている。


 最初の一兆円すら霞むレベル。


 しかも不正取引なのに誰にも処罰出来ないとくる。


 世界制覇王国の政はあらゆる法の上位に位置するとは既に述べたけども、おかげでちょろっと世界経済に起爆が発生した。


 そりゃ一個人が国家を越えた超兵器を持てば、金融不安も必然だろう。


「鰤大根楽しみです」


 んー。


 世界の危機の前に鰤大根くらいは食べよう。


 妹と一緒に。


 ――謝礼の一つになるのかな?


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