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実力強化と世知辛い現実

 


 蚤の粉砕屑と生ゴミの粉砕屑を混ぜた物をフクロウ樹の根元に袋詰めして埋めた。

 次の日には採取できる袋の質が変わっていた。露骨である。

 おっさんによると「栄養不足だったんだろう」とのこと。「栄養?」ってついつぶやけば、私を指差し、「いい肥料を作り出して埋めてるだろう」と言い放たれた。そう言うことか!

 しかし、そう言うことはそっとしとけ!

 おっさんに繊細な乙女心はわからない。

 トイレ穴を作ったことで栄養が減るんだろうかとも思うけれど、「フクロウたちが食い漁ってるから大丈夫」とも聞いた。

 確かに小麦ちゃんの蚤退治手伝ってくれるよね!

 毎日橋の予定地あたりで小麦ちゃんのブラッシング。ヘルプのフクロウたちに野ねずみたち。蚤の数も気持ち減ってきて小麦ちゃんも気持ちよさそうだ。

 おっさんによる伐採で木々の密集度が薄まった分、道ではないなりに見通しがいい。

 少し歩いた先にある洞窟は流石に見えない。が、この木々の薄いルートの先にあるのだ。他にも細い獣道があったりするけれど、おっさん曰く、「この先、野ねずみの巣な」「大地蜂の巣があるな」と言うことらしい。大地蜂は花の蜜を集める蜜蜂ではあるが、雑食であり主食を野ねずみとヒトとしてると教わってビビった。

 食物連鎖の下支えをしているのが野ねずみたちらしい。もちろん、野ねずみたちも雑食で時にはヒトも大地蜂も狩れるものはなんでも狩って食べるらしいけど。

 スパイダーのノンカンさんによると私は土地の偉い人として認識されてるらしい。(野ねずみたちにも)

 私が毛繕いしたとわかるモノはお互いに狩らないと言う協定がいつの間にか結ばれているらしい。大地蜂やばい!?

『ヒトは蜜を好まれることが多いですからね。よい器を得ましたら蜜を求めておきますわね』

 と、伝えられた。

 花の咲く木を残せと頼んだことで大地蜂の世話をしていることになったらしい。

 あっれー?

 いつの間に偉い人認識されてたのー?

 でも甘いものが得れるのは嬉しいなぁ。


 洞窟は入り口は狭め。体大きめなおっさんが二人は並んで通ることができない幅が二十メートルぐらい続いている。現状滑らかな床だけど段差が欲しいなと思う。段差としては二十センチくらい。

 高くても低くてもいい。通路自体は注文通りところどころ蛇行しているから遠くまで見通せない。

 野ねずみたちが足元をちょろちょろと走り回っている。


『領主様が許可くださるのでしたならここに巣を築いてもかまわないかと尋ねておりますわ』


「え、いいけど。侵入者を招くことになる場所だから危ないんだけど?」

 私の言葉にノンカンさんがころころと可愛らしく笑う。

『もちろん存じておりますよ。だからこそ巣を築きたいのです。無論、わたくしも』

 危ないのにと首を傾げる私にノンカンさんの解説が続く。

『うふふ。良いですか。わたくしも野ねずみたちも侵入者を待っているのです。わたくしたちは侵入者と言う共通の捕食対象が訪れるまでは互いが捕食対象です。しかし、侵入者が訪れればわたくしたちは共に戦い狩りを行う仲間なのです。互いに戦い易く、狩り易く場を整えることは嗜みのようなものですわ』

 早く素敵な殿方を見つけて子供たちをとノンカンさんが夢見るように囁く。

『領主様も蚤狩りは野ねずみたちに任せて次の狩りを学ばれる頃かもしれませんね。弱き者に従う者はそれ以上に弱き者だけなのですから』

 すみません。絶対ノンカンさん、私より強い予感がヒシヒシといたします。

 ノンカンさんによる情報と強くなるようにの指導。小麦ちゃんのブラッシング。フクロウたちや野ねずみたち(あくまで一部)へのブラッシングの日常はしだいに体が慣れて効率がアップしていく。

 気がつけばフクロウたちはよろめくことなく飛び立ち、私は昼頃にはブラッシングを終えて橋の予定地付近を調べることができる。

 私の戦闘訓練は蚤から野ねずみ(色違い)に切り替わった。

 動きが早いし予測がつかないしでうまく倒せない。こっちがやられそうになるとフクロウが野ねずみ(色違い)をブチのめす。

 保護者付き戦闘訓練だ。

 ちなみに最近のフクロウたちはいやもうつやつやのふこふこで抱きしめれば幸せだ。

 おっさんが狩ったら血抜きしとけと言うのを聞いたノンカンさんが笑いながらぶら下げてくれる。虫(自分以外)がたかるのも阻止してくれるらしい。

「アウリー」

 呼びかければ嬉しそうに肩にふんわり乗りにくるフクロウと少々の勢いをつけて不満げなフクロウ。

 彼らのブームは名前を呼ばれることである。

 不満そうなさますら愛らしい!

「グリーム」

 拗ねたように、それでもすり寄ってくるフクロウたちマジ可愛い。

 最初はきょっとーんとしていたのに呼ばれてる『呼称』だと気がついてからはどっちが先に呼ばれるか競争しているように見えて可愛いくて可愛くて。

 思考力と語彙力が溶け出していく。

 小麦ちゃんは呼ばれることにはそれほど固執してない分、ちょっと驚いたのは正直なところだ。

 それにしても蚤はうまく串刺しできるのに野ねずみ(色違い)はやたらと難しい。悔しいな。

 どうせ当たらないからとただ振り回してみる。

 五回に二回ぐらいはどこか振り回されている感覚で気持ち悪い。

 他の武器の方がいいのかなぁ。

「まずは一種類慣れればいいだろう。素振りもいいがなにかマトをつくってやるのもいいぞ。例えば、その辺の木に打ち込んでみるとかだな」

 おっさんが今日も上半身晒しながら言ってくる。

 おっさん狙って当ててやると襲っても全部躱されて面白くないんだよね。いつでも来いとは言われてるけど。

 小麦ちゃんブラッシングのためにきっちり柔軟体操して、最近は筋肉痛もあんまり感じないし快調なのに野ねずみ(色違い)は狩れなくて悔しい。おっさんにバカにされるし。

 ブンっと槍を振り回す。手首の返しだろうか?

 それとも踏み込み?

 はらりはらりと落ちてくるものに動きが止まる。

 桜のようなピンク色の花が舞い降ってくる。

「慌てても仕方ないか」

 ひとつづつこなしていこう。

 少なくともサビ猫ちゃんが来る日までに野ねずみ(色違い)は狩れるようになっておきたいな。

 ちょっと困るのは欲しいものが増えていること。

 小麦ちゃんブラッシングブラシに食器一揃え、調理器具一揃え。ブラシに二万、食器に五千、調理器具に七千、調味料セットが千。そしてローンが五万。保存容器も本当は欲しいけど、保存容器基本セットは五千からで次にサビ猫ちゃんの行商時には予算がない。

 小麦ちゃんの粉が売れるとしても価格が不明だしなぁ。それなら野ねずみの干し肉の方が需要があるから小遣い稼ぎになるっておっさん談である。

 つまり、必要なのは狩りを確実にできる実力である。

「だからって、アニメみたいな動きなんてそう簡単にはできないもんなぁ」

 それでも、体力は増えたと思う。

 食欲と共に!

 肉体的変化は、まだない!


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