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偽り言葉日記  作者: 瀬那鶫
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 幼い頃に耳にした曲で、サビの部分だけがやたらと耳に残っているんだけれど、その曲名も歌詞も、歌手も何もわからないというのがあって、長年うずうずしていた。

 唯一覚えている部分を無限ループで歌って空しくなっていたものだが、それがつい一週間ほど前にその正体を知って、すっきりしたと同時にすっかりその歌手のとりこになってしまったというわけだ。

 今、この文を書いている最中もそのアーティストの歌を聴いているわけだが、勝手に体が動き出して非常に迷惑だ。

 年齢に不相応な歌詞を書き、時代の音楽を変え、彼女の前の時代を風靡した音楽家を引退に追いやったといわれているが、私は長らくその存在をきちんと認識していなかった。

 それもひとえに、幼い頃の私は、時間がなかったというのと父がそういったものを好まない人間だったということで、テレビも見なかったし、音楽も聴かなかったためだ。

 全く。というわけではなかったが、同年代の子たちのおそらく十分の一かそれ以下しか、そういった形で世の中に触れるということをしていなくて、中学生の頃の私など、流行の俳優の名も、芸人の名も知らず、アーティストの名も当然知らなかった。


 あぁ、歌詞が頭にすっと入ってきて、声がこんなにすんなりと私の中に入ってくるような人間が今までいただろうか。

 私は、今、とても幸せな気分だ。

 私とその人とでは歳が十七程違い、今聞いている曲は約二十年前の曲で、その人は十代の後半くらいだったと思うが、全く古さを感じないし、むしろ私の耳には常に新しく、それでいて懐かしい。

 こんなありふれた言葉ではなく、もっと的確にこの素晴らしさを書き残したいと思ったのだけれど、私にはそれをする能力すらないようで虚しい。

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