運命の糸
はじめまして。望月陽大です。
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僕は、中学の時に「小説家になりたい!」と思っていたのですが、とある新人賞に応募したところ見事に1次落ちをしまして、小説家という夢を諦め、いまはプログラミングの勉強をするための学校に通っています。しかし、夢を諦めきれていなかったらしいので、ここで文の腕を磨き、もう一度だけ夢を追いかけてみます!
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大好きだった彼女の話。
第1章 1節 運命の糸
大好きだった彼女の話。僕がその話を人に話すことはない。なんとなく彼女が遠くに消えていく気がしてならなかったからだ。今でも頭の中にしっかりと覚えている。彼女を形作るあのシルエットも、髪の長さも、優しくはにかんだその表情までも。
そんな彼女が先日この世を去った。
その事実が僕を蝕み、内側から壊れていく。そう思ったときにはもう遅かったのかもしれない。友人にも、カウンセリングを受けるべきだと口が酸っぱくなるほど言われたはずなのに。
後悔といえばそのあたりであろう。他に思い残すことはない。大きく最後の息を吸う。すると、当たり前の風景すらも写真展の目玉の作品のようにきれいに見えた。
燦然と輝く街の灯りをバックに、ザワザワと呻く大衆の疲れ、ある者は仕事の疲れ、ある者は恋の悩み。黄色い点字ブロックが生者の世界と死者の世界を分けているようにすら感じた、だれも僕を見ていない。
これでいいんだ。そう、これでいいんだ。肺に酸素が入り込み、酸素が血管をつたい体内へ流れていく。僕の覚悟とは反対で、身体は必死に生きようとしている。もう一度、これでいいんだ。そう繰り返す。
高くて汚い、廃れたような列車のブレーキ音が耳を指した。僕の身体は大きな一歩を踏み出す。傾きながらも地球の中心へと加速していく僕。やっと気がついたように焦りと、戸惑いを浮かべ向けられる人々の視線。このとき、初めて正気が戻った。だが、もう遅い。神様はいつも残酷だと思った。抗うことすらできずに落ちていく身体。スピードを必死に落としながらも、近づいてくる車体。
彼女の声、彼女の笑った表情、彼女と作った思い出。色んなものが走馬灯のように蘇る。次第に薄れていく意識、もう彼女の名前さえも思い出せない。茶と橙に錆びた大きな車輪は、僕の下腹からゆっくり、ゆっくり噛みちぎっていく。やがて、レールや、車体が新鮮で生々しい赤に染まっていく。痛みすらも忘れ、ただ運命に流された。
どうやら、運命とは、残酷なものらしい。
僕が目を覚ますと、そこには彼女が立っていた。