六課 一只羊
六課 一只羊
夜になると一人が堪える。畳に寝具一式とテーブルしかない部屋は寒くて身体が冷えていく。そうなると余計に寝づらくなって、一人であることを実感して、堪える。
私が一人にになったのは夫の張偉が楊小鈴という女と浮気したからだ。別れるとは言ったが信用できなかった。
そこで私は夫をGPSで管理し、小鈴も監視した。
小鈴はある日、着飾って駅で待ち合わせをしていた。しかし来たのは太った子供だった。もう小鈴は夫と切れたのかもしれない。それでも不安が拭えず、夫の現在位置を確認した。近くにいた。
私は夫を見つけ出し、問いただした。夫が悪いと認め、誤ってくれば元の鞘に戻る。どこかでそんな都合の良いことを考えていた。しかし現実は甘くなかった。夫は小鈴とヨリを戻すつもりであると真顔で言ってきた。私とも別れると。
頭に血が上って、それからあとの記憶がはっきりしない。気付いたら、いざというときのために持ち歩いていた文化包丁を持って血塗れになっていて、周りには夫以外の男女数人が倒れていた。
駆けつけた警察官に逮捕された私は、長い勾留ののちに検察によって起訴され、裁判官に死刑を言い渡された。
今は刑の執行を待つ身だ。いつになるか分からないので、心理的プレッシャーがかかり寝付けない。そんなときは羊を数える。
“一只羊,两只羊……”
三千まで数えて疲れてきた。それでも眠ることができない。
“三千一只羊,三千二只羊……”
また数え出した。今度は長く数えられた。
“九千九百九十九只羊……、一万只羊……”
キリが良いからここでやめて、布団から出る。すでに朝になっていた。死刑執行までこれがずっと続くのかと思うと気が滅入る。これが罰なのかもしれないと私は思った。