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偽り言葉日記  作者: 瀬那鶫
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 大学生になってから、運動は嫌いなのにその競技だけ得意だからなんとなくやっていた部活をやめた。


 正確には、私はその競技自体は大好きだった。

 小学1年生の時に始めたのだけれど、結構偉い先生方に「センスがある」「将来が楽しみ」そんなことを言われて、私自身、周りの子よりも練習時間が少なくても、同じかそれ以上の強さがあったから、自分のことをちょっと特別なんじゃないかと思っていた。

 でも、努力しなくても何かを上手くできるのは、才能じゃない。

 上手くできているように見えてるかもしれないけれど、それはサボるのが上手で、周りの人がまだ知らないコツを知ってるだけで、そこから努力しなかったら何の価値もなくなってしまう。

 結局私は、「大して練習しなくても強い私」がすごいんだってずっと勘違いをしていたし、私より強い人は、私より努力をしている人なんじゃなくて、持って生まれたものが違うから、これから私がどれだけ努力をしたところで追いついたり、追い越したりすることはないんだから、無駄なことはしない方がいいって、そういう風にしか考えられなかった。

 だから、大学では部活に入らなかった。

 なんとなく続けられるように自分をごまかせる言い訳をもう思いつけなかったから。


 そうして2年が過ぎて、何を思ったのか、また私はその競技を始めようとしている。

 デブはさらに悪化して、その競技に必要な筋肉もすっかり衰えてしまっていて、とてもその競技をできるような状態ではない。

 おまけに、この競技をしている人は、一度辞めた人が戻ってくることをあまりいいように思わないし、一生続けることに一番の価値があるような競技だから、やめてから2年もたってからいきなり始められるようなものではない。

 でも、この大学でその部活動をしている人たちは、思いのほかいい人たちで「○○高校出身ですか?! うわぁ、うちで大丈夫かな。一緒に頑張りましょう」というようなことを言ってくれた。それがせめてもの救いだけど、私は現役時代殆ど補欠で、レギュラーとして大会に出たことは両手の指で足りるくらいの回数しかない。練習試合も数えていいなら少しは増えるけれど、大したことはない。

 部活に入るにあたって、実際に身体を動かしてみるまでは、久しぶりにこの競技を始めても、大会に出たら少しくらいはいい成績が残せるんじゃないかと思っていたけれど、これじゃ、試合時間いっぱい戦うのも難しいんじゃないかというくらい体力はないし、始まって早々やられてしまうんじゃないかというくらい反応も鈍ってしまっている。


 最近はウイルスのせいで世界全体が大変なことになっていて、練習どころじゃなくてそのことがまだ他の人にはわかっていないから、今のうちにしっかり準備して大会に出られるように、出てきちんと戦るように身体を整えていきたい。

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