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新しいカタログとサビ猫ちゃん

 肉食植物の種子と蔓を迷宮の入り口付近に放り出す。それをヴィガ達が拾い集め、影で配置を決めていく。悪戯に効果的なポイントを狙って。

 動けば早朝だというのにジワリと滲む汗。肉食植物の蜜毒の解毒にリア充上司様の城で時間が過ぎていた。

 ダンコアちゃんたちの魔力補充はリア充上司様が対応してくれていたらしい。

 久しぶりな気がする吊り橋の予定地。谷川からの風が吹きあがる。一度刈り取り拓けた場所も蔓植物や低木が足もとを不確かなものにするように覆っている。踏み間違えれば転落だろう。編まれるように伸びた蔓と枝には蜘蛛の巣が張りぺたりと補強されている。茂み具合がまるでなにかの獣道のようだ。探索してたら気になるだろうな。ほんと落とす気まんたんだなウチの連中。

「そこ危なくないですか?」

 不意に声をかけてきたのはサビ猫ちゃん。

 うっそ。もうそんな日取りだっけ?

 準備できてない!

 慌てる私にサビ猫ちゃんは笑って「お屋敷にまいりましょーか」と提案してきた。




「いやぁ、衝動自殺かと」

 朗らかに誤解ネタをぶちかまされました。

 もうじき吊り橋が蘇るにあたっての準備に不安が募れば然もありなんかと思われたらしい。ん、つまり準備不足だと思われてる?

 うーん、否定はしきれないかなぁ。

 でも、

「たぶん、かろうじてなんとかなると思ってるから!」

 クイック・クックが手間を惜しまず毒の分離をしたカエルミルクに蜜果酒を垂らしたものをサビ猫ちゃんに差し出せば、ピンッと耳が立った。

 んふ、美味しかろう?

 カエルの養殖も順調だし魔力を動力源にしている機器も日々投入される原料から少しずつ魔力摂取していれば問題なく稼働しているくらいの供給量があるほどには豊作だ。もちろん出来上がりから魔力を減らさないために動力魔力は叩き込んでるけどね。


「だといいですね」


 機嫌良さそうに目を細めたサビ猫ちゃんをなーでーくーりーまわしたいっ!

 甘めミルク美味しかった?

 美味しかったのね!?

 やったぁあ!

 ごろごろいってほしいーっ、ぎゅっとしたい!


「新しいカタログですよ」


 衝動に揺れる手元にサッと冊子が渡されて握り丸めそうになったわ。

 新しいカタログを渡されたところで買える予算は限られているのだけど、なにはなくてもカタログを見ることは楽しかった。

 時々、以前見た金額から変動しているものも目につく。

「生産上の都合とお客さんのお得意度で変動ですよ」

 こほんとわざとらしい咳を一つつけてサビ猫ちゃんの商人としての練度も関わっていると教えてくれた。新規値段表記になったのでもってきてくれたらしい。月の清算は次回と言われたのでひと月待つこともなくまた会えるのだ。

 ああ、ブラッシングしたい!

 猫たちの食用粉にマシュポゥの加工食品、川魚や魔獣の干し肉を塩で固めた後粉砕した味付け粉。販売品の品揃えにサビ猫ちゃんがギラギラと目を輝かせている。主にクイック・クックの手腕である。

 ピヨット君による報告一覧を見る限り、迷宮における下準備、最下層生物の充足は出来上がっているようにも見える。

 ワームたち、蜘蛛と鼠、木精たちによる植物にそれらを捕食する蜂やカエル。地味に増えているらしいウサギとイノシシその死骸に根をはるマシュポゥたち。アカツキドリはそれぞれのサイズでたまごを抱える親鶏がいる。たまごは本当にたまごだった。ポルトガッシュはなんていうか、妙に増えていて(マシュポゥほどの速度ではないにしろ早い繁殖速度)すでにピヨット君とクイック・クックの間で害獣指定するかでもめている。一株が二十株くらいに増えているのだとか。ヤツら肥料に美味しい物求めるんじゃなかったっけ?

 美味しい肥料がなければ味が落ちる!?


「食糧提供は現在安定しているけど、吊り橋が戻ったあとどのくらい維持できるかわからないから、今これ以上のローンは組めないよなぁって思ってるの」

「そうですね。お客さんの不安も最もです。では、しばらくは備品と必要品だけに抑えてローン返済に集中しましょう」


 にんまりとサビ猫ちゃんが笑う。

「落ち着いたらたくさん買ってくださいね!」

「よろこんで!」

 サビ猫ちゃん超かわいい!


「いや、嬢ちゃん、借金はサッサと踏み倒すか返済するかして身綺麗になろうぜ?」

 おっさんが不穏な発言をしていた。踏み倒すわけないじゃないの!

 それに返済前倒しはしていきたいつもりなんだから!


「そこまで寒くはならない地域だが、冬の準備は?」

 ほら、増える食糧消費と冬眠する連中による戦力低下とかと続けられてちょっとぽかんとした。



「冬眠!?」



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