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第107話 慕しき仲にも大義あり04


「司馬」


 四谷が声をかけてきた。


 最近ではちょっと珍しい。


 ラピスと一緒に居たためか。


 あるいはアレから何事もなかったためか。


「はいはい?」


 僕は尋ねる。


「一緒に帰らない?」


「いいけど」


 ラピスは居ない。


 昨今親王国派が急造し、国際問題に発展している。


 特に国政でも世論が暴発し、「臣国たらん」との論調強かとのこと。


 親王国派のデモがニュースで流れるほどだ。


 調整にラピスは少し出向いていた。


 先の米国への攻撃もまた雄弁な説得力だ。


 言ってしまえば、「一人で世界中を相手取れる」とのこと。


 ――「覇王陛下が死ねば臣民は悲しみ、敬い、弔うべきですね。ついで属国民は陛下に倣い、あの世で敬服すべきでしょう」とのコメントはツイッターで大炎上。


 そりゃそうだ。


 僕の死に属国を道連れにすると云われて納得できる方がどうかしている。


 僕って其処まで大物では無いですよ?


 とまぁそんなことは閑話休題。


「何処か行きたいところでも?」


「別に」


「いいけどね」


「カフェとか」


「おk」


「久遠は?」


「馬に蹴られて死んだ」


 さいでっか。


 そんなわけで帰路の途中……喫茶店に入る。


 何時もの場所だ。


 僕はコーヒー。


 四谷は紅茶を頼んだ。


 しばし無言。


 コーヒーと紅茶が届く。


「あんさ」


「何か?」


「最近さ」


「へぇ」


「司馬さんと仲良くない」


「今更だね~」


「そういう意味じゃなくて」


「どういう意味で?」


「気付いてない? 距離近いよ」


「シスコンですので」


 本当にその通りだ。


「付き合ったり……とか……」


「以前の僕なら有り得なかったけどね」


「……っ」


 クシャッと四谷の表情が歪む。


 恋する乙女には酷か。


「四谷」


「何……?」


「僕が死んだらどうする?」


「泣く」


 即答だった。


「ありがと」


 苦笑も漏れる。


 そこは素直に有り難い。


 友情万歳だ。


 正義超人に必要な物で、なにより四谷は僕の親友。


 たしかに僕が死んだら泣いてくれるだろう。


 ソレは確信できた。


 けれどもそこから久遠とのラブロマンスが待っているわけで。


 その点ではあまり心配もないだろう。


「何で?」


「僕は一度死んでいるらしい」


「……………………」


 少し迷うように柳眉が波打った。


 彼女も思うところがあるらしい。


 その心配は敬服に値する。


 いやまぁそうでなくとも「友達甲斐がある」……で済む話なんだけども。


「死んだ?」


「そ」


「何時?」


「さてね」


 来年の冬らしいけど。


「自覚無いの?」


「そりゃまぁ死んだと言われても」


「生きてるしね」


「そゆこと」


「何が言いたいし?」


「ラピスは僕を生き返らせたらしい」


「ラピスが」


 まぁ基本何でもありだ。


 眉唾とは笑い飛ばせないだろう。


 それだけの不条理性がラピスにはある。


「四谷は泣くだけ。ラピスは生き返らせてくれた。これだけでも印象が違うでしょ?」


「あたしじゃ無理だもん」


「知ってるよ」


 僕にだって無理だ。


 ラピス……ルリだからこそ出来たこと。


「だからラピスは特別なのかもね」


「それだけ?」


「別に語ってもいいけど傷口に塩を塗り込むよ?」


「ぐ……」


 賢明だね。


 僕との関係を悟ってはいるようで。


「四谷は良い奴だ」


「褒めてないし!」


「褒めてるつもりもないしね」


 嘆息。


「だから友達として付き合いたい」


「――――――――」


 ギリッと奥歯を噛みいる。


 悔しいのだろう。


 悲しいのだろう。


 僕がルリに言われれば、同質の感情を覚えてしまう。


 それほどに恋慕の熱は身を焦がす。


 けれどもルリズムにとっての敬愛の対象はルリで。


 だから四谷に希望を持たせたくなかった。


 捨て猫に餌をあげて良いことをした気分になるには、僕は道化に過ぎる。


 コーヒーのほろ苦さがそれを助長していた。


 良い香り。


 けれど口に含む旨味は、苦さを克服した先に在るモノ。


 そんなものを僕は四谷に求めていた。


 コーヒーが皮肉にも体現した形だ。


 けれど本心でもある。


「僕はルリ第一主義だから」


「ルリズム?」


 正解。


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