十一課 吉田也可以去吗?
十一課 吉田也可以去吗?
山田とマリアは付き合うことになったが、小学生ではあまり遠出が出来ない。そこで李がゴールデンウイークに李の父の所有する別荘へ行かないかと提案してきた。
二人は友人の善意に甘えることにした。そしてマリアは言った。
“吉田也可以去吗?”
“但是她会打搅你们吧”
“没问题,只要小李照顾她,我们就能调情”
困った李は山田にアイコンタクトして、話し合いに参加させた。だが山田は初めてのカノジョに舞い上がっていて、李の考えるような答えをくれない。
“玛利亚说的对,单身的人很寂寞”
山田はマリアの言いなりだった。
バレンタインの告白を断って以来、吉田と李は心理的距離が開いてしまった。そして吉田だけ、別のクラスで物理的な距離も開いている。李は悩んだ。が、結局吉田も連れて行くことになった。
吉田は目一杯オシャレをして来ている。だが山田とマリアのペアルックの印象がそれよりも勝っていた。
そのおかげであまり触れることがないまま港へ。別荘は海の上に浮かぶ島なのだ。
しかし出迎えてくれるはずの父の秘書がいないし、船もない。
“船还没回来”
港を管理している人が言った。
李は別荘に電話をかけてみたが、なぜか通じない。父や秘書など知っているスマホにかけたが、圏外だとのアナウンスが流れるだけだった。
待合所のようなところで待たせてもらっていると、豪雨が襲う。別荘に行くのは無理そうだ。
李達は近くの旅館に泊まることにした。家で留守番している李の母に身元を保証してもらい、金銭面の心配はない。
しかし三日経っても嵐はおさまらず、旅館から一歩も出られなかった。
“侦探小说里,因为风暴被关的房间里经常会发生杀人事件”
“真可怕”
山田とマリアがそんな会話をしているのを聞いて李は胸騒ぎを抑えられなかった。
そして嵐が去った後、港に行ってみると手錠をかけられた秘書が警官に囲まれていた。
秘書は李を見ると悲しそうな顔で、
“对不起”
と言った。
後で警察に李の父を含めた三人が別荘で秘書に殺されたと聞かされた。